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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第三章 ダンジョン編(2)
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57.邪悪な姫

 カエデは、手にしていた魔石を頬張った。ハルトは彼女のその行為にゾッとして、思わず剣を落としてしまう。


 ところが、彼女の奇行はそれだけでは止まらない。金貨が入っている袋を取り出し、そこに隠し持っていた魔石をわしづかみにして口の中へ押し込んだのだ。


「なんと! まだ魔石を隠し持っていたとは!」


 モスカが地団駄を踏んで悔しがる。


 すっかり魔石を飲み込んだ彼女の全身が、突然、輝き始めた。そのあまりの(まぶ)しさに、全員が固く目を閉じた。


 やがて光が消えると、そこには紫色のドレスを(まと)ったカエデが立っていた。


 いや、あれはカエデではない。(くるぶし)まで届く金色のロングヘア、コバルトブルーの目。クリザンテーモ・セレーナの姿だ。


「そこの黒ローブ。目障りだ」


 彼女がそう言いながら右手を突き出すと、手の先に紫色の魔方陣が出現する。次の瞬間、モスカとミストが後ろに吹き飛んで壁に激突した。



 未だに信じられないハルトは、彼女の姿にカエデの片鱗を探す。あれは本当はカエデだ、魔石を飲み込んだからおかしくなっているだけだ、とカエデであることへの一縷の望みにすがった。


「さあ、()がガーディアンたちよ。今すぐ、ここへ参れ」


 セレーナがハルトの方へ手招きをする。しかし、彼を呼んでいるのではなかった。


 彼女の招きに応じるように、剣が変身を解いて元のオルテンシアとカメリアの姿になり、セレーナの元へ駆け寄った。シュヴァルツも、遅れまいと二人の後を追った。


「おい、待てよ!」


 右腕を伸ばしたハルトは数歩追いかけたが、減速して立ち止まった。


「何だよ、そのガーディアンたちって……」


 ハルトのつぶやきにセレーナはこう答えた。


「この三人は、半年前にわらわがこの手でこしらえたガーディアン。わらわを守護するもの」


「こしらえた? ……だから、半年前までの記憶しかなかったのか」


「狼の魔石と他の魔石の力を得て、ようやく、わらわは願いを叶えることが出来る」


 オルテンシアとカメリアとシュヴァルツが、セレーナの前に来て(ひざまず)き、(こうべ)を垂れた。


「さあ、わらわと合体せよ」


 すると、三人の姿は煙のようになって、セレーナの体に吸い込まれた。再び彼女は光に包まれ、その光が消えると、甲冑を着て二本の剣を携えた姿になっていた。


 まるで夢でも見ているかのような光景だ。


「カエデ……何をやってるんだよ……」


「カエデ? ああ、まだ目を覚ましておらぬな。哀れな男よ」


「…………」


「主を失ったこの城郭は、わらわのものとなった。

 今から、上の階層を突き抜けて地上に現れる。そして、ここを拠点として、わらわはこの587カ国1192の言語を持つという馬鹿げた世界を一つにし、手中に収める。

 全ては、わらわの意のままとなるのだ」



 ハルトは彼女の野望に気づいて、ハッと目が覚めた。もうこれはカエデではない。この異世界を支配しようとしているセレーナ姫なのだ。


「おい、モスカにミスト! お前たちはこのことを知っていて止めようとしたのか!?」


 ところが、壁にもたれかかる二人は、同時に首を横へ振る。


「知らぬ。

 ミスト様は、あのセレーナ姫が魔女を迫害する大国に嫁いで迫害の陣頭指揮を執るという未来を予知したので、それを阻止しようとした。

 こんな大それたことを計画している姫だとは思わなかった」


 すると、セレーナが薄笑いを浮かべた。


「その紫髪の者に暗殺されそうになったわらわは、あまりに急だったゆえ、ガーディアンを残して別の世界へ逃げた。

 そこでわらわは、親のいない子供が入る施設に潜り込み、里子としてハルトの家に紹介され、妹として可愛がられた。

 毎日が楽しかったぞ。もっと一緒にいたかったがな」


 ミストが立ち上がって、一歩前に出た。


「あちらの世界に逃げたのを見つけ出したのが、この私。だから、こちらの世界へ連れ戻して殺すために、召還魔法を使った。

 ところが、その時、一緒に付いてきてしまったのが――」


 彼女は、ビシッとハルトを指さす。


「お前だ。

 それで、あの森にセレーナ姫が召還されたはずが、玉突きになって姫は別のところに飛ばされ、お前があそこに現れてしまったのだ。だから、森の中で殺せなかった。

 こうなったのも、お前のせいだぞ!」


 ハルトは、ヘナヘナと座り込んだ。


「俺のせいじゃない……。たまたまだ……」


 モスカが「さてと」と言いながら立ち上がった。


「召還失敗の件をこれ以上議論しても時間の無駄。

 それより、あの姫は、魔女を迫害するどころか、この世界を手中に収めると言い出した。

 こちらの方が緊急事態。

 姫の暴走を我々で止めねば」


「ええ、そうね。最高の魔法をぶつけるしかないわね」


 ミストが険しい顔になった。


 と、突然、建物全体がグラグラと揺れ始め、実にゆっくりと上昇を始めた。


 この城郭が地上へと向かい始めたのだ。


「させない!」


 ミストが両手を挙げて、頭上に赤々と燃える玉を出現させた。


「エクスプロ――」


 彼女が爆裂魔法の詠唱を始めた瞬間、セレーナがミストの前に瞬間移動して、剣を真横に振る。


 ミストの両腕と首が飛び、血潮が垂直に吹き上げた。


「ウオオオオオッ!」


 モスカが深紅の剣を振りかざしてセレーナに襲いかかる。


 しかし、彼女の剣の一振りで彼の両腕と首は宙に浮き、血しぶきが辺りに飛んだ。


「死に急ぐ馬鹿どもめが。

 しかし、よく斬れる剣である。さすがはガーディアン」


 そう言って剣を嬉しそうに眺める彼女は「お前もこやつらと一緒か?」と言いながら、背筋が凍るような視線をハルトへ向けた。


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