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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第二章 ダンジョン編
22/60

22.初ダンジョン

 二人は、マスターや獣人全員の視線を浴びながら建物を出た。


 ハルトは、チクチク刺さるような視線から解放されて安堵のため息をつく。そして、もう自分より数メートルも先を歩いているシュヴァルツを追いかけ、背中に向かって声をかけた。


「なあ、マスターが10個って言っているのに、30個ってハードル上げて大丈夫なのか?」


「ハードルって何だ?」


 急にシュヴァルツが立ち止まったので、ハルトは彼の背中に衝突し、しこたま鼻を打った。


「いや、その……敷居を上げたというか、難しくしたというか」


 鼻をさするハルトの肩をポンポンと叩きならが、シュヴァルツが笑う。


「俺たちの力を見くびっては困るな」


 俺たちと言う以上、オルテンシアとカメリアも含まれているはずだ。ハルトは、彼女たちが剣の形に変身したことを思い出す。


 すると、オルテンシアの変身シーンが脳裏に鮮やかに蘇り、ドキドキしてきた。


「そうだな」


「任せろ。30個を超えて、あのマスターの度肝を抜いてやる。ガハハハハハッ!」


 シュヴァルツが力一杯肩を叩くので、ハルトは危うく倒れそうになった。



 まだ痛い肩をさすりながら、ハルトはシュヴァルツの後ろをぴったりくっつくように宿のドアをくぐる。


 ちょうどカンナが箒で掃除をしているところに遭遇したが、もうハルトは目をハートマークにして彼女のところへ突進はしない。


 そんな彼が階段を上がろうとすると、チラッと彼を見たカンナがニヤリと笑って声をかけた。


「カーテン買ってきたんだ」


 無視して通り過ぎようとしていたハルトは、彼女の言葉に慌てて立ち止まる。振り向いたハルトの目に映る彼女の笑顔は、何か意味ありげだ。


「そうだよ」


「なんで?」


「だって、男と女が同じ部屋で――」


「仕切るんだぁ……。ふーん」


「カンナだって、男がいたら仕切るだろ?」


「お楽しみなことをするから?」


「いやいやいや。着替えるときなんか、気まずいし」


「じゃあ、遊びに行っていい?」


「彼もいるけど」


 そう言ってハルトは、もうかなりの段を上っていったシュヴァルツに親指を向ける。すると、カンナは不機嫌になった。


「あの黒猫は嫌い」


「ルクス族だよ、彼は」


「なお嫌い」


 カンナは箒を肩に乗せて、宿屋を出て行った。彼女を見送ったハルトは彼女の嫌いな理由を考えてみたが、「坊主、早く来い!」と踊り場から呼ぶシュヴァルツの声に驚き、大慌てで階段を駆け上る。



 男側のベッドを囲うようにカーテンを設置したハルトは、学校の保健室のベッドを思い出した。すると、急にホームシックにかかった。


 保健室の先生、級友の顔を思い出し、学校の光景、帰り道の光景、そして自宅が次々と瞼に浮かんでくる。最後は、家の中にいるカエデと、夜道で消えたカエデ。


(そうだ。早く、カエデを探し出さないと……)


「何ボーッと俺の顔を見ている? 何かついているか?」


 ハルトは急に我に返った。


「い、いや。別に……」


「ダンジョンに自信がないのか?」


「とんでもない。大ありだ」


「初めてなのにか?」


 ハルトは親指を立てる。


「みんながいれば、安心して戦える」


「足手まといになるなよ」


「わかってるって!」


「じゃあ、明日から狩りに出かけるか!」


「おお!」


 ハルトとシュヴァルツは、拳を合わせた。



 翌朝、四人は宿屋を後にし、ダンジョンへと向かった。カンナがハルトに手を振ってエールを送っていたが、彼はちょっと振り向いて作り笑いを見せただけだった。


 抜けるような青空。まだ朝なので風は涼しいが、太陽が高くなると暑くなりそうだ。


 目的地までは、町を出て徒歩で1時間ほど。


 そこは、草原の中に突如と現れたエアーズロックみたいな赤銅色の岩の塊だった。高さは七階建てのビルくらい。幅は、その5倍はある。


 その岩の中央に四角い横穴がある。高さは二階建ての建物がすっぽり入るだろう。


 その周りに豪華な彫刻が施された極彩色の門があった。魔界への入り口というよりは、神聖な場所への入り口という感じがする。


「趣味の悪い門だな」


 シュヴァルツが門を見上げて眉をひそめる。


「不気味さを感じる」


 ハルトも見上げて、立ち止まる。


「さあ、行きましょう」


 オルテンシアとカメリアが、二人を追い越してさっさと歩いて行った。


「そうだな」


 シュヴァルツが歩みを再開した。


 急に胸騒ぎがしたハルトは、彼らを止めようと腕を伸ばす。しかし、その腕をだらんと下げて、三人の後を追う。


 その時、はるか後方でハルトたちの様子を窺っていた四人が、足早に門へと近づいていった。


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