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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第三章 ダンジョン編(2)
49/60

49.骸骨の群れ

 シュヴァルツとカエデは、正方形の天井の頂点付近にいた。一方、骸骨は天井の中心付近にわらわらと湧き出ている。しかし、歩みがのろいので、接近してくるまで時間には余裕がある。


 ハルトはカエデたちの前に着地して「もう少し中に入れ! さもないと追い詰められたらすぐに落下するぞ!」と骸骨の方に向かって走る。


 実際、天井は縁に柵があるわけでもなく、段差もなく、完全に平らなのだ。


 シュヴァルツはハルトを追いかけてオルテンシアの剣を渡し、自分の剣を構える。カエデも走りながら自分の剣を構えたが、シュヴァルツの背後に回った。


 骸骨は、遠くから見た段階では素手のように見えたが、よく見ると短剣を持っている。中にはサーベルのような剣を持っているものもいる。ヘルメットを被ったり、丸い盾を持っているものまでいる。


 このちぐはぐな装備の骸骨連隊は、三十体以上になった。全員、やや猫背の格好で、顎をガクガク言わせながら何やら呪いの言葉でも唱えているようだ。しかし、耳には風の音と足音しか聞こえない。


 ハルトが駆け足で骸骨の集団に近づいていくと、逆に向こうが大股で歩き始めた。彼らは、剣を振りかざしながら隊列を組んでやって来る。


「くたばれ! 化け物め!」


 彼は力任せに剣を振り下ろす。袈裟懸けに斬られた骸骨は光の粒となって消え、赤い魔石を落とした。


 ハルトは、シュヴァルツとカエデの戦っている位置を確認せず、無我夢中で剣を振るう。


 腕が飛ぶ。首が飛ぶ。背骨が真っ二つになる。いずれも、骨が天井へ落下する前に光の粒となっていく。


 転がる魔石を拾うのは後。とにかく、立ち塞がる敵を斬り捨てていく。



 こうして、骸骨連隊は殲滅された。


 幸い、連中の応援はやってこなかった。ハルトは、安堵のため息をついて魔石を拾い、周囲の青白い光に照らす。


 大型の猫の魔物が落とす魔石の倍はある。思わぬ収穫だ。自然と笑みがこぼれる。


 振り返ると、シュヴァルツもカエデもせっせと魔石を拾っている。


 本当は骸骨を倒した者がドロップした魔石を獲得する権利がある。しかし、誰がどれを倒したなど、今となっては区別が付かない。


「山分けでいいぜ」


 ハルトはそうつぶやいて他の魔石を拾おうとした時、ふとカエデの視線が気になった。


 彼女は、魔石を拾いながらしきりにこちらを見ているのである。


 彼は微笑んでみた。彼女は、少し遅れて微笑んだ。でも、拾う度に自分の方を見る。それがどうしても気になる。


「大丈夫だ。どれを持っていってもいいぜ」


「ありがとう」


 と、その時、シュヴァルツがツツーッとハルトの方へ近づいてきた。そして、耳元で囁く。


「カエデだけど」


「何?」


「俺の後ろにいた。そして、俺たちを通過した骸骨はいない。

 ってことは、カエデは一人も倒していない。

 いいのか、魔石を渡して?」


「……仲間だからいいよ」


 シュヴァルツはあからさまに困惑する。


「坊主。何個拾った?」


「これで2個目」


 そう言ってハルトはしゃがみ込み、足下の赤い魔石を拾った。


「俺は12個。敵は三十以上はいたぜ。ってことは、カエデは16個以上持っているはず」


 ハルトは、カエデを手招きした。


「おーい。何個拾った?」


「17個。悪い?」


 そう言う彼女は、腰に手を当てて胸を反らす。


「…………」


「何なら、見せようか?」


 彼女は袋を突き出した。ハルトはむくれている彼女に向かって「見せなくていい」と伝えた。


 そして、シュヴァルツに向かって小声で話の続きをする。


「数は合っていそうだぞ」


「うーむ、納得がいかん。敵はもっといたはずだが……」


「今は証拠がない。決定的証拠をつかんだときだな」


「つかんだらどうする?」


「問い詰める」


「何を?」


「カメリアの話だと、あれはお姫様が化けているらしい」


 シュヴァルツが目を剥いた。


「まだ推測段階だから、秘密だぞ」


「相わかった」


 シュヴァルツとハルトは、横目でチラッとカエデの方を見た。ハルトも見た。彼女は背を向けてかがみ込み、まだ魔石がないか探しているようだ。


 でも、ハルトには、それがゼスチャーにしか見えなかった。


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