39.最下層にある手がかり
「「「「第50階層!?」」」」
ハルトたち四人の驚きの声がハモった。
「その通り。あのダンジョンの最下層だ」
ハルトは震えながら尋ねる。
「おいおい……、そんなところに……普通の冒険者が……行けるのかよ!?」
「行ける」
「簡単に言うなぁ……。ん? 待てよ? なぜ、そこに手がかりがあるとわかった?」
「手下が探し当てた」
「もっと詳しく教えろ!」
カルドは首を大きく横に振った。
「行けばわかる」
「じゃあ、探し当てた手下をここに呼べ!」
「報告した後に息絶えた」
「なぜ!?」
「恐怖のあまり、熱にうなされていた。そいつも『手がかりを見つけた』『行けばわかる』としか言い残さなかった。それ以上は、わからん」
「それを信じろというのか!?」
「事実を伝えたまで」
「俺たちはお姫様とカエデを探して欲しいと言ったんだぞ!」
「知っている。だから、探した。でも、この城に連れて来るとは一言も言っていない」
呆れたハルトは、テーブルを両方の拳で叩いて立ち上がる。弾みで椅子が後ろにガタンと倒れた。
「じゃあ、これでお前らの仕事は終わりかよ!?」
「言わせておけば、言葉遣いがなっていない奴だ。……まあよい。
我々の仕事は、探して手がかりが見つかった時点で終わりだ。後は、自分たちで連れて来い」
カルドは言い終わらないうちに席を立つと、老執事に「帰ってもらえ」と言い残して、さっさと部屋を出て行った。
城から追い出された四人は納得がいかず、門番の兵士と睨み合った。ハルトは、一暴れしてやろうかと息巻いたが、シュヴァルツに止められ、罵詈雑言を浴びせてから引き下がった。
「あーあ、何だよ! 異世界の連中は、人を騙すことに長けている連中ばっかりじゃんか!」
「坊主。騙される奴の方が悪い。うまい話には必ず裏がある。疑ってかかるべきだ」
「人間不信になるぜ! ったくよう!」
すると、カメリアがモジモジしながらうつむき加減に言う。
「私たちがいながら、ごめんなさい」
「……いいよ。カメリアは悪くない。調子のいい話に乗っかった俺が悪い。
それにしても、畜生! 腹立つ!!」
ハルトは、地面の石を門番に向かって思いっきり蹴ってから逃げた。三人はハルトの暴挙に対して門番に謝罪してから帰途についた。
宿屋の部屋へ戻ったハルトは、ベッドの上へ後ろ向きに倒れ込む。そして、弾みながら額に手を当てて嘆いた。
「どうするよ……。50だぜ、50! 第5階層ってんなら行けそうなんだが、どう思う?」
誰も彼の問いかけには答えられない。
「しかも、ギルドとの不利な契約に縛られ、挙げ句にペスカに搾取され……。
あーあ、やってられん!」
シュヴァルツが、ハルトのベッドに腰掛けた。
「坊主。じゃあ、どうする? 諦めるか?」
すると、ハルトはシュヴァルツの脇腹を拳で突いた。
「行くしかねーだろうが!」
二人はニヤリと笑った。




