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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第二章 ダンジョン編
38/60

38.手がかりはダンジョンの奥深くにある

 翌日、四人はペスカの城の門を叩いた。ハルトとシュヴァルツは肩を並べ、先頭に立って鼻息荒く大股で歩く。


 途中で見た美しい花壇が、全部金満家の道楽に見えてくる。これから入る部屋の調度品も、金貨に見えてくるだろう。


 とにかく、この領地のギルドは、結託して低価格で魔石を買い取っている。ということは、どこかで高く売っているはずだ。


 手っ取り早いのは、隣の領地のギルドに持ち込むことだ。誰かが冒険者になりすまして登録しておけば、そいつが持ち込めばいい。


 確実に儲かる。何せ、普通の魔石からして、金貨1から3枚が2から5枚に跳ね上がるのだから。


 運賃がかかるとしても、その利ざやに比べたらゴミみたいな物だ。


 その差額でギルドは潤うはずだが、昨日のギルドの建物は慎ましいものだった。


 では、部屋の奥で金貨が唸っている?


 いや、誰かに献上しているはずだ。


 そいつは誰だ?


 聞くまでもない。領主のペスカだ。


 城の中にある最上級の品々が、何よりの証拠である。


 そう思うと、ハルトもシュヴァルツも(はらわた)が煮えくりかえりそうになる。



 城に入って老執事に通された場所は、例の豪華な広間だった。大理石の壁と床と天井の見事さを一瞬味わった四人だが、あっという間に冷めて、以前にここで感動したことが馬鹿馬鹿しく思えてきた。


 イライラするほど待たされた挙げ句、老執事から「ペスカ様はご不在でございます」と告げられる。


「だったら、カルドを呼べよ!」


 ハルトが口を尖らせると、老執事はあからさまにハアッとため息をついてから、カルドを連れてきた。


 彼は、甲冑を着けていた。いつでも斬りかかれるようにかと、ハルトは警戒する。


「おや? 一人増えたようだが?」


「知ってて、とぼけるのかよ!」


「腹の虫が治まらない様子だが、何かあったのか?」


 ハルトは、自分たちの考えていることを洗いざらいぶちまけた。


 だが、彼の畳みかける言葉に、カルドは蛙の面に水である。ここに紅茶でも置かれていたら、おいしそうにすすっていたかも知れない。


「で、結局、隣の領地に引っ越すのか? 紹介したギルドに登録したままで」


 カルドの口角がつり上がる。この憎たらしい男に腕を振り上げて抗議して疲れたハルトは、肩で息をしながら「そうだよ」と言い放つ。


「フーン。それは残念」


「何が残念だ! 搾取できなくなるからか!?」


「手がかりが見つかったのに」


 数秒間の沈黙が生まれた。


「何の手がかりがだよ?」


「おや、人にものを頼んでおいて、それはないだろう?

 クリザンテーモ・セレーナ姫とカエデの手がかりに決まっている」


 四人が身を乗り出した。


「手がかりはどこだ!?」


「引っ越すのなら、教えない」


「そんな条件はなかったぞ!」


「この領地から引っ越すのなら、宿もギルドも紹介していない。ここにいるということが大前提だったから」


 ハルトもシュヴァルツも歯ぎしりをする。


「なら、この領地に踏みとどまってもいいが、ガセネタだったら承知しないぞ!」


「なんだその『ガセネタ』とは?」


「あー、めんどくせー! 偽情報ってことだ!」


「それはない。紹介しただろう? あのダンジョンだ」


「それのどこにある!?」


 カルドは、さも恐ろしいという顔をして、人差し指を下に向けた。


「第50階層」


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