表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第二章 ダンジョン編
29/60

29.一方通行のダンジョン

 左の穴も短めの暗いトンネルを抜けると、薄青色の壁面と天井が視界いっぱいに広がった。


 ところが、様子が少し違う。通路が直方体のような形状をしているのだ。


 ハルトは平らな天井や床や壁面に目を配りながら、舌打ちをする。


「ダンジョンにしては、やけに人工的だな。そう思わないか?」


 しかし、腑に落ちないシュヴァルツは、疑問を呈する。


「人工的なダンジョンなどあるわけがない。それは、坊主の気のせいだ」


「いや、ぜってーこれは作りもんだ。おかしい。全てがおかしい。

 普通、天然の洞窟みたいな場所に魔物がウヨウヨしてるはず。しかし、ここはお化け屋敷の迷路みたいなもんで、そこに魔物が仕込まれている感じがする」


「なぜそう思う?」


 シュヴァルツが立ち止まったみたいなので、ハルトも立ち止まって振り返った。


「こんな格好した洞窟って、あんのかよ? どっかの通路みたいな」


「……偶然にこうなっているのかも知れぬ」


「おめでたい奴だな……。

 なら、壁や地面や宝箱が魔獣ってありえんだろ?

 コボルトとかミノタウロスとかだったらわかるが」


「…………」


「あれは、人を油断させるためのこしらえ物だ」


「油断させてどうする?」


 ハルトは剣で自分の首を斬る真似をして「殺すんだよ」と言う。


「そんなことをする奴がいるか」


「いる。俺たちを近づけさせないために、仕掛けをふんだんに取り入れた迷路をこしらえた」


「誰だ、そいつは?」


「俺も知りてーよ。一番深い階層にいるラスボスだと思うが」


 ハルトは前進を再開した。シュヴァルツはハルトを追いかけて、彼の背中へ問いかける。


「と言うことは、ここはダンジョンではないと?」


「ああ。ダンジョンの格好をした――」


 ハルトは顔だけ振り向いた。


「冒険者の墓場よ」


「でも、坊主。ここを指定したのはペスカとカルドだぞ。ギルドのマスターも何も言っていない」


「何? 連中がここをダンジョンと言うからダンジョンなのか?」


「むう……」


 ハルトは立ち止まり、二本の剣に向かって問いかけた。


「なあ、オルテンシア、カメリア。お前ら、このダンジョンに違和感はないのか?」


『確かに、こんなに整備された通路みたいな洞窟は初めてですし、出てくる魔獣も初めての形態のが見られますわ』


『ハルトが指摘した魔獣は見たことがない』


「だろ? なんか俺たち、ペスカに()められた気がするぜ!」


 ハルトの力を込めた言葉が、通路のような洞窟内に反響する。


 少しの沈黙の後、シュヴァルツがおもむろに口を開いた。


「じゃあ、戻るか?」


「このままペスカの屋敷に乗り込むってか? それもおもしれえ」


 ハルトは大股で引き返したが、急に立ち止まった。


「坊主、どうした!?」


 ハルトに追いついたシュヴァルツは、彼の前に立ち塞がる壁を見た。


「やられたぜ……。塞がれちまったんなら、もう引き返せねえ」


「なんてことを……」


「だから言ったろ? ここはダンジョンの格好をした――」


「「冒険者の墓場」」


 ハルトとシュヴァルツは、ハモった。


「坊主、どうする!?」


 すると、ハルトはシュヴァルツを手招きして耳元で囁いた。


「まず、ペスカの目的を考えようぜ。そこにヒントが見つかるかもな」


 ハルトは、ヨイショと腰を下ろした。そして、小声で続けた。


「壁の向こうで聞いているかも知れねえ。まずは、座れ」


 シュヴァルツが腰を降ろすと、ハルトは剣を置いて両手で口の前にメガホンを作り、大声で叫んだ。


「仕方ねぇ! 先へ進むか!」


 彼の声が洞窟内にワンワンと響くと、壁の向こうで何やらゴトゴト音がした。


 二人は顔を見合わせて、ニッと笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=995234452&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ