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偽物

 武将が目を覚ましたのは、また昼頃だった。

 松之助が顔を見ていた。


「武将さんなぜ起きていないのですか?」


「すまない。俺は一回寝てしまうと、自分でしか起きれない」


 武将が誤解を解こうとしていると小六がやってきた。


 「やっと起きたのか。よく寝る奴じゃ」


 「関心ている場合ですか! 武将さんのせいで半日が無くなりました。今日中に越後に着かないといけないのですよ。どうするんですか?」


 松之助が焦っていると、小六が割って入る。


「今日中か? こっちの道を使えば、半日で着くぞ」


 2人が小六に着いて行くと海に出た。


「そうか船で行くんだな!」


「その通りだ」


 小六は、部下を使い越後に漁に出る船を探しておいたのだった。


「助かったぜ小六」


「まあいいってことよ」


 船に乗り込み、一行は越後を目指した。


 武将たちは、その日の夕暮れには、越後に到着した。


「それじゃあ与板城を目指しますか!」


 武将が、張り切って歩こうとすると、松之助が止めに入る。


「その必要はないみたいですよ。あれを見てください。」


 それは、与板城だった。武将たちは、偶然にも与板城の近くに降ろされたのだった。


「なんだ目の前に城があるじゃないか! ならばすぐに同盟の交渉だ!」


 武将たちは、与板城の門の前に立っていた。


「前田家家臣だ。通していただきたい」


 松之助が門の前で叫ぶと門は開門した。


「よし。すぐに同盟を決めて、前田家を天下一にしないとな」


 武将たちが城に入ると、直江家家臣とみられる女中がやって来た。


「あなた方が前田家の…… こちらでお待ちください。」


 そう言われるとある部屋に招かれた。


「妙だ」


 小六が呟く。


「どういうことだ」


「ここに来る途中に家臣に会ったか? 簡単に城に入れるなんて何かおかしい」


 すると城が一気に燃え上がった。小六はある方向を指差した。それは紛れもなく与板城そっくりの城だった。


「とりあえずこの城を出ないと丸焦げだぜ」


 武将たちは、城の階段を下っていき、門までたどり着いたが、門が開かない。この数人では、門をこじ開けるは、不可能だった。


「武将何か出る方法は、ないだろうか?」


 小六が聞くと武将は、考え始めた。


「あの女中を逃がすための出口があるはずだ」


 普通城や砦に門以外の出口を作る場合、敵に気づかれないように作るものだ。武将はそう考えた。


「みんな城の壁に触れて、歩いてくれ。どこかにあの女中が逃げるために使った出口があるはずだ」


 壁を触って歩いていると、松之助が怪しい出口を見つけた。


「見つけましたよ」


 そこへ武将と小六、部下が集まってきた。


「流石直江だなこんな出口なかなか見つからないぞ」


 そこを使って武将たちは城を脱出した。


「よくぞ脱出できたな」


 見知らぬ女性がそこに立っていた。


「兼続様にこの策を破れない者とは、話すなと言われておりました。紹介が遅れました。私は直江家軍師上杉謙信と申します。この与坂城はあちらこちら燃えやすいように隙間を作り築城しました。作り直すのにそんなにかかりません」


 上杉謙信は、義に生きる武将で有名だが、こんなことをするとは思わないのが現状だった。

 燃やすためだけに城を築城する財力と自信がないとできないことではある。


「着きましたよ。ここが直江兼続様の部屋です。もうしばらくお待ちを」


 謙信が部屋を出ようとすると武将が呼び止めた。


「あんたに聞きたいことがある。なぜここにも家臣が一人もいない。もしかするとまた燃やされる可能性がある。だから、あんたもここに残ってもらう。もしあんたが上杉謙信で直江兼続に必要とされているのであればこの城は燃やせない。さあどうする」


 松之助と小六は、この武将という男がこれほどの男だとは思わなかった。


 静寂が部屋を包んだ。


「私の負けだ。段蔵は、私の大事な忍、話を聞こう」


 すると、部屋の奥からすごい格好をした女が二人現れた。武将のイメージしていた信長がうつけと言われていた時代の格好と重なった。こいつらなら城の一つや二つ燃やすことを躊躇しないと思った。


「私は直江兼続。そして、軍師の上杉謙信じゃ」


 武将はすぐに同盟を切り出した。


「あんたの力を借りたい。前田と同盟を結んでくれ」


 返事はすぐにあった。


「嫌じゃ」


 兼続の答えはノーだった。武将は唖然とした。


「なんでだ! 前田と同盟を組めば後ろの敵と戦える! それなのになぜ……」


 すると、兼続は一瞬で武将の首元に刀をつきつけた。


「いいか小僧。前田は家臣、直江は城主。これで前田が同盟をする気がないとわかるだろう。だが直江も鬼ではない。ある条件を受け入れるのであれば同盟を結んでやる。謙信!」


「はい」


 謙信は書状のようなものを2通持ってきた。


「この書状には、同盟を結ぶために必要な条件がしたためてあります。一度拝見してください」


この書状には衝撃的なことが書いてあった。


まずは、左の書状から


一.前田は己の力のみで朝倉を滅ぼす


二.前田家の財力の五分一を直江に渡す


三.前田利家か前田慶次は、直江家男子と結婚してもらう


 次に、右の書状は、


一.松之助を人質に差し出す


二.居城を開け渡す


三.前田家は直江の軍門に下り、前田家はかたちばかりの存続する。


 武将は、書状を投げて、部屋を出ようとすると、兼続は最後にこう続けた。


 部屋を出ようとすると、兼続は最後にこう続けた。


「飲めぬのならば仕方がない。前田は滅びよ」


 松之助が書状を拾い上げた。


「主に伝えておきますね」


 松之助と小六も武将に続いて出て行った。


 城の外に出ると小六が話しかけてきた。


「そなたらしくないぞどうしたのじゃ!」


 武将は怒っていた。


「あの条件はどうしても受け入れることはできない。自力で生き延びて同盟か。滅びることを前提で同盟か。どちらにしても前田は危険だ」


 そして、一行は、同盟の内容を持って利家、慶次が待つ城に戻るのであった。


 

 

 

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