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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第二章 ダンジョン編
23/60

23.いざ出陣

 冒険者たちを飲み込む巨大な門の先は、岩のてっぺんまで届くほど高くて直方体のような空間だった。


 横幅は、門の幅の5倍は優に超えるだろう。奥行きも横幅と同じくらい。奥の中央に、入り口の門と同じ形で同じ大きさの穴が開いている。


 荒削りの壁面と天井は赤銅色がベースだが、ここに白熱球のような光を放つ無数の石が混じっていて、その光がゴツゴツした起伏を不気味な模様に見せている。おかげで、空間の中は星明かりの下のように明るく、ボンヤリとだが隅々まで見えている。


 地面にも光る石があるので、ハルトはしゃがみ込んで触ってみた。


「なあ。シュヴァルツ。まるで星空を見ているみたいだけど、これって何だ?」


「ああ、その光る奴か? 初めて来た坊主が知らないのも無理はないか。それは魔石の一種だ」


「何!? 魔石!? なら、ここにある物を30個――」


「早とちりするな、坊主。マスターが持って来いと言ったのは、魔獣の体内にある魔石だ」


「なんだ、紛らわしい……。

 なあ、シュヴァルツは、ここに来たことがあるのか?」


「ここは初めてだが、これに似たようなダンジョンなら、他の国で入ったことがある。

 ……おっ。魔石を取ってきた冒険者のご帰還だ」


 シュヴァルツが奥の穴を指さすので、ハルトは立ち上がって穴の方を見た。すると、五人の冒険者がちょうど穴から出てきたところで、麻袋の中から青白く光る物を出したり入れたりしている。戦利品――もちろん魔石――の品定めだろう。思わぬ収穫なのか、全員の顔がほころぶ。


 彼らは、シュヴァルツたちを見つけると「よおっ」と声をかける。シュヴァルツは「よおっ」、オルテンシアとカメリアは「こんにちは」と声をかける。


 ハルトは、山で行き交うときの挨拶だろうと思って「こんにちは」と声をかけると、冒険者全員が大笑いして「男みたいな女がいるぞ」と言う。オルテンシアがハルトの方を見て眉根を寄せるので、そういうことかと理解したハルトは、ここでは女になることにした。


「収穫はどうだい?」


 シュヴァルツの問いかけに、冒険者は足を止めることなく横を通り過ぎていく。


「今日は少ないぞ。俺たちが、あらかた取ったからな」


 彼らは一斉に笑う。


「どこまで潜った?」


「第三階層」


 袋一杯に魔石を抱えた冒険者たちは、振り返らずに手を振りながら門の外へ出た。


 目映い光の中へ消えていく彼らを見ながら、ハルトは不安げにつぶやく。


「第三階層まで行って、もうないって?

 おいおい、30個もどうするんだよ!?」


「本当のことを言う冒険者なんか、いるもんか」


「えっ?」


「坊主もお人好しだな。ダンジョンの中では、嘘八百、はったり、なんでもありだ。競争相手を罠にかけることさえある。

 向こうには魔獣はいない、って聞いて信じて行った冒険者が、魔獣に囲まれて食い殺されたなんてこともな」


「マジかよ……」


「あの五人のうち、明らかに三人は怪我をしている。倒せなかった魔獣は、わんさかいると見た」


「そんな魔獣は、俺には無理だぁ……。

 ここで留守番するから、シュヴァルツ、よろしく」


「何を言う。坊主も来い」


「ははーん。俺がいないと、シュヴァルツ一人では寂しいと。

 俺ってそんなにTUEEE!? 照れるなぁ」


「二本の剣を扱えるのは、ここでは坊主だけだ」


 と、その時、オルテンシアとカメリアがハルトの方に体の正面を向けて、数歩後ろに下がった。


「さあ。私たち、変身しますから、剣を取ってくださらない?」


「……そゆこと」


 オルテンシアの言葉に、ハルトは、最初に彼女の変身シーンを見たときのことを思い出した。今度は、カメリアの変身シーンも見られる。そう思っただけで、彼の心臓が高鳴った。


 二人は、同時に右手を挙げた。


「「精霊(エレメンター)魔剣(シュヴェルト)!」」


 詠唱の後、彼女たちの全身が光のトルネードに包まれ、衣服が消えた。光が部分的に隠していて、見えそうで絶妙に見えないのは、前と一緒である。


 そして、虹色のシャワーを浴びながらクルクルと舞い、恍惚の表情を見せながら全身武装。そこから、さらに日本刀のような剣に変身した。


 オルテンシアとカメリアの変身過程は一緒だが、ポージングが少し違う。どちらがいいかというと、カメリアの方がその豊穣な双丘が揺れる分、軍配が上がる、とハルトは思った。


 目の前で華麗な変身シーンを見て思わず拍手をしそうになる彼だったが、首を傾げて腕を組み、覗き込むように下を見た。


「あのー。やっぱりさぁ……。

 変身した後、地面にゴロって転がるのは、ちょっと不細工じゃね?」


『仕方ありませんわ!』


「なんかこう、宙に浮いて、キラーンって輝くのがいいんだけど」


『では、今度、練習しておきますわ』


「よろしくぅ」


 ハルトは、右手にオルテンシアの剣、左手にカメリアの剣をしっかりと握る。


『ひゃあっ!』


『ああん!』


「こらっ! 変な声、出すな!」


 ハルトの忠告が、空間の中でこだまする。


「じゃあ、坊主、行くぜ」


「おおよ。初陣で魔石をざっくざっくと掘ってやる」


「おいおい、鉱石じゃないぞ。魔獣から取るのだからな」


「訂正。魔石をバッタバッタと斬ってやる」


「だめだこりゃ……」


「わりぃ。魔獣だった……」


『しっかりしてくださらない?』


『結局、シュヴァルツ頼り』


「大丈夫! ちょっと武者震いして間違っただけだ!

 俺に任せなって!

 そうだ、俺のアシスト、よろしくな!」


『『承知(ヤヴォール)!!』』


 ハルトは、二、三度剣を振った後、大股で穴へと向かった。シュヴァルツも、腰に下げた鞘から剣を抜き、彼に従った。


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