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それぞれの戦場

 直江兼続にとって兵の数とは、全てだった。それは、裏を返せば自分に味方してくれている数を意味している。数で押せば戦に勝てると信じていた。直江軍は、将を誰も討ち死にさせておらず、直江軍に入れば、戦で死ぬことはないとまで謳われていた。ゆえに全軍で陣形を取り、一糸乱れぬ動きで敵軍を圧倒していくという戦いをしていた。ついた異名は「越後の蛇」。


「兼続様あまり深入りすると危険です」


 謙信が止めるが、兼続はどんどん砦を落としていった。


「守りが手薄すぎて相手にならないな」


 砦を半分ぐらい落としたところで日が暮れ始めた。


 兼続は、明日勝負をつける気で、兵を休ませることにして、最後に落とした砦に入った。前田の軍は、砦を何個かにわけそこにこもり戦うをいう戦術をとっていると思っていた。


夜も深くなったこと声がした。


「うぉおおおおおおおおおお」


 なんだなんだと言わんばかりに直江軍は飛び起きる。見てみると、数えきれない火の玉がこちらめがけて両サイドの山からやってきれているのだった。


「何だあの大軍勢は前田にはあんな軍勢がいるとは、聞いていなかったぞ」


 直江軍は大混乱に陥った。


 「放てー」


 松之助の掛け声とともに火の玉で照らされた砦に無数の矢が撃ち込まれた。


 直江の兵は次々と討ち死にし、兼続と謙信は命からがら与板城目前まで逃げてきた。


「おお慶次よここで待ち伏せしておったら、兼続が来ると言っておったのう。本当に現れたわ」


「そうですね叔母上様、私も戦いたいです」


 そこにいたのは、利家と慶次だった。


「ここでこいつらか…… 逃げ切れるかのう」


 兼続が弱音を吐くと二人の家臣が前に出た。


「私と段蔵が殿を務めますので、兼続様は早く城へ」


 そう言うと謙信と段蔵は、利家と慶次に襲いかかった。


「ほう。お主が上杉謙信か。相手にとって不足はない」


「大将が出てきたことが敗因なることでしょう。 いざ」


 利家と謙信の斬り合いは、慶次の目では追うことはできなかった。


「よそ見をしてていいのですか! 」


 段蔵も慶次に襲いかかった。


「あなたどちら様ですかぁ」


 慶次は、段蔵を受け止めて蹴ろうとしたが、かわされてしまった。


「直江家家臣 加藤段蔵! 参るぞ! 」


 利家は、慶次を気にしながら戦っていた。


「慶次よ。もう疲れたか? 儂が稽古をつけてやったのに無駄じゃたのう」


 慶次は、利家の怪力を毎日受けていたのだった。


「段蔵さん私の力の一部をお見せしたいと思います」


 すると、慶次の姿が消えた。


「消えた…… うわぁ」


 段蔵はすれすれの所で避けて、腕の傷で済んだ。


「何だあれは! この忍である加藤段蔵が目で追えないだと! 」


 慶次は段蔵の前に現れた。


「これでもまだ三割ぐらいですよ。段蔵さん」


 その言葉に段蔵は、戦意を失った。


「そう慶次は、儂の怪力を受けるのではなく、避けることで防ごうとしたのじゃ。いわば力の儂、スピードの慶次と言ったところかのう」


「段蔵しっかりするのだ」


 謙信が話しかけるが、段蔵は動かなかった。兼続は、段蔵よりも速く動ける者を見たことがないと言っていた。段蔵にとってそれが一番の誉だったのであろう。


「謙信様、兼続様が与板城に入られました」


 部下が謙信に報告すると、謙信は、段蔵の元に近寄った。


「わかった。私は段蔵を連れて退く。あとは頼んだぞ」


 謙信は段蔵を連れて、馬に乗り去ろうとした。


「逃がしませんよ」


 慶次は、先回りしようとすると、利家が止めた。


「それ以上はよせ。ただでさえ、体への負担は大きいのだから」


 利家と慶次は、刀を納めた。直江の残った兵は震えながら斬りかかろうとしていた。


「お前ら雑魚は、時間の無駄じゃ」


 そう言うと馬に乗り、利家と慶次は退いていった。


 こうして前田と直江の一戦は、前田の大勝利に終わった。


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