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PANDEGO!  作者: 白川 蓮
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あっち側とこっち側

は〜


部屋に帰ると日課のように溜息が出る。

そして今日もベッドにダイブ。


まさか、数森とコーヒーを淹れる羽目になるとは…


まぁ、あいつはホントについて来ただけで手伝わなかったけど。


しかもコーヒーはしっかり飲んでるし、ミルクと砂糖入れて。


まあ、私も入れたけど。


はぁ


また溜息。


数森、腹立つ。


私がちょっと何かしようとすると、すぐ止めようとする。

特に席から離れて行動しようとすると速攻で。


親か。

過保護か。


もう、いっそ私好きなのかよって、ツッコミたくすらある。


悪いヤツではないんだろう。が、人を、というか私を馬鹿にしてることは間違いない。


だがな、数森。

バカだと思ってんのはお互い様だからな。


そもそも、出会いの瞬間からあいつはバカ丸出しだった。




初出勤の日、私は緊張と興奮、そしてようやくここまでたどり着いたという感慨を抱き、職場となる市役所の建物に入った。


周りを見渡すと、私と同じように興奮した面持ちの人達がいた。


本当に、本当に、よくここまで復興出来たものだ。

そう思って、あの時は涙が出そうだった。



何しろそれまでが酷すぎた。

終わりの世界が終わった後も、世界はどうしようもない状態だった。


終わったことが分かるまでにまず時間がかかった。

だんだん、誰もその状態じゃないらしいとわかってきた後も、あっち側と、こっち側の距離は埋まらなかった。


それはそうだろうと思う。


日本でも、その状況はしばらく続いた。


それから、「やっぱりお互い協力すべきじゃね」とみんなが判断するまでにも時間がかかった。


その後、ようやくおっかなびっくりながら、あっち側とこっち側で協力しようってなることができた。


そうしないと、本当にどうにも出来ない状態だったから、お互いしぶしぶ協力することにしたんだろうと思う。


で、最初の仕事は夥しい数の遺体の処理だった。


なかなかに、ハードで辛い仕事だった。


ただ、 幸い日本は冬の終わり頃の季節で、さらに遺体もこっち側の人の遺体はミイラ状態だったから、あんまり腐敗に苦しむ事がなかったのが幸いと言えなくもないかな?


衛生的な面で考えても、それは幸いだったろうと思う。さもないと、今度は別の病気が大量発生していたかも知れないし。


ただ、すでに人は減りすぎていた。

社会が持たない程に。


目の前のものを片付けながら、この国に住んでる、何とか生き残っていた人々は、今後どうしていいのか、正直途方に暮れていた。


そんな中、新星の如く輝きだした存在かあった。

元自衛隊員の集団だった。


いや本当、自衛隊って凄いなって思った。


よくわからないうちに、その人達を中心になんか政府が出来た。


そして今までの社会はなかった事で、って感じで全てが一旦国有化される事になった。


緊急避難的社会主義国、新日本。


人を含めて、使えるものを掻き集め、狭い日本でさらに縮こまって、固まって暮らす。


確かに、昔の様に、長距離を気軽に移動する余力などない。


協力し合える範囲で国を立て直し、人が生きられる社会を取り戻そうという理念は、今の私達の希望の礎。

だからこそ、絶対に破っちゃいけないルールが決められた。



ドッチダッタ?



最重要個人情報。



憎しみあいを止めるため、新日本では、それもなかった事にしたのだ。



新政府発足後、生存者全員に仕事が割り振られ、私はここ、新東京市の市役所勤務となった。

その初出勤の日、初めて出会った。

あいつは、周りからちょっと浮いてるように見えた。

数森って名前さえ知らない時。


怖い…


そう思った。


彼を見た瞬間恐怖にかられた。


あの、傷…


見たくない。


目を背け、気づかないでいたい。


でも…


だめだと思った。


それじゃダメだ。そう思った。


世界の終わりは、乗り越えよう。

前を向いて生きるのだ。


声をかけよう、私から。

共に歩もう、終わりを乗り越えた世界を。


って・・・、なのに


自己紹介もまだだった。


にも関わらず、あいつは、私の顔を見るなり、スッと近寄って耳元で囁いた。


「お前さ、アッチだろ…」

「!」


何も言えないでいる私に、他の誰にも聞こえないくらい小さな音で舌打ちをした。



あっちと、こっち…

無くさなきゃいけない、大きな溝が、私の前に広がっていた。




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