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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第二章 ダンジョン編
37/60

37.晴れてギルドに登録したものの

 マスターは、約束の金貨300枚から登録料を差し引いて200枚を袋に入れ、シュヴァルツの前に差し出す。


 特別の魔石は確かに本物であるとマスターが鑑定結果を出したが、一番小さい大きさか否かでシュヴァルツと()めた。


 一度ここで妥協してしまうと、これが中程度の大きさだった場合、全部最安値で買い取られるから、シュヴァルツは食い下がる。だが、マスターも負けてはいない。


「こちらの青い魔石と比べて、だんぜん小さいだろうが!? だから、一番小さい部類だ! 金貨10枚しか出せん!」


「俺たちが知らないからって、嘘を言ったら承知せんぞ!」


「だったら、周りの連中に聞いて見ろ!」


「お前が怖くて本当のことを言えない奴らにか? 聞くだけ無駄だ!

 納得がいかないから、この魔石だけは他のギルドへ売りに行く!」


「ぐぬぬ……。ええい! 中の下ということで、12でどうだ!?」


「16!」


「おいおい、通常の買い取りが10から20の間だというのに、16はないだろう」


「上限20は、ここのギルドの縛りだろう? 他は40かも知れない」


「なら、13!」


「16!」


「14までしか出せん!」


「16! イヤなら、他を当たる!」


「……ちっ! 特別だぞ! 16だ!」


「特別なもんか。この魔石を出したときに目を丸くしたのを、この目で見ているぞ。しかも、周りの奴らは度肝を抜かれていたしな。

 珍しいかどうか、顔に書いてあるから見ればわかる」


「参ったな……。貴様には(かな)わん。

 おい、そっちの坊主。このルクス族の相棒は、商売の才覚があるぞ。良いパートーナーを持ったな」


 不機嫌そうなマスターがそう言いながらハルトの方を見て、最後は苦笑した。



 ギルドの建物を出た四人――オルテンシアとカメリアはすでに変身を解いていた――は、互いに顔を見合わせて大いに笑った。


 彼女たちが変身した剣を持っていないハルトは、いつものペースでお調子者になっていたので、シュヴァルツが前面に立って交渉したのだが、かえってこれが功を奏した。ハルトなら、簡単に丸め込まれていただろう。


 上機嫌のハルトがシュヴァルツの背中をポンポンと叩く。


「さすが、ルクス族!」


「坊主。よく見ておけ。特に表情や目の動きをな。言葉は騙される」


「へいへい」


「奴らは、かなりピンハネしているはず。10って言っておきながら最後は16まで簡単に引き上げたからな。

 俺たちは相場がわからぬ。

 だから、他のギルドの情報も仕入れないといけない。

 カルドに紹介されたからって、そのギルドが世間の標準とは限らないからな。完全に信用してはいけないってことよ」


「俺の親父は、売るときは複数の買い取り業者に当たっていたな。逆に、買うときも複数の業者から()()()()取っていたし」


「なんだその蜜は?」


「食いもんじゃねぇよ。相見積もりの略。……って言ってもわからんか。まあいい。

 ところで、信用してはいけねえってことは、普通の魔石が1個あたり金貨1から3枚というのも怪しいな」


「そうだな。調べてみる価値はある」



 それから、オルテンシアとカメリアは休息のために宿屋に戻り、ハルトとシュヴァルツが他のギルドでの魔石価格を調べに回った。


 すると、普通の魔石は1個あたり金貨1から3枚は変わらなかった。特別な魔石は、少し幅があって、10から20、15から25、10から30だった。


 ハルトは後頭部の後ろで手を組みながら「うーん、ほぼ同じってとこかな」と言って、地面の石を蹴る。だが、シュヴァルツは納得がいかない様子だった。


「ペスカの領地のギルドは、誰かの指示で相場を決めているのかも知れないぞ」


「そうかなぁ?」


「坊主。隣の領地で相場を聞いてくる。暗くなるから帰っていいぞ」


 すると、ハルトはシュヴァルツの背中を小突いた。


「水くさいぜ。付き合うからよ」


「悪いな」



 だが、二人は隣の領地に行かなくても相場を聞くことが出来た。


 通りかかった酒場の前で冒険者の二人が喧嘩をしていて、シュヴァルツが仲裁したところ、二人とも隣の領地からやって来たことがわかった。


 彼らの話によると、隣の領地では普通の魔石が1個当たり金貨2から5枚、特別の魔石は幅があって10から40枚か、20から50枚なのだそうだ。


「坊主」


「フッ。言いたいことはわかるぜ」


「なら話が早い。明日――」


「ペスカの城に乗り込むぜ」


 二人は顔を見合わせてニヤリと笑った。


「ギルド登録料100枚は――」


「勉強代だと思って諦めだな。畜生め!」


 ハルトは、地面を思いっきり蹴った。


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