不思議な筋肉のアリス
穢れのない 清らかなプロテインと
夢見る腹筋を持った子どもよ!
ダンベル買おうぜ!
ベリベリベリッ!!
アリス:「失礼しまぁ〜す」
住民:「うわぁぁぁ!?」
不思議な国のアリスちゃん、絵本を破ってやってきた!
不思議な国の不思議パワーは、次元の壁もなんのその。
不法侵入罪、3年以下の懲役または10万円以下の罰金だ。アリスは全く気にしない。
アリス:「失礼しましたー」ガチャッ
空色ワンピをはためかせ、国道沿いへと猫探し。
アリス:「キティ〜、どこなのキティ〜」
キティとは、黒猫の名前だ。アリスは逃げた飼い猫を探しているのだ。
しかしここで問題が。
不思議な国には車道がない。故にアリスは無遠慮に、車道に突っ込み猫探し。
あ、危ない!
キイイイイイ!!キキイイイイイイイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅっ
アリス:「あら、何かしら?」
何という事でしょう!!
アリスは無傷、対する自動車は、ひしゃげてバンパー開いている。運転手は全治3ヶ月の大怪我だ!
アリス:「あら、ごめんさないね」ひょい
まるで枯れ葉を拾うかのように、車体を片手でヒョイと拾い上げる!
その細腕で──否ッ、断じて細腕ではないッ!
上腕二頭筋と上腕三頭筋はドクドクと脈打ち、その手は、母指対立筋から小指外転筋までが余す所なく鍛えられていたのだッ!!
そして一閃! ガッシャーン
自動車は音速を超えて、オフィスビルの壁とガラスを派手に粉砕する!
ウゥゥゥゥ ウゥゥゥゥ ウゥゥゥゥ
駆けつける警察、投げ飛ばされるパトカー。
弾丸を笑顔で握り潰すアリス!
蜘蛛の子を散らしたように逃げる警官。警察とはいえ彼らも人間、命は惜しいのだ。
アリス:「うふふ、そうね。キティが見つかるまでお掃除しましょ♪」
こうしてアリスは暴走を開始した!!
アリス:「キティちゃーん」ゴゴゴゴゴ
ショッピングモールを地盤ごと持ち上げポイ
アリス:「どこなのー」ガシャーン
学校の屋上で大音量、ガラスが割れたぞ!
アリス:「返事をしなさーい」ブーン
高速道路を時速10000キロ、ソニックブームで近所迷惑だ!
気がついたら辺りは廃墟。さすが不思議の国は一味違った。
しかし、人類も黙っていない。最新兵器を投入だ!
ひゅーん
アリス:「何かしら??」
対艦用グレート戦車、ガレキを砂城のように潰してやってくる。
高速ステルス戦闘機、音もなく飛来する。
アリスは戦車に囲まれて、上空には戦闘機がぐるぐる回っているぞ!
アリス:「仕方ないわね。真の姿を見せてあげるわ!」
腕を開き、腹筋の前で交差。
すると……!
ボコリ
ボコリ
と、内なる肉が顕現するッ!
ボコリ ベリベリベリッ!!!!!
水色ワンピースは無残に敗れ、残るはスポーツブラとショートパンツだけ!
メロンのような肩、深い割れ目の背筋!
上腕二頭筋と大腿四頭筋は常識外れの太さだ!
可愛いのは顔だけ、ボディビルダーの倍以上のジャイアント筋肉、これには自衛隊もドン引きだ!
アリス:「筋トレが足りない人間共よ、本当のパワーってのを見せてあげるわ!」
ドシンッ!
大地を蹴ると、戦車との距離は一瞬で、文字通り一瞬で詰まる!!
筋肉が、遅いわけがないのだ!
そして戦車を抱え、若葉のように潰し、丸め、空へ向かってぶん投げる!
アリス:「ハッハァー!!!」
ボォォカァァァァァン!!!!!
戦闘機、墜落ッ! まさかの同時撃破!!
自衛隊、慌てて攻撃するけれど、砲弾も、ガトリングガンも、空襲も、少女の肌に擦り傷ひとつ与えるには至らない。
アリスの拳の一振りは、千の戦車を破裂させ
アリスの脚のひと薙は、万の戦車を吹き飛ばす。
兵士:「核爆弾投下!」
アリス:「無駄無駄ァ!」
勇者:「俺は異世界帰りの勇者だぜ!」
アリス:「無駄無駄ァ!」
宇宙人:「ワレワレワ ウチュウジンダ」
アリス:「無駄無駄ァ!」
…
アリス:「うーん、飽きたわね」
そう言って何処からともなくキノコを取り出す。
きくらげみたいなヒダヒダを、パクリと口に入れてみると……
ドォォォン!
巨大化だぁ!!
アリス:「キティちゃん、きっと海外へ逃亡したに違いないわ!」
身長20000メートル、雲を突き抜けたぞ!!
筋肉モリモリジャイアント、どう見てもモンスターだぞ!
そのままゆっくり歩いて──否ッ!
筋肉が、鈍重なわけがないッ!
クラウチングスタートの構え!
位置について、よーい、パァン!!
短距離ランナーのように海上をダッシュ!!
10000キロ先のアメリカ大陸へ!!!
▼▼▼
[ラスベガス]
キティ:「倍プッシュ、倍プッシュー!」
ディーラー:「だーめ」
キティ:「そこをなんとかー」
ディーラー:「しかたないですね」
享楽の街ラスベガス、黄金に輝くカジノで、黒い猫耳少女が目を血走らせている。
アリスの探し猫キティ、黒ロリファッションで人に紛れている。
人間に化けてカジノに行った結果がこれである。借金抱えて帰っちゃ、ご主人様に見せる顔がねぇ!
ぐらり
キティ:「え?」
浮遊感、そして破壊音
大型ブルドーザーが通ったかのような衝撃が足を突き上げ、重力が横向きになって困惑!
アリス:「キティちゃーん?」
キティ:「げっ、ご主人様!?」
巨大アリスがカジノを摘み上げていたのだ。
ついに見つかってしまった哀れな黒猫、観念してへたり込む。
アリスはカジノを投げ捨てて、ヒダヒダのキノコを食べて元のアスリート体型に戻ったのでした。
▼▼▼
アリス:「もう、アンタはなんていたずらっ子なの!」
アリスはキティを抱き寄せて、こんな事をするのはいけない事なのよと分からせるために、ちょっとキスをしてやりました。
キティ:「ふにゃ〜ん♪」
片方の手で猫耳を押さえつけ、もう片方の手で鼻を撫で回してやると、キティは喉をゴロゴロ鳴らして大人しくなりなした。
アリス:「ほら、帰るわよ」
キティ:「でも…借金が…」
アリス:「仕方ないわね」
キティの借金を帳消しにするために、右手に力を集めます。
キティ:「待って、何するつもりだ?」
空は鳴り、大地は揺れて、海は荒れ狂い、眩しい雷光と共に、拳が降ろされます!!
アリス:「えいっ!」
バキバキバキバキ!!!!!
地球が割れました。
アリス:「これで大丈夫」
キティ:「あぅ、あぅあぅ…」
人類を滅ぼすアリスの拳、キティは開いた口が塞がりませんでしたとさ。
めでたし めでたし