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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第一章 異世界転移編
16/60

16.幸運をもたらす魔石

 カルドは、遠く離れた別室で、ハルトたちに依頼内容等を伝えた。


 ダンジョンの場所、所属するギルドの場所、拠点とする宿屋の場所、毎日利用できるコンビニや居酒屋の場所、それに報酬まで次々と教えられたハルトは、とても覚えきれず頭がいっぱいで、聞いたことは右から左に抜けていく。


 この点は、オルテンシアの方が記憶力が良く、彼はすっかり彼女に任せっきりとなった。


 それがますます、カメリアの気に障る。それで、ハルトを横目で見ては、目が合うとフンとそっぽを向く。これを何度も繰り返す。


「――とまあ、こんな感じだ」


「じゃあ、オルテンシア、あとカメリア。任せた」


「いいですわ」


「取って付けたように……」


「なあ、カメリア。機嫌を直してくれよ」


「知らない」


「つれないなぁ……。

 そうだ、カルド。このダンジョンに潜る仕事って、どうなると終わりなんだ?」


「魔物を狩って得られる魔石の中に、紅色に輝く物が出てくることがある。このどれかが、幸運をもたらす魔石と言うことで珍重される。

 これは、魔石の鑑定士しかわからないから、見つかったら鑑定士のところへ持っていって欲しい。幸運をもたらす魔石だと判定されたら終わりだ」


「鑑定士の名前は?」


「エルバ・モスカ」


 この名前は、もちろん、さきほどペスカと密談していた紫髪の男、秘宝を探すノアール・ミストの手下の名前である。


 ノアールが所望する秘宝が、紅色に輝く魔石の中のさらに特別な物であることを、ハルトたちは知らない。


「鑑定士は、どこにいるんだ?」


「ギルドに行けば教えてくれる」


「わかった」


「説明は、以上だ」


 ここまでカルドが教えたギルト、宿屋、コンビニ、居酒屋は、全てペスカの息がかかっており、ハルトたちが落としたお金は、ここを通じてペスカの所へ流れる。


 魔石は、ギルドが安値で買い取り、他で高く売られる。その収入は、マージンを引かれてペスカの懐に入る。


 買い取られて得たお金はハルトたちの報酬となるが、結局、宿屋とコンビニと居酒屋からペスカに流れる。ハルトは、いい金づるにされたわけである。



「もし途中で、姫様とか妹が見つかったら? もうダンジョンは終わっていいのか?」


「捜索に尽力したのは、ペスカ様だ。その恩義に報いねばならぬだろう?」


「ん? どういうことだ?」


「幸運をもたらす魔石を見つけて欲しい。見つければ終わりだ」


「じゃあ、先にそれが見つかったら?」


「我々が捜索の手を引いたら困るであろう? 見つかるまで捜そう」


「おおっ! つまり、両方とも成功――Win-Winで終わりか!」


 カルドは笑うが、ハルトの笑顔とは別の意味合いを持っていた。実は、カルドも、エルバとペスカとの密約を知っていたのである。



 城から出たハルトたちが、待たせていた馬車に乗り込むと、黒猫シュヴァルツは大あくびをしていた。


 ハルトの隣に座ったカメリアは、まだ機嫌が悪い。


「機嫌直してくれよ」


「知らない」


「なんだか、ツンデレちゅうか、デレツンだな」


「何それ?」


「いや、ツンツンかも知れん」


(つつ)いていないわ」


 ここに、シュヴァルツが割り込んだ。


「お二人さん。仲のいいところ悪いが――」


「「よくない!」」


「何もハモって怒らなくてもいいのだが」


「で、何だ?」


「おう。結局、さっきも聞いたとおり、人捜しの代わりにダンジョンに潜れって結論か?」


「そうなった」


「直感で物を言って悪いが、なんとなく利用されている気がする。人捜しで困っているところに釣り糸を垂らされたような感じだな」


「じゃあ、当てにする奴でもいるのか」


「いない」


「なら、今は利用されるしかないだろう?」


「それが気に食わん」


 シュヴァルツは、カメリアと同じく窓の外を見る。


 天気は下り坂で、一雨来そうなほど薄暗くなってきた。それがシュヴァルツの気持ちをより一層不安にさせた。


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