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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第一章 異世界転移編
13/60

13.領主ペスカの恐ろしい提案

 領主様の登場で、席を移動中の三人は慌てふためく。


「何を慌てているのかな? 好きなところへ座っていいよ」


 ペスカはそう言いながら、自分の席に腰を下ろす。


 ハルトは、危ないところだったと胸をなで下ろしながら、ここは無難にテーブルの中間付近に着席する。双子は、彼の両脇にスッと腰を下ろした。


「さて、捜索の実務は、そこにいるカルドに任せたよ」


 ペスカがカルドに目配せすると、カルドは席を立って深々と頭を下げ、再び腰を下ろした。


 ハルトは、『やっぱり、何もしない探偵だぁ』と心の中で納得する。


「その捜している人たちの特徴とかを、彼に教えてあげてくれないかな?」


「「はい」」


 オルテンシアとハルトが、同時に答えた。



 まず、オルテンシアがクリザンテーモ・セレーナ姫の特徴を説明する。


 (くるぶし)まで届く金色のロングヘア。前髪は、ぱっつんでお姫様カット。ウェーブは一切ない。


 小顔で丸顔。眉はやや太くて、目尻が少し下がっており、目の色はコバルトブルー。鼻は高くて、唇は桜色。


 身長は150センチメートル。濃い青色のイブニングドレスを着て、赤いヒールを履いていた。



 次に、ハルトが妹カエデの特徴を説明する。


 黒髪を茶髪に染めた腰まで届くロングヘア。前髪は切りそろえている。こちらもウェーブはなくてストレート。


 顔はクリザンテーモ・セレーナ姫と所々似ている特徴はあるが、黒髪に黒目が違う。鼻は日本人にしては高め。


 身長は152センチメートル。白色のVネックの長袖カットソーに水色のカーディガンを腰に巻いて、少しダメージのあるジーパンを穿()いている。靴はスニーカーだ。



 以上の説明を、カルドはフムフムと聞いている。なので、特徴をしっかり記憶しているのだろうと誰もが思っていた。


 だが、聞き終わった彼は、突然、パンパンと手を叩いた。


 すると、部屋に二人の男が入ってきた。彼らは絵の具で汚れたつなぎのような服を着ていて、手にスケッチブックと鉛筆を持っている。専属の絵師なのだろう。


 カルドが「見せてみよ」と言うと、二人の絵師は一斉にスケッチブックをクルッと裏返して、オルテンシアたちに見せた。


 左の絵師はクリザンテーモ・セレーナ姫、右の絵師はカエデの鉛筆画を描いていた。一種の、全身が描かれた人相書きである。



「どうかな?」


 カルドの問いかけに、オルテンシアは「だいたい合っていますわ」と答え、ハルトは「服が全然違う」と答えた。


 すると、右の絵師が「服の言葉がわかりませんでしたので、想像で描きました」と当然のように答える。


 結局、ハルトは絵師に服や靴の説明をすることで、かなり近い絵ができあがった。



 その後、カルドの提案でこの絵の複製を587カ国全てに配布して、情報提供を募ることになった。しかも、これにかかる費用はペスカが負担すると言うのだ。


 オルテンシアたちは感謝の言葉を述べるも、ペスカは「礼には及ばない」と顔の前で手を振る。


 彼らが恐縮していると、召使いがお茶を持ってきてくれた。豪華なティーセットで、口をつけるのももったいない、と思ってしまうほどだった。



「ところで――」


 お茶を一口飲んだペスカが、そう言ってカップをそっと置き、三人の方へ目を向けた。


「仕事を引き受ける気はないかな?」


 まだカップも触っていない三人は、足の上に握りこぶしを置いたまま、様々な表情を浮かべた。



 ――今回の調査に何らかの見返りを求めているのだろうか?


 ――裏の仕事に引き込もうとしているのだろうか?



 そんな三人の緊張ぶりを、ペスカはカラカラと笑った。


「見返りじゃないよ」


 図星だ。


「はてまた、怪しい仕事に巻き込もうとしているのでもないよ」


 これまた図星だ。


「そうではなくて、収入がないと、捜している間に無一文になるだろう?

 宿屋だって、慈善事業じゃないから、ただじゃない。カルドから聞いたけれど、あの一つの部屋に男女が寝ているんだって?」


 それはもちろん、カルドの壮大な勘違いなのだが、言い訳をしてしまうと、だんだんハルトが異世界からやってきた話を持ち出すことになり、正体がバレてしまう。そちらの方が面倒だ。


 三人が決めかねていると見たペスカは、ニコニコしながら提案する。


「心配しなくていいよ。新しい宿屋を紹介するから。

 そして、宿代や生活費を稼ぐため、仕事を引き受けて欲しい」


 ほぼ、話が決定モードになってきた。


 オルテンシアが顔を上げて、感謝の意を述べる。


「お申し出、感謝いたします。

 それで、そのお仕事とは何でしょうか?」


「おおっ! じゃあ、引き受けてくれるね!?」


「わたくしたちに出来ることでしたら」


「なあに、ちょっとダンジョンに潜って欲しいのだよ」


 オルテンシアは、驚きのあまり目を見開いた。


 ハルトとカメリアは、ゆっくりと顔を上げ、彼女に負けないくらい目を丸くした。


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