誓い
「この天井どこかで……」
武将には、覚えがあった。
「叔母上様さっきの男が目を覚ましたみたいです」
さっきの女の子の声がした。どうやら城の中にいるみたいだった。そこへ謎の女と草原で会った少女が入ってきた。
「お主何者だ? ことと場合によっては、切り捨てるが」
そういうと女は刀に手をやる。すると、それを見た少女も刀に手を置いた。
「待て待て、俺の名前は、前田武将。石川から来た」
それを聞いた女と少女は、首を傾げている。戦国時代を生きる人々に言っても無駄だと思いながらも、誤解を解くために必死に説明をした。しかし、返ってきた返答は、予想していたものであった。
「いしかわ? なんだそれは」
武将は、斬られないように話題を探した。そして、あるものに目を付けた。
「もしや、刀に梅の家紋…… あなた様は、前田慶次殿ですか?」
こんなすごい体格をした女性を見たことがなかった。武将は、そう思って尋ねてみた。
「前田慶次はこの子じゃ。儂は、前田利家と申す。」
それを聞いた武将は、思い出していた。
「ちょっとその刀貸してくれ」
そういうと武将は、慶次の刀を手に取り、見ていた。
「やはり。」
その様子を見ていた利家と慶次は、何が何だか分かっていない様子だった。
「これは、間違いない。関ノ孫六兼元だ!」
関ノ孫六兼元とは、前田慶次愛用の刀である。しかし、鍔が小さいから、鍔が小さい関ノ孫六兼元ってところである。すると利家は、刀を武将から取った。
「その辺にしておけ武将とやら。この刀は、慶次が森から拾ってきたものじゃ」
「森で関ノ孫六を拾った? それはあり得ないと思うぞ。これはすごい名刀だぞ!」
もしかすると、この時代では、それほどまでに価値はなかったのかもしれないが、森で拾えるものではないと武将は思った。
「ハハハ。お主を気に入ったぞ! どうじゃ儂の家来にならぬか?」
武将には、行く当てもなければ、美少女ではあるが、あの前田慶次に会えてあわよくば一緒に戦えるかもしれないということを考えれば答えを出すのは簡単だった。
「わかった。そうするよ」
それを聞いた利家の表情が変わった。
「ならば、この前田家が置かれている状況について説明するとしよう」
慶次が、日本地図のようなものを持ってきた。
「儂等がいる場所それがここ加賀じゃ」
武将は、前田家のことについて思い出していた。利家は、最初に織田信長の家臣になるはず。それがなぜもう加賀なのか。加賀に前田家が入るのは、ずっと後になるはず。
「聞きたいことがある。」
武将は、前田利家の生きてきた歴史の中で、加賀に入る時期がずれていたことを聞きたかったのだ。
「前田家は最初にお……うわあああああ。」
突然すごい頭痛が武将を襲った。
(そうかこの世界では、史実に関わることを話そうとすると激痛が走るのか)
アニメや漫画では、そんな設定がある。それが自分の身に降りかかることになるとは、思わなかった。これからは、気を付けて言葉を選ばないと体ついていけないと武将は思った。
「どうした武将大きな声を出して」
利家は、いきなり大声を出した武将に驚いていた。
「いや何でもない。続けてくれ」
「わかった。隣国には、越後の直江、越前の朝倉、甲斐の今川と小競り合いが続いておる」
武将は、現代では、戦国の有名人織田信長、武田信玄、上杉謙信の名前がなかったことに気付いた。この世界には、有名な戦国大名がいないのか。
(激痛を恐れていても始まらない。ここは)
「利家……織田信長、武田信玄、上杉謙信という名前を聞いたことはないだろうか」
激痛に襲われることはなかった。どうやら前田家の歴史に関わることに触れることがなければ大丈夫らしい。
「織田信長……あいつは幕府の犬じゃ。武田信玄は今川に負けて、今では今川の家臣じゃ。上杉謙信は、直江の家臣にそんな名前の奴がおったのう」
織田信長、武田信玄はともかく、上杉謙信に至っては思い出せないくらい存在感が薄いのかと武将は、がっかりしていた。
「織田信長あやつは嫌いじゃ。頭が切れる奴で幕府の中核におる。」
「幕府か。幕府とは、なんのことだ?」
室町幕府と武将は思ったが、それに触れると激痛に襲われる可能性があると考え幕府のことを聞いたのだ。衝撃の答えが慶次から返ってきた。
「その幕府は、源頼朝公から変わらない鎌倉の幕府ですよ」
(源頼朝?鎌倉幕府か! しかし、あの幕府は、新田義貞、楠木正成等によって滅ぼされるはず。どういうことだ……)
「今は何代目なんだ?」
武将は、話についていくので精一杯だが、元の世界に戻るヒントがあると思い、必死に質問をしていた。
「頼継公で二十代目になりますね」
そして、最後に武将は、利家の真意について質問する。
「利家あんたの目的はなんだ!」
利家はそれを聞いて聞いて立ち上がった。
「儂の目的は、日の本を一つにすることじゃ」
その目的を聞いた武将は、言葉が出なかった。それもそのはず。前田家は既に加賀の大大名。今更天下なんていらんと答えるかと思ったが、その熱い言葉に武将は、答える。
「わかったよ。利家あんたを日の本の王にしてやる」
「そうか。頼んだぞ武将」
利家と武将、慶次はがっちり握手を交わすのだった。
「利家今は何年だ?」
「永禄三年じゃがどうかしたか?」
永禄三年といえば織田信長が今川義元を破り、その名を天下に轟かせた桶狭間の戦いがあった年だった。そこで武将は、考えて利家にあることを聞いた。
「今川と織田の関係というのは、どんな感じだ? 戦になったりしないのか?」
もし、桶狭間の戦いが行われたとするなら、そこで前田家は何らかの形で武功を上げたことで加賀で大名になったのだろうと考えた。
「先ほども申したが、織田信長のような切れる人間が今川の大軍勢を相手に戦うとは思えん。奴は、無謀な戦はしない」
織田信長という人間のイメージが崩れていき、言葉も出なかった。
「こちらの信長は、天才なんだな」
「そうじゃ誰からも嫌われるとのない奴じゃ」
そこで前田家が生き残る道は、一つしかないと武将は考えていた。
「利家あんたの味方をしてくれそうな大名はいないのか?」
武将は、同盟関係をもちかけて、協力してもらい、少しでもはやく天下を取ろうと考えのだ。
そこへ今まで黙っていた慶次が口を挟む。
「叔母上様は、無口で全然友達ができないのですよね」
武将のイメージでは、前田利家は、人に信頼されている人間だったからだ。それがコミュ障と知ったら世の中の利家ファンはどんな顔をするのだろうか、そんなことを思っていた。しかし、武将は、諦めてはいなかった。利家と言ったら天下の盟友羽柴秀吉という人間がいたことを思い出した。
「そうだ! はしば……いや木下藤吉郎はいないのか?」
秀吉がいると信じ、思い切って聞いてみたのだ。
「そなた藤吉郎を知っておるのか!藤吉郎の作る野菜は、天下一美味いと有名で、今や戦国一の商人よ」
(あの秀吉が商人。それが現実か)
そこで、義に熱いイメージの越後直江家に同盟を持ち掛けることにした。
「明日越後の直江に同盟を話をしに行く」
そう言うと、利家と慶次は、同時に
「止めておけ」 「止めたほうがいいです」
同時に言われた武将は、前田家のことを思っていったつもりだが、意外な反応で驚いた。
「けど同盟を結ばないと、前田家はそのうち滅ぼされてしまう。それを防ぐためには同盟しかない。わかってくれ」
そういうと、違う部屋に走っていった。武将がいなくなった部屋で、利家と慶次は話していた。
「わからん奴じゃが言っていることは一理ある。ここは奴に任せてみようと思うのじゃが」
「そうですね。ここで同盟を結べれば、短気の叔母上様が出ることもありませんし、あの方がどうなろうが私たちには関係ありません。いざとなれば彼を打ち首にして誠意を見せればいいだけの話です」
慶次は、前田家に一番ダメージが残らない方法を提案した。利家と慶次は武将をあてになどしてはいなかった。利用して天下を取ることができればそれで良かったのだ。
そして、武将が直江領越後に向かう日がやってくるのだった。




