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時に彼女は嘘と嗤う  作者: ネコバコ
第1章~隠された嘘と青春~
21/21

第21話『自分の中の天使と悪魔』

 





 どの問題の解決を優先すれば良いのか正直戸惑うところはあるが、まずは鷺ノ宮と前嶋との関係修繕から始めればいいかもしれない。




「しっかし、本当に楠にどう謝れば⋯⋯」




 厄介なことに巻き込まれてしまったと思うが、その前にも厄介なことを自分自身で引き起こしてしまったのでどうしようも無い。

 今日は金曜日。

 学生からしたらウキウキランランで学校生活を過ごせる唯一の楽な日である。

 そんな日を三つの問題によって台無しにすることだけは避けて通りたい所だ。

 木原は鞄を持ち、手ぐしで髪の毛を整えながら急いで階段を駆け下りた。















 ────本当に昨日からおかしい。



「あ」



 二人の声が重なる。

 職員室から教室へ帰ろうとした矢先に偶然にも鷺ノ宮とばったり遭遇してしまったのだ。



 一番最初に問題を解決しないといけない人物なのに一番最初には会いたくないというなんとも矛盾だらけなことである。

 話すことは沢山あるものの、とても話が出来る場面ではない。





(はやく! はやくどっかに行ってくれ!!)




 木原は目を最大限に開いて鷺ノ宮を威圧し、目で訴えかけた。

 本当は行って欲しくないのだが。


 鷺ノ宮は目ッセージを受け取ったのか、蔑んだような目で木原と目を合わせながら訴えかける。



(私に近寄らないでくれない?)



 鷺ノ宮の目はそんなことを訴えているような目だ。

 返事なんて当然ない。そりゃそうだ。



 木原は鷺ノ宮と目を逸らし、急いで教室へと向かった。


 なんとも自己中で傲慢な性格なのか。

 木原自身、元々分かっていたがコミュニケーション能力は皆無で、女子と話すことが難しい。だから鷺ノ宮に嫌われるのだ。



 しかし、こんな所で諦めていたら初恋相手の鷺ノ宮に嫌われっぱなしだ。

 チャンスは放課後の部活。

 そこで鷺ノ宮と前嶋と仲直り。その計画で行く。



 木原は一人でぶつぶつ言いながら教室のドアを開けると、ユウスケが何故か突っ立っている。





「おい木原。こっち来い」




「え、ちょっ、おぁぁぁぁ!!!!」




 ユウスケは木原の服を鷲掴みし、教室の外へと引っ張り出した。

 何が何だか分からず、木原は喚くことしか出来なかった。








 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇




 ひとつ降りた階の男子トイレの密室で木原はユウスケに拘束されていた。



「え? 何?? 何故にここ??」



 狭い部屋に便器ひとつがど真ん中に置かれている。それを跨ぐようにして木原はユウスケに壁ドンをされた。

 気分を害するような異臭は多分便器の中からだろう。そのせいで少し二人の顔が強ばる。



「⋯⋯お前、鷺ノ宮と前嶋とどうなったの? あれから」


 ユウスケはギリギリまで顔を近づけて尋問した。

 面白半分ではない、何か心配げに問いかけているようである。意外にも。




「⋯⋯は? 何? なんなの?」



 木原は少しキレ気味に言葉を発した。

 しかしその言葉とは裏腹に、図星である。

 その言葉の通り、まだ進展なし。進展がないどころか後退してるのではないかと思うくらいの出来事が今さっきあったばかりである。

 半端な覚悟であったことを後悔しなければいけない。




「そんで、話聞く? あの後の前嶋の話」




 そういえば前嶋と別れた後は無我夢中で家に帰ったので、その後は知らないし、今日は一度も会ってもなかった。

 ただ、ユウスケの話し方が若干いつもより暗いので、あの時の出来事を全部部員に話してしまったのではないかと木原は推測した。

 ここで話を聞いては、自分自身で解決したことにはならない。

 木原は首を横に振って即座に断った。





「⋯⋯なぁ、もういいか? 俺、用事あるんだけど」




「え? あ、あぁ⋯⋯。悪かったな。すまんな、色々聞き出そうとして」




「良いんだよ」




 そう言うと木原はユウスケによって拘束されていた腕からすり抜け、教室へと戻っていった。


 木原が教室へと戻っていくのをただ呆然と立ち尽くしたまま見つめるユウスケ。

 鷺ノ宮とのことは置いとくとして、前嶋があの後部室に戻ってきて何を言ったのか、何をしたのか。



「⋯⋯あいつかなりやられてんな。マジ切れすぎ。話聞けよ」



 木原の即否定には何かが込められている。

 そう自分自身で解釈し、ユウスケはその場で座り込んだ。




 あの時の前嶋は、泣いていた。





 木原の元へ行ってから数十分の間に何があったのかは知らない。

 だが、泣いている姿から何があったのかを予想するのは簡単だ。楽しいお話をした訳では無い。そんなことは誰でもわかる。



 しかし、前嶋は誰もが予想することの出来ない言葉をあの時に発したのだ。



 部屋のドアを半分開け、俯きながら泣く前嶋。


 それを無言で心配げに見つめる部員三人。






 大丈夫? 何があったの? と、声をかける前だった。





 前嶋は涙を零しながら顔を上げて言ったのだ。






『わたしって⋯⋯。うそつきなんでしょうか⋯⋯』





 泣いている。しかし、その顔は嗤っていた。





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