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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第二章 ダンジョン編
24/60

24.お手軽に思えた初仕事

 穴の中は、高さが3メートルほどの洞窟だった。


 人の背丈と比べると倍近い高さなのだが、門をくぐり抜けて最初に入った空間よりも遙かに低いので、急に狭いところに入った感じがする。


 さらに、空間を明るくしている白熱球のような魔石の数が減っているので、薄暗く感じる。でも、目が慣れれば歩くのには支障ない。


 人工的に作った洞窟ならば、もっと直線的だろう。足場も歩きやすいように踏み固められているはずだし、落盤防止に柱で補強しているはず。


 だが、粘り気のない溶岩が流れていった跡みたいな蛇行した洞窟で、人工的な箇所は皆無である。足場は悪く、(つまづ)いたりして捻挫しそうになる。


 溶岩が流れやすい場所を求めて流れたのか、右に左に曲がり、上に下に起伏を作っている。


 ハルトは初めてのダンジョンに最初は警戒していたが、何も襲ってくる気配はなく、だんだん大胆になってシュヴァルツを追い越していった。


「なあ、これ、どっちだと思う?」


 ハルトは二本の剣を両肩に乗せて立ち止まり、首だけ振り返ってシュヴァルツに問う。一行は、初めての分岐点に到着したのだが、もちろん、道しるべなどない。


「坊主。右だ」


「ホントか?」


「勘だ」


「何だよ、おい! 自信たっぷりに言うから、信じたじゃないか! まさか、動物的勘だからってか?」


「ルクス族は動物ではない」


「どうみても黒猫だろうが……。まあいい。信じよう」


 鼻歌交じりに歩くハルトは、足取りも軽く右の道を進むも、すぐに分岐点に到達した。今度は三方向に道がある。


「なあ、これも右か?」


「ああ」


「ちょっと、待て」


「なんだ?」


「もしかして、もしかするとだが、その方が覚えやすいからか?」


「そうだ」


「一周したって知らねえぞ……」


 右の道を進むと、十字路に出た。


「これもか?」


「当然」


「なるほど。もし行き止まりなら、分岐点に戻って逆へ行けばいいからな」


「待て、行くな!」


「何だよ、今度は!?」


「前をよく見ろ」


 ハルトが目をこらして奥の方を見る。何やら、魔石とは違う光り方をして、ユラリと動いている四つの光があった。


 グルルルルッ……。


 犬よりも大きな何者かが喉を鳴らしている感じがする。


 よく見ると、四つ足の獣が二匹いる。四つの光は目だ。体は洞窟の壁の色と同じく赤銅色をしている。


 ハルトはゴクリと唾を飲み、肩に乗せていた剣を構えずにだらんと下げた。少し震えが来る。膝が笑う。


『狼もどきのようですわ』


 剣に変身したオルテンシアの言葉だ。


『低級の魔獣。何も問題ない』


 こちらは、カメリアだ。


 ハルトは、二本の剣を下からゆっくり扇を描くように振り上げる。


(――おっと、体が勝手に動く! 剣を構える! 久しぶりぃ! アシスト発動!)


 彼は、オルテンシアの剣を上段に、カメリアの剣を中段に構えた。


(剣の柄を通じて、ゾクゾクッとする物が勢いよく流れ込んでくる! うおおおおおっ、力が漲る!)


 彼は勇気凛凛として剣を大きく振りかぶり、魔獣に向かって大股で突進する。それまで剣を肩に乗せてお気楽に歩いていた少年が、打って変わって大胆な行動に出たので、さすがのシュヴァルツも舌を巻いた。


 一方、二匹の魔獣は地面を蹴り、前足を思いっきり伸ばして宙を飛んだ。


「せやっ!」


 ハルトの振り下ろした二本の剣が、二匹の魔獣の額を同時に割る。前足が彼の両方の頬をかすめるも、ダメージを与えるには至らなかった。


 地面に落下した魔獣は、たちまちのうちに光の粒となって消えた。すると、横たわっていた体の真ん中付近の位置に、青白く光る石が転がっているのが見えた。もちろん、二個ある。


 これは、最初に出くわした冒険者が麻袋から取りだしていたのと同じ色をしている。間違いない。魔獣の体内から出てきた魔石だ。


「やったぜ!」


 ハルトは、二本の剣を左手に持って、右手で魔石を拾おうとした。その時――、


「危ない!!」


 シュヴァルツが大声を上げて、剣を振りかぶった。


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