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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第三章 ダンジョン編(2)
50/60

50.凶暴な精霊

 結局、魔石は31個しか見つからなかった。シュヴァルツとハルトは、カエデに疑いの目を向けるも、証拠がないので追求できない。


 特にハルトは、第2階層でカエデが魔石を口に入れたかのような場面を目撃しているので、何個かを腹の中に入れているような気がしていた。


 そうまでして隠す理由がわからない。妹はそんなに()()()()性格なのだろうかと彼は悩む。


 しかし、ここで立ち止まるわけにはいかない。早く第5階層まで進み、お姫様の手がかりを見つけ出すのだ。



 ハルトが天井から下へ向かう入り口を探していると、シュヴァルツが近づいてきて耳打ちをする。


「坊主。上の穴からこちらを見ている奴が二人いる」


「魔獣じゃなくて?」


「ああ。黒ローブを着ている奴らだ。一人は黒いフードをかぶっているから男か女かわからないが、もう一人は紫髪の男だ」


 ハルトは振り返って上の穴を見上げたが、人影はなかった。


「もういないぞ」


「ちっ。隠れやがったな。上まで行って偵察してこようか?」


「黒ローブって、魔法使いっぽいな。冒険者にそんな格好のはいないし……。

 そうだな。お前は、カエデを見張れ。偵察は俺が行く」


 ハルトはカエデに「不審者がいたから探しに行く」と告げて、カメリアの剣で穴まで飛んだ。


 彼は迷路庭園まで戻って探したが、魔獣すらいなかった。魔獣は透明になっている可能性があるが、地面に足跡が増えないので、いないことがわかる。


「なあ、カメリア。お前は何か感じないか?」


『ごくわずかに異様な魔力を感じる』


「やっぱり? どこ?」


『あっ……消えた』


「畜生。逃げたってことだな。

 ……仕方ない。用心するか」


 ハルトが何の成果もなく城郭の天井へ戻ると、そこには吉報が待っていた。


 カエデが、下へ降りる入り口を見つけたのだという。


 彼女が指さした場所は天井の中央付近。最初に骸骨たちが出現した場所だ。


 そこにある1メートル四方の正方形の部分が、周囲と比べて色がわずかに暗い。しかも、石の一部に指をかけることが出来る凹みがあり、いかにも左に開くドアに見える。


 シュヴァルツがその凹みに左手の指をかけて「フン!」と力を入れると、割と簡単に開いた。正方形の穴の中を覗くと、梯子がかかっている。


 両手が塞がっているハルトは、オルテンシアとカメリアの剣に先に降りてもらい、用心しながら梯子を下りる。


 降りきったところは、人が三人並んで通れる幅の廊下だった。天井の高さは、ハルトが背伸びをすれば手が届く。


 ひんやりとする石の壁の両側やや天井付近に、青白く光る丸い魔石がロウソク代わりに等間隔で置かれている。この光が割と明るいので、壁の石のゴツゴツがはっきりと見える。


 ハルトが辺りを見渡していると、カエデもシュヴァルツも降りてきた。


「坊主。上は一応閉めたぞ」


「サンキュ」


 二人へ振り返らずに答えるハルトは、腕組みをして唸った。


「うーむ。こんな狭いところに魔獣が出てきたら、戦いにくいぞ」


『確かにそうですわ』


『石は切れないから注意して』


 彼は「剣を壁にぶつけるなってことだろ? 注意するよ」と言って宙に浮く二本の剣をつかむ。


「ん? 最近、ああん、とか声を上げないな」


『我慢しているのですわ』


『聞きたい? 変態』


「わかった、わかった。おれが悪かった」


 と、その時、奥の方から黒い煙の塊が現れた。


『凶暴化した精霊――狂心(フェアリックター)精霊(ガイスト)ですわ!』


『あの森にいた奴に似ている!』


 ハルトは、最初にオルテンシアたちと森で出会ったときに遭遇した黒光りする体毛のライオンを思い出して奮い立った。


「ってことは、一度は遭遇しているな!

 さあ、来いや!」


 彼は二刀流の構えを取った。


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