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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第三章 ダンジョン編(2)
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56.ラスボスを倒したが

 第5階層への扉がモスカによって開かれた。そこには下り階段があった。所々、光る魔石がロウソク代わりに配置されているので、足下は明るい。一行は、階段を慎重に下っていく。


 降りきった彼らの目に飛び込んだのは、第4階層と全く同じ光景だった。


 唯一違うのは、だだっ広い部屋の中央で、銀色に光る狼が待っていたことだ。


「ちっちゃ! 何だよ。あれがラスボスかよ。

 巨大なミノタウロスとかドラゴンでも出てくるのかと思ったぜ」


「ハルトが仕留めるか?」


 モスカは、どうぞお先にという仕草をする。


「いいや。てめーがやれ」


「あくまでもモスカという名前を使わず、てめーで通すのだな?」


「いいだろうがよ! こっちの勝手だぜ!」


「フン。なら、魔石は山分けでなくてもいいのだな?」


「ほーら見ろ! 馬脚を現したぜ! 最初からそのつもりだったんだろ!」


「試したのか……」


「あのラスボスを倒した直後に、後ろから刺されるのはゴメンだぜ!」


「それはこっちも同じ。後ろから斬りかからないだろうな?」


「てめーと違って、そんな卑怯な真似はしねーよ!」


 モスカは肩をすくめる。


「まあいいだろう。あいつを仕留めて、魔石はもらう。

 だが、この部屋を見てみろ。捜している人の手がかりでもあると思うか? 見た限りでは、何もないぞ」


「うるせー! 必ずある!」


「無駄だと思うが……」


 そう言って、モスカは深紅の剣を振り上げ、ラスボスへと突進した。



 彼の戦いぶりは、単なる魔法使いとは思えないほど、剣士並みに見事だった。


 だが、さすがにラスボスというだけあって、狼も負けてはいない。血だらけになりながらもなかなか倒れず、鋭い爪と牙で彼にも怪我を負わせる。


 互いに肩で大きく息を吸い、睨み合う。


 そして、再び相まみえる。


 ハルトは彼らの戦いぶりを見ながらも、周囲の様子を窺っていた。どこからか、手がかりが現れないとも限らないからだ。


 ラスボスを倒した瞬間、捕らわれていたお姫様が姿を現すこともあり得る。その瞬間を見逃すまいと、彼は周囲に細心の注意を払った。



 最後の力を振り絞った狼が、上からモスカに襲いかかろうと宙を舞った。


 しかし、モスカはそれに気づいて、狼の額めがけて剣を突き刺した。


「ギャー!」


 狼は悲鳴を上げ、全身が光の粒に包まれた。そして、その体の中心から、大きな赤い魔石が落下した。


 今までのサイズの2倍ではきかない。3倍、あるいは4倍もある特大の魔石だ。


 それが、ゴトッと音を立てて一度弾むと、ゴロゴロと床の上を転がっていく。


 モスカは満足そうにそれを見つめる。だが、拾おうとしない。


 と、その時、ハルトの横にいたカエデの姿がフッと消えた。


 次の瞬間、動かないモスカの前に出現し、魔石を拾い上げたかと思うと、またフッと消えた。


 そして、彼から10メートル離れたところに姿を現した。


 だが、モスカはまるでこれを予想していたかのように驚きもせず、腹を抱えて笑い出す。


「引っかかったぞ! あいつが引っかかったぞ!」


 ハルトは、カエデの不可解な行動に呆然として立ち尽くす。


 モスカの笑い声が部屋中にこだまする中、今までずっと黙っていたミストが初めて口を開いた。


「ついに姿を現したわね、クリザンテーモ・セレーナ。

 私たちは、この時を待っていたのよ」


 彼女はそう言って、両手を高く上げる。すると、彼女の頭上に赤々と燃える光の玉が出現した。


「さあ、お姫様。覚悟はいいかしら?

 ここがあなたの死に場所よ。

 楽に死なせてあげるわ」


 すると、カエデが急に高笑いを始めた。そして、ミストを指さしてこう言い放った。


「死ぬのは、貴様の方だ」


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