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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第三章 ダンジョン編(2)
43/60

43.迷路のダンジョン

「私が調べたのよ」


 そう言ってカエデは、フフンと笑う。


「嘘こけ! 第2階層までしか行ってないって言ったじゃんか!」


「それがね。行かなくてもわかるの」


 彼女は、悪戯っぽい目をする。


「お前、いつから占い師になったんだ?」


「このダンジョンって、不思議な構造になっているの。

 第1階層は見てきたからわかるわよね」


「ああ。その先で、偽の第2階層で罠にはまってトッピンシャン、抜けたらドンドコショだったけどな」


「意味わかんないけど、ひどい目に遭ったって言いたいのね。

 第2階層は噂の通り、入り口がランダムに変わるの。

 具体的には、この分かれ道の先がそれぞれまた分かれ道になっていて、さらにその先も分かれ道になっている。

 はい、何通りの行き方があるでしょう!?」


『8通り』


 計算できないハルトの代わりに、カメリアが答えた。


「へー! 剣がしゃべるんだぁ! すごーい!」


「感心してないで、その先を教えろ」


「この8通りのどれかの道が通じるようになっていて、それ以外は途中で行き止まり。そう言うランダムなの。

 しかも、時間で変わるから戻るのも大変」


「でもよ。総当たりでいけば、必ず通れるんじゃね?」


「お兄ちゃんにしてはご名答!」


「その、()()()()()()()()()、が余計」


「総当たりが単純な攻略法。でも、道が変わる時間までに抜けきれればの話だけど」


「で、第3階層から下は?」


「3階建ての古代遺跡みたいな建物よ」


「へ?」


 ハルトは()(げん)な顔をする。


「第2階層って、もの凄く広い空間で、迷路なの。生け垣で出来た迷路庭園みたいな」


「ふむふむ」


「それを抜けると、2.5階層っていうか中二階というか、そういう場所に出るんだけど、そこに巨大な穴があって、穴の縁から下を覗くと、3階建てのこれまた縦横が広い建物が見える。それがダンジョンなの。

 だから第5階層までしかないの」


「ダンジョンって洞窟じゃないのか?」


「ダンジョンは元は城郭。それが地下牢になり、地下迷宮になったの。迷宮だから洞窟もありよ」


「わかった。

 つまり、第2階層の下に3階建てのだだっ広い建物があるから第5階層までしかないと。

 でも、その建物に地下はないのか?」


「それは……」


 言いよどむカエデに、ハルトは首をかしげる。


「まあ、行ってねえなら知るわけないよな」


「え、ええ……」


「実は、その下に第50階層まであったりして」


 そう言って笑うハルトを見て、カエデがむくれた。


「私より、ハムかベーコンにしてやるっていう人の方を信用するの?」


「そうじゃなくって、ただ単に、なんで奴らが俺たちにそんな嘘をついたのかが理解できねぇだけさ」


 カエデが両手を腰に当てた。


「じゃあ、見えたのは第5階層まで。そこから先は不明の方が納得いく!?」


 彼女の剣幕に、ハルトは慌てた。


「いやいや、第5階層まででいい。

 俺たちはお姫様の手がかりが欲しいのだから、階層が5だろうと50だろうと、実はどーでもいいんだ。

 手下は手柄が欲しいから、50まで深く潜ったって口から出任せ言ったとも考えられるし」


「じゃあ、話は終わりね。私はこれから狩りに行くから。ここでお別れね」


 そう言ってカエデがクルッと回れ右をするので、ハルトは彼女の方へ腕を伸ばした。


「おい! 俺はお前を捜しに来たんだぞ!」


 彼女は立ち止まり、頭だけ彼の方へ向ける。


「元の世界に戻れるの? 出来ないでしょう? ならば、お互いにここで働くしかないわよね? いつでもここで会えるじゃない」


「なあ、そんな水くさいこと言わず、一緒にお姫様を捜さないか?」


 彼女は少し考えて答える。


「まあいいけど、ただじゃないわよ」


 ハルトは泣きそうな顔で膝を折った。


「ここにもペスカがいたぁ……」


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