30.ハルトの大胆な推理
ハルトは二本の剣に向かって「これから俺のやることに驚かず、従え」と声を掛けると、剣は『『承知!』』と答えた。
「さてと。この仕掛けを作ったのは一番深い階層にいるラスボスとは推理したものの、もっと身近に起きていることを先に推理しよう。それは――」
と言いながら、ハルトはオルテンシアの剣をシュヴァルツの喉元に突きつけた。
「なぜお前がここに俺を導いたかってこと。
オルテンシア、こいつが動いたら、容赦なく喉元を抉れ」
『承知……』
次に、ハルトはカメリアの剣をシュヴァルツの左胸に突きつける。
「カメリア、こいつが動いたら、すかさず心臓を抉れ」
『承知……』
シュヴァルツは「坊主、気でも狂ったか!?」と叫んで後ろへ動こうとするが、剣がグイッと近づいたので動くのをやめた。
「てめーは腰を完全に下ろしたが、俺は蹲踞の姿勢。野球のキャッチャーの姿勢になったことに気づいてないだろ? こっちの方がすぐに動ける。
無駄だ。俺の推理に付き合ってもらうぜ」
シュヴァルツは、喉を鳴らしてハルトを睨み付ける。
「おい、いつ本物と入れ替わった?」
「入れ替わる? 何を言う」
「おそらく、ダンジョンに最初に潜って、右へ右へと俺を導いたときの前であることは間違えねえ」
「なぜそう思う?」
「おお!? 偽者を認める発言、ありやとさんしたー」
「――っ!」
「脂汗出ているぞ。
最初、このダンジョンがすべてこしらえ物かもと思ったが、それにしてはスケールが大きすぎる。こしらえたのは、あの立方体みたいなエントランス、穴が3箇所あったところから先だけがこしらえ物だ。
てめーは、俺をここに連れてくる必要があった」
「…………」
「それはなぜか。……てめーの口から言えよ」
「…………」
「黙秘かよ!
魔石を30個取って来させないためだよ。ここに閉じ込めればいいから、簡単さ。
この壁の向こうでガタガタやっていたのが、てめーの仲間だ。
そして、てめーは俺が先を歩く途中でここから脱出する。俺の後ろを歩いて、前を行く俺の視界に入らないようにしていれば、それは可能だ」
ハルトは剣をさらに近づける。シュヴァルツは仰け反る。
「ここから脱出する抜け穴まで案内しろ」
「…………」
「ま……探せばいい話だから、てめーを殺してもいいんだぜ」
「しょ、証拠はあるのか!? 偽者だという証拠は!?」
「あちゃー。今更何言ってんだぁ? だったら、黒猫に変身してみろよ。ルクス族なら出来るだろ?」
「うぬぬ……」
「シュヴァルツに完璧に変身しても、ちっこい黒猫には変身できねーらしいな」
「ちっ! なぜ、ここがダンジョンではないと気づいた?」
「あまりに人工的だからよ。しかも、こっちに導いたのは、てめーだ」
「でも、魔獣は倒したぞ」
「演技だ。疑われないためにな。だから、仕掛けの一つ二つ、壊してもかまわねー。
なにせ、獲物をここの袋小路に入れてしまえば、そっちの勝ちだからな」
「畜生!!」
偽のシュヴァルツは立ち上がった。だが、二本の剣にアシストされたハルトも立ち上がり、彼の喉元と左胸を抉った。すると、彼はたちまちのうちに大量の光の粒となって消えた。
「なんだよ、魔石はドロップしないのかよ。つまんねー」
剣を両肩に担いだハルトは、地面を思いっきり蹴る。
『これからどういたしますの?』
『ラスボスを倒しに行く?』
ハルトは天井を見上げる。
「抜け道を探すのが先だろ、ボケ」
と、その時、奥の方から男の声が聞こえてきた。
「それはさせぬ」
ハルトは声のする方を睨み、「おっと、ラスボスがわざわざお出迎えだぜ」と言って二本の剣を構えた。




