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大学生・由良美香のアルバイト事情 ~そのアルバイト、恋愛禁止につき!~  作者: 鶯埜 餡
case.2

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11/30

情報通の愛理

 翌日の土曜日以降、バイトに行くときは今まで以上に、戦場に赴くような気分になった。


 これで私が悪者扱いされても、仕方ないよなぁというか、された場合には解雇とかありうるわな。

 そうなった時にはそうなった時だ。

 今からでも新しいバイト探しでもしておくか。


 だが、それは杞憂に終わった。

 いつも通りに若先生、大先生そして奥様も接してくださった。

 もしかしたらまだ、タイミングをつかめてないだけであって、チクる(情報提供する)気満々かもしれないが。


 もちろん、私は内心ではビビりまくっているわけで、名前を呼ばれるだけで震えあがっている有様である。


 もちろん、あの時の言葉を後悔はしていない。

 実際に、ドタキャン魔たちは復活したのだから。


 そんな私とは対照的に、立花さんは日に日に余裕をかましている。

 なぜなら、私が忠告したことに気付いて、それを実行できていると思っているからだ。


『どうです? あなたができることなんて私だって余裕でできますよ』


 あの日以来、一切私と喋らなくなった彼女だが、時々向ける視線はあたかもそう言っているようだった。





「何かあったの?」

 学食でのお昼。例の件でビビりまくっていた私は、大学でも何か言われるんじゃないかと神経をすり減らしていた。

 そのせいでどうやら箸が進んでいなかったようで、愛理が心配して聞いてくれた。私は何でもないよ、と答える。


「そう。もし何かあるんなら、いつでも言ってね。言いたくない事だったら、その辺ぼかしてくれていいから。

 私のプライベートにまで口を出さない彼女の姿は、非常にありがたい。これだから、彼女と一緒にいるのをやめられないんだろうね。


「そういや、あんたんところの学部、なんだかきな臭いわね?」

 愛理の言葉に首を傾げる。

 確かに、ゼミ関連の希望調査が近々行われるせいか、専門科目の授業の雰囲気がおかしい事には気づいていたが、あの件とは無関係だろうと思い込んで、あまり気にしないでいた。

「どういうこと?」

 私の疑問に、ため息をつきながら答えてくれた。


「どうやら、今年も『ゼミ落とし』をしようとしている連中がいるみたい」

 愛理の言葉に嘘でしょ、と唖然としてしまった。


『ゼミ落とし』

 自分が第一希望のゼミに配属されたいから、同じゼミに希望を出している仲間以外の同期や、自分を選ぶように教授や事務職員にゴマすりに行くのだ。

 さすがに後者は大学全体で禁止されているので、拒否されるが、前者は教授や事務職員がいないところで横行しているのが実情だ。

 愛理からの情報では、去年も少なからず泣かされた人がいるという。


「ちなみに、今年は行政法理論ゼミと法政ゼミ、理論立法ゼミが今回、そのやり玉に挙がっているらしいね」

 法学部の私よりも詳しい農学部の愛理の言葉に、私は頭の中が真っ白になった。



 行政法理論ゼミに一次申し込みをしていたからだ。

 一次申し込みの結果は貼り出しされ、誰がどのゼミに申し込んだか、わかるようになっている。



「――――美香?」

 私の動きが止まったことに気付いたようだった。そして、運の悪いことに、彼ら(・・)はやってきた。


「ねえ、由良さん、ちょっといいかしら」

 背後から私の名前が呼ばれた。ぎこちなく後ろを振り向くと、同期の女の子が、四人、怖い顔で私を睨んでいた。

事象名やゼミの名称は架空のものです。

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