表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第二章 ダンジョン編
35/60

35.合い言葉

 小走りに道を急ぐハルトは、冒険者に追いついた。


「わりぃ。道に迷った。出口を教えてくれ」


 これは嘘である。ここは第1階層であることくらいしかわからないための苦肉の策だ。


「第2階層まで行けたんだろ? だったら、迷うことはないだろ?」


 髭面の男が不思議そうな顔をする。


「いや、この道は通っていない」


「そんな馬鹿な。出入り口から来れば、必ずここを通るぞ」


 ハルトは、偽のシュヴァルツに誘導された道のことを話そうとしたが、やめた。その道は、冒険者たちが知らない秘密の道で、普段は通れないようになっている可能性があるからだ。


 彼は、周囲も天井も見渡して、さも思い出したように言う。


「……ああ、通ったかも知れないな。出入り口はこっちだっけ?」


「反対だよ。しっかりしてくれよ。水の中に入って記憶が飛んだか?」


「そうかも知れない」


 頭をかくハルトは、大笑いする冒険者を見送った後、彼らと反対方向へ向かった。


「坊主。帰るのか?」


「いいや。休憩だ」


「休憩?」


「剣が汗をかいている」


 オルテンシアの剣の切っ先から柄まで目で追ったシュヴァルツは、首を傾げる。だが、ハルトがずんずんと出入り口へ向かうので、慌てて後を追った。



 しばらく歩くと、本当に出入り口があった。


 ハルトは懐かしい空間を見渡し、天井まで見上げて両手を広げ、大きく息を吸った。


 そして、「くっせ!」と鼻をつまんで、大いにむせた。


 周囲にシュヴァルツ以外いないことを確認した後、カメリアの剣に「もういいぜ」と声をかけ、ソッと地面に剣を置いた。


 すると、カメリアの剣は目映い光を発してカメリアの姿に戻った。シュヴァルツもハルトを見習って剣を置くと、同様に光の中からオルテンシアが現れた。


 彼女たちは、両足を伸ばして仰向けに横たわった状態から、腰の横に両手をついて上半身を起こした。


「お前らには、ホント、助かった。恩に着る」


 ハルトがしゃがんで膝をつき、頭を下げた。


「当然のことをしたまでですわ」


「そうしないと、こっちまで危なかったから」


 オルテンシアもカメリアも、そう言って微笑む。


「休憩してから、ダンジョンに潜るけどいいよな?」


「よろしいですわ」


「お腹空いた」


 カメリアが指をくわえて、チラッとハルトを見る。


「そうだな。俺も腹が減った。

 おい、シュヴァルツ。町までひとっ走りして、なんか買ってこい」


「お、俺がか!?」


「体に染みついた池の水の臭いが気持ち悪いから、魚は無しな」


「なんで俺が?」


「敵につかまった罰だ」


「あれは、不可抗力――」


「いいから、弁当買ってこい!」


 ハルトに睨まれた彼はもう少し抵抗しようと思ったが、肩をすくめて外へ出ていった。



 しばらくして、シュヴァルツが袋を抱えて戻ってきた。


「はい。変身して」


「変身? ……ああ、そういうことか」


 地面に袋を置いたシュヴァルツは、黒猫に変身する。


「はい。認証完了」


「いちいち面倒くさいな」


 そう言いながらシュヴァルツは、元の巨体に戻った。


「そうでもしないと、また偽者をつかまされるからな」


 シュヴァルツが袋から丸パンとチーズの塊を取り出し、三人に配りながら提案する。


「今度は合い言葉を決めよう。その方がいい」


 さっそくパンをパクついたハルトが「わいことわ?」と言って何やら考え始めた。


「じゃあ、『ひとよひとよに』と言ったら『おごれや』と答える。で、どうだ?」


「それはどういう意味だ」


「毎晩酒をおごれって言う意味だ。数学の教師がルート2とかを『ひとよひとよにおごれや』で覚えろと言っていた」


 大いなる勘違いをしているハルトだが、異世界の住人は誰も訂正できなかった。


「じゃあ、決まりだな」


 しかし、ここでカメリアが異論を挟んだ。


「意味がわからないから覚えにくい。却下」


「せっかくいいアイデアだったのにぃ……。

 じゃあ、カメリアは何か案でもあるのか?」


「『クリザンテーモ』と言ったら『カエデ』って答えるのはどう?」


 少しの間があってから、ハルトは手を打った。


「それで決まりだ。互いに探している人物だから覚えやすいしな。

 ナイスアイデアだ、カメリア」


 ハルトに褒められて、カメリアは頬を染めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=995234452&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ