決意
戦闘の基礎、スキルとか能力値の話です。
Q 主人公ビビりすぎじゃない?
A 国の予算と人材を全力投入して作られた組織を舐めすぎです。スペック的に主人公が最強でも一人だとSATに罠や技術や裏技で殺される危険性は十分にあります。例えばシステム外ス(もう少し後に出す予定なので以下略)
なおレイナと合流すると……。
「『弱スラッシュ』!!」
剣、というか棒が勢いよく迫る。だが体感時間は変わらないが俺の目は正確に今までとらえられていなかった軌道が捉えられていた。
大山栄太
レベル8
STR 32 VIT 41 INT 7 MND 5 DEX 12 AGI 14 HP 71 MP 8
スキル 『弱スラッシュ』 SP 8
四辻博人
レベル 9999
STR 8712 VIT 9643 INT 5923 MND 7632 DEX 4678 AGI 5698
HP 18739 MP 11839
スキル 『弱スラッシュ』『偽装』『修復』『転移』『鷹目』 SP 9984
こっそりステータスを展開し相手の能力を確認する。こうしてみるとあまりにも差のありすぎる能力だ。だが計算上ではVITはレベル1800前後で追い抜かれる、やはり致命的に才能に差があるが、少なくとも今勝っているのは俺だった。
この能力値という概念はあまりよくわからない、というのが実情だ。勉強ができてもINTは上がらないしMNDってなんだよ、足の筋肉が関係するならSTRとAGI関係あるよな、など疑問はつきない。一体どういう計算方法なのか、それともそもそも能力値など算出しておらずここに表示されているのは何かの出力の結果なのか。
いずれにせよ大山の動きの間にもうランニング10周はできそうだ、と思いながらギリギリで避けたようなふりをし、続く拳を上体を反らし空ぶらせる。反則だ。
「ぬぅ!」
スキルとはMPを消費し発動するもので口に出して宣言することで特定の効果を発動させるものだ。魔術、などと呼ばれているものもスキルの一つであり、炎の弾を飛ばしたりするわけだ。基本的に同じ能力値の人間が同じスキルを扱った時の威力は同じで何か大声を出したからといって威力が増減することはない。
そして『弱スラッシュ』は凄まじく威力の低く、代わりに素早い斬撃を発動させる消費MP1のスキルだ。だからこそ大山はわざわざスキルを使わずに殴るのだ。
ひゅるり、と嫌な予感がするものの意図的に見ることも避けることもせずに上体を戻しそこに入るスキルなしの棒を受ける。軽いぽこんという音がなり胴に一発入るのがわかる。
「まさかダメージ受けてねぇよな!」
このスキルと通常攻撃の組み合わせの巧さが大山の凄まじい所だ。見た目に似合わず戦い方は頭脳派、一発目はスキルを使い二回目は威力の高いパンチ、棒なら『弱スラッシュ』と宣言するはずだ、という認識の隙をついた通常の片手での斬撃。
スキルは習得するだけで使い方がわかるし簡単に使いこなせる。ただしそれ単体だけの話であり、仮にストレートとアッパーを使えるようになったボクサーでもそれを組み合わせられなければ意味はない。スキルとは宣言するという一手間がかかる分反応されやすく、だからこそ必ず通常攻撃と上手く組み合わせることになるのだ。
「大山ー、パンチ禁止だぞ!」
「すいません、ミスりました!」
体育教師に言葉だけ謝りつつ攻めは続行される。『弱スラッシュ』をこちらからは撃つことは決してできない。基本的に同じ能力値の人間が同じスキルを扱った時の威力は同じで何か大声を出したからといって威力が増減することはない。同様に『弱スラッシュ』は力を抜こうとしようが関係なく全力で斬撃を発動してしまうのだ、俺の能力値で。正確には威力が変数となっているスキルもあるのだが大体は角度や位置が変数であり、『弱スラッシュ』は角度が変数となっている。
つまり『弱スラッシュ』はどの角度から切るかは指定できるがそれ以外は不可能。なのでスキルを使わずに俺は弱い力で突きを幾つか放つ。幸いにも手加減は上手いらしくいつも通りの速度を保っていたがその最後の一発を大山の太い腕が捕らえる。
その時俺はやってしまった。ついそこから放たれる柔道の背負い投げのモーションに反射で全力で抵抗、大山の目が見開かれる。
「ん!?」
その疑問ももっともだ。ただのチビ、運動神経もない雑魚が途端に鉄球になったのだから。とっさに自分から大山の足元に崩れおちるような形になり、まるで怖がって腰が抜けたから上手く投げれなかったんだ、という風に演じる。
「あ、地面に手ついたらダメか……ごめんなさい」
「お、おう」
納得してくれたか……?不安になりながら奴を見ると幾度か不可解そうな顔をした後「まあ8-0で俺の勝ちか!」と意識の外に放り投げてくれたようだった。『偽装』の掛かっているステータスを見るがHPもMPも減っておらず、それ以外の不審な点は自分にはない。単に組手を適当にこなした、と思われるだけだろう。
ピー、となる一分の終わりを示す合図に思わず肩を撫でおろす。大山は俺という雑魚をきちんと処刑した、ということをアピールすべく皆の元に走っていく。その軽い足取りとは対照的に重い心持ちになった俺がいた。やはり何をやってもボロがでる。仲間がいれば組手もペアになってもらい異常を隠す手伝いをしてもらえたかもしれないし、あの日のアリバイも捏造してもらえるかもしれない。
だが俺は今一人で誰の手助けもなくボロを出す瞬間を先送りにしているだけで、何一つ解決もやり過ごすこともできない状態で処刑を待ち続けている。酸素の無い水槽の金魚のように。
この授業で決意した。何としても仲間を手に入れなければならない。様々な組織の中で最も好意的でかつ最も俺をどうこうできる戦闘能力の無さそうな金森レイナの提案に乗ってみよう、と。




