41.下の階層に誘導される二人
クネクネする洞窟を進んでいたシュヴァルツが心配そうに言う。
「坊主。これは罠じゃないか?」
すると、ハルトは「それもありそうだな」と言ってクルッと振り返る。
「ん? どうした?」
「お前、ちょっと変身しろ」
シュヴァルツはため息をついて黒猫に変身し、すぐに元の体に戻った。ハルトは首を縦に振る。
「うむ。罠じゃねえ」
「どういう確認の仕方だ!」
「文句言うなら、お前が前を歩け」
ふくれっ面になったシュヴァルツが前に移動し、二人は前進を再開した。
しばらく進んでも影が見えなくなったので、あれは幻だろうかと話し合っているうちに、二股の分かれ道にたどり着いた。
と、その時、左側の穴の向こうでスカートを翻す人影が見えてすぐに消えた。一瞬、振り返ったように見えたが、二人が自分の後を付いてきていることを確認しているのだろうか。
「坊主。どう思う?」
「こっちに来いってことじゃね?」
「じゃあ、進むか」
「おい。目印を彫ろうぜ。第2階層は出入り口が毎回替わるんだろ?」
「替わるのなら、彫っても意味がないぞ」
「それもそうか……。でも、ないよりましだろ」
「そのうち、目印だらけになると思うが……」
ハルトはシュヴァルツを無視して、分かれ道の壁に左向きの矢印とその上に数字の「1」の文字を剣で彫った。
「坊主。その文字は何だ?」
「ああ、この同じ文字をたどれば行けるという意味だ」
「だが、この先の分かれ道も毎回替わったら意味がないぞ」
「……お前、意外に頭いいな」
ハルトは「1」の文字をガリガリ削る。
「ってことは、この先にまた分かれ道があれば4通り、その先にもあれば8通りってことか」
「そうなる。倍々ゲームだ」
「よくそんな言葉知ってんな。なんか、使い方間違ってる気もするが。
あー、めんどくせー! もうバイバイしたいぜ!」
と、その時、シュヴァルツが奥の方へ目をこらす。
「坊主。影が来るぞ」
ハルトは、シュヴァルツの視線を追って奥の方を見た。
確かに、人影がこちらに向かって歩いているようだ。
時折魔石に近づくためか、ほんの一瞬だがボンヤリと姿が見える。でも、確認しようとするとすぐに真っ黒になる。
その見えたり見えなくなったりする人物が、右手に細長い剣を持っているのが見えた。
「てめー! やんのか、こらぁ!?」
ハルトは二本の剣を構え、震え気味に虚勢を張る。
すると、影がクスクスと笑いだした。
「構えがなってないよ、お兄ちゃん」




