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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第三章 ダンジョン編(2)
45/60

45.迷路庭園


「こーこまーで、おーいで!」


「カエデ! 勝手に先に行くな!」


「やだ! だって、つまんないじゃん!」


「つまるもつまらんもねえ! 一緒に行動しろ!」


「こんな簡単なところ抜けられないと、元に戻れないわよ! 練習、練習!」


 カエデの声を頼りにハルトは右に左に走る。しかし、声がしなくなると時々立ち止まり、駆けていく足音を頼りに角を曲がる。


 ところが丁字路のような場所に出ると、勘を頼りに曲がるも、遠ざかっていくような気がする。


 すると、何を思ったのか、ハルトは(つた)を掻き分けて突進した。しかし、ゴンという音がして額を抱えて後ろに倒れ込む。彼をシュヴァルツが上から覗き込んだ。


「坊主。何をしている?」


「いや、この(つた)を抜けられるかと思ったのさ。抜けられれば、直進出来るだろ?」


 シュヴァルツは(つた)を掻き分けてみると、そこには直方体の石がびっしりと積み重ねられていた。


「こいつに頭突きをしたのか?」


 ハルトは頭を抱えて立ち上がる。


「お前の石頭でぶち壊せないか?」


「無茶言うな」


 すると、ハルトは両手の剣に話しかける。


「おい、お前らの中で爆裂魔法みたいのを使えるのはいるか?」


『そんな魔法は知りませんわ』


『自分で習得して』


 彼はガックリとうなだれるが、数秒後に顔を上げて目を輝かせた。


「おい! ひらめいたぞ!」


「なんだ?」


 シュヴァルツの問いに答えず、ハルトは一目散に駆けていき、Uの字の曲がり角に立った。


「おい、来てみろ! これが壁の厚みだ! 十分あるから、この壁の上に立てるぞ!」


 シュヴァルツは厚みを確認し、上を見上げる。


「坊主。どうやって上る?」


「見てろ」


 ハルトはいったん剣を地面に置き、(つた)の枝をグイッと引っ張る。やや細めな枝なのでブチブチと切れるかと思いきや、頑丈な紐のように硬い。


 彼はそれを手でつかみ足をかけながら、縄ばしごにでも上るように上がっていく。そして、壁の上へ顔を出すと、少し離れたところに壁の上に立つカエデを発見した。


「「あっ」」


 二人は顔を見合わせて同時に叫んだ。


「お兄ちゃん、ずるーい!」


「カエデこそ、ずるいぞ!」


「バレちゃしょうがないわ。こーこまーでおーいで」


「畜生! 剣を両手に持ったまま上れないし……って、待てよ!? 出来んじゃん!」


 急いで降りたハルトは、オルテンシアの剣でシュヴァルツを、カメリアの剣で自分を壁の上に立たせるようにそれぞれの剣へ依頼した。剣につかまっていれば空を飛べることは、あの偽の第2階層で実証済みだ。


 剣の力で二人が難なく壁の上にシュタッと立つと、カエデがビックリ仰天という顔をする。


「何それ!? ずるーい!」


「へへーん。俺たちの奥の手だ。

 さあ、これで迷路は丸見えだ。向こうに大きな穴があるから、あれが第2.5階層への入り口だろ? そこへ行きゃいいんだろ?」


「そうよ」


「ところで、魔獣はどこにいる? この迷路の中か?」


「しょうがないわね。ネタばらしすると、実はこの迷路の中にはいなくて、あの穴の近くで番人みたいにうろうろしているの。それを狩るのよ」


 ハルトはため息をついた。


「すげー手が込んだ階層だな。入り口も一種の迷路。中も迷路。で、抜けたところに魔石のお宝がうろうろしている。

 こりゃ、冒険者が尻込みして第1階層だけで商売するわけだ」


 すると、シュヴァルツがハルトの肩をトントンと叩く。


「坊主。後ろを見ろ」


 言われるままに振り向くと、岩の壁が見え、緑の迷路が尽きる当たりに自分たちが通ってきた穴の頭が覗いていた。


 ところが、ちょうどその穴がゴゴゴゴッっと音を立てて閉じていく。それに続いて、そこから少し離れたところに別の穴がゴゴゴゴッっと開いていく。


「なるほどな。でも、ここに立てるのがわかったから、どこの穴が開いても道に迷うことはねえ。洞窟の壁にはカエデが数字を書いているから、分岐のパターンがわかって帰り道もわかる。

 フフン。第2階層は完全に攻略したな」


 カエデが「はやくおいでー!」と手を振って呼んでいる。


 振り返ったハルトは「いいか? 先を追い越すぞ。ビックリすんなよ」とカエデに向かって言って、それからカメリアの剣に語りかける。


「あの穴まで飛んでくれ」


承知(ヤヴォール)


 ハルトとシュヴァルツが剣の柄をしっかり握ると、剣は彼らを運んで空を飛んだ。


「あー! ずるーい!」


 今度はハルトがカエデに向かってベーッと舌を出した。


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