思い
小六が目を覚ました。
「小六!良かった!」
武将は、大泣きしていた。
「すまぬ。心配をかけたな」
「武将さん鼻水が出てますよ。汚いですね」
慶次も小六を心配していたようだ。二日間眠っていた小六は、現状がつかめずにいた。
「ここはどこじゃ…… そして、今どうなっておる」
武将は、利家から指示を伝えた。
「ここは、今川領にある寺だ。利家はこの寺で小六は養生せよ。とのことだ」
それに小六は反論した。
「儂はもう動けるこの通りピンピン…… うっ」
小六の傷と疲れは簡単にとれるものではないだろう。寺に預けておけば安心だと利家も考えたのであろう。
「同盟は俺と慶次で何とかする。信じて待っていろ!」
「わかった。そなたを信じよう。慶次も頼んだぞ」
「わかりました。同盟は私が必ず成功させてみせます」
そして、武将と慶次は、寺に小六を預け、旧幕府領尾張を目指した。旅は順調に進み、三日ほどで尾張に着くことができた。
この世界では不明だが、ここは織田信長誕生した場所でもある。
「尾張に着きましたね。ここから将軍の城があった小田原を目指しますが、今日はこの辺にして休みましょう」
考えてみれはろくな休みもなしに歩き続けていた。しかし、慶次が選んだのは、やはり野宿であった。毎回思っていたが、なぜ前田家の家臣は、野宿しか計算できないんだ、そう思いながら慶次に聞いた。
「お前といい、松之助といい、前田家の家臣は野宿が好きなんだな」
「私だって野宿なんて嫌ですよ。しかし民のことを思えば私が一回野宿をすることで生活が少し楽になるのです。それは私としては嬉しいことなんです」
先の直江との戦で大量のお金を使った前田家は、血縁にまで野宿をさせるようなブラック大名なのかと思ったが民のことを思っての行動だったことに武将は感動した。
「人は城。人は石垣」武田信玄の名言にもあるように民を大切にしていることに改めて気づいた。
「そうか…… 織田との同盟が成立すれば貿易でお金の問題も少しは解決するだろうよ。慶次と俺にかかっているんだ頑張ろうぜ」
「まあ軍師のあなたが頼りないからこうして私が同盟の話をしに行かないといけないわけですからどうか頼みますよ」
慶次から頼りにされているのか。そうでないのか。武将はわからなかった。この際はっきりさせたくて聞いてみることにした。
「なあ慶次…… 俺のこと頼りにしてくれているのか?」
「いいえ頼りにしていませんよ」
慶次は、笑顔でそう答えた。武将もそれには、言葉を失った。こんな美少女から頼りにさせているのなら頑張ろうと思った。さすが戦国一のツンデレ。そんな言葉があるのなら、この慶次にこそふさわしいのだと思った。
「頼りにされていないのなら仕方がないな…… 頼りにされるようにこれから頑張ってやる」
武将は新たな気持ちになり同盟の成功を祈った。
ガサガサと後ろで音がした。
「誰だ」慶次が刀を抜いた。
「たすけ……」 草むらから女の子が出てきた。
また、美少女かと武将は思った。
「仕方がないですね。この娘を一人で寝かせておくわけにはいきません。ここはこの娘が目を覚ますまで待ちましょう」
慶次の言葉は武将にとって予想外だった。こんな奴は斬り捨ててさっさと進みましょうかと言われるのかと思っていたが情に厚いところがあることに気づいた。
「なにじろじろ見ているんですか? 斬りますよ」
「いやなにも…… ただ嬉しいだけだ」
その娘は目を覚ますことなく、2日過ぎようとしている時目を覚ました。
その音に慶次も気づき目を覚ました。どうやら朝のようだ。
「あなたは何者ですか? 場合によっては斬りますよ」
慶次は、刀に手を置くといつでも抜けるように抜刀の構えに入った。
「私ですか? 私の名前は竹中半兵衛と申します」