coffee break
「コーヒー、淹れて来ます」
能天気な馬鹿が元気よく立ち上がって宣言した。
美沙さんのデスクに目をやり、俺は思わずため息をついた。
時計は丁度午後3時を指している。
コイツ、早くお茶の時間にならないかな〜なんて考えていたに違いない。
馬鹿だ。
周りが見えてない。
「いや、お前さ。美沙さん忙しそうなのわかんねー?仕事佳境っぽいじゃん」
「だ、だから私がコーヒー淹れて来ようかなぁって」
信じらんねー、こいつ一人で給湯室行く気かよ。
「ちょ、ちょっとだけ待って。私もコーヒー飲みたいから一緒に淹れに行こ」
あー、ほら、美沙さんがまた困ってる。
美沙さんが慌てて作業を中断しようとしている。
「いいですよ、コーヒーくらい私一人で…」
ちくしょう、ホントわかってねーな。
「俺が行くっす」
思わず立っちまった。
「え、数森が淹れてくれんの?」
「なんで俺が淹れんだよ、お前が飲みたいんだろうが」
「だって俺が行くって」
「だから、ついてってやるっつってんだろ」
「え、一緒行きたいの?」
絞め殺してー
見ると美沙さんの肩が微かに震えてる。声を殺して笑ってるし。
「ほら、とっとと行くぞ」
なんで俺、こんな思いをしてまでこんな奴の面倒見てんだろうな。
くだらないことで時間を食いたくない。
俺は風子を促して給湯室に向かった。
ちょっと〜とか言いながら、風子がついて来る。
廊下を歩くと、案の定他の班や課の奴がざわめく。
憎々しげな感情が風子に、そして俺に向けられているのを感じる。
ホント、俺、なんでこんなの守ってんだろ。
なんでこんなの、守らねぇといけないんだろ。
こんな…
こんな、アッチ側の奴を…