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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第三章 ダンジョン編(2)
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47.地下に作られた城郭

 カエデが入っていった半円状の穴は、明かりとなる魔石はなく、真っ暗闇のトンネルであった。


 このトンネルは緩やかな下り坂になっている。第2.5階層というくらいだから、下るのは理解できるが、どこまで下るのか。彼女の足音しか聞こえないハルトは、無性に心配になってきた。


「なあ。どこまで下るんだ」


「あと少しよ」


 彼と彼女の声がトンネルの中で反響する。だが、いつまで経ってもその「あと少し」が終わらない。


 そろそろ不安の限界に達する頃、前方にボンヤリと青白い明かりが見えてきて、カエデのシルエットが浮かんだ。やっとハルトは安堵の胸をなで下ろす。


「途中から平らになるから、こけないで」


 一度振り返ってそう忠告した彼女は、また向き直って明かりの上の方を歩いて行く。上へ上っているわけではない。下りのトンネルの先にある明るい部分から地上と平行になっているので、錯覚でそう見えるのだ。


 彼女の姿が消えた。平らなところをドンドン先に行ったのだ。ハルトたちは少し駆け足で坂を下った。


 平らな部分に達した二人は、アッと声を上げて立ちすくむ。


 今までとは比べものにならないくらい、壁に魔石が埋め込まれているのでとても明るい。しかも、その魔石は青白い。ハルトが誘導された偽の第2階層とよく似ている色だ。


 青白い光をバックに、カエデが背を向けて立っている。どうやら、トンネルの出口のそばにいるようだ。


 その彼女が頭だけ振り返った。


「何しているの? 来ないの?」


 顎をちょっと上げた彼女の表情が冷たい。立ち往生しているのを怒っているのかと思ったハルトは「行くに決まってんだろ」と言って歩み出す。


「見て。ここから下が第3階層よ」


 そう言ったカエデは、正面に向き直ってから足下を見下ろす。


 その彼女の背中へ近づいて行くにつれて、徐々に前方の視界が広がっていくハルトは息を飲んだ。


 どうやらそこは、下に向かって伸びている巨大な穴のようだ。つまり、カエデは穴の縁に立っているのだ。


 風のようなものを感じる。ゴオオオオオッという響きが下の方から聞こえてくる。


 ついに、彼は彼女の右横に立った。同時に戦慄が走り、股間がスーッと寒くなる。


 目の前の穴は、直径が何メートルあるのか、目測でも見当が付かないほどだだっ広い。


 彼は100メートル競走の距離を思い出す。それでも、穴の中心には達しない。それで、彼は勝手に直径300メートルと推定した。


 そして、視線を下に移動する。


 視界に飛び込んだのは、穴に接するくらいの大きさで正方形の石畳。それが建物の天井であることがわかって、彼は二度ビックリした。


 その天井までの距離を、自分の立っている位置から目測すると、二階建ての建物が二つ分の高さになりそうだ。


 視線をその天井からさらに下へ向けると、薄暗い闇に飲み込まれる建物の壁が見えた。


「これは、建物というよりは城郭なの。この城郭が三階建て。地面が見えにくいけれど、三階建てに間違いない」


 そう言ってカエデがゆっくりと顔を上げてハルトの方を見た。


「お姫様の手がかりがこのダンジョンにあるというのなら、この城郭の一番下、つまり第5階層ということになるわよ」


 彼はゴクリとつばを飲み込む。


「こんなところに、誰が作ったんだ?」


 彼女はこれには答えず、目を落とした。


「お前は、この第3階層への行き方を知っているのか?」


 もう一度彼を見た彼女は、かぶりを振った。


「ううん」


「じゃあ、どうするつもりだ?」


 すると、彼女は彼の剣を指さす。


「これに二人乗りさせてもらえる?」


「マ、マジかよ!!」


 彼の「マジかよ」の叫びが巨大な穴の中でいつまでもこだましていた。


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