前編
長くなってしまったので、前後編に分けています。
ふと思いつきで書きました。
勢いで書いたので、誤字脱字、駄文ですみませんm(_ _)m
それでも“OK”って方は、読んでやってください。
「お姉ちゃん。私、聡さんと結婚するわ」
突然部屋に入ってきたかと思うと、目の前の女性は私にそう言った。
しかも自信たっぷりに堂々と、このタイミングで。
「自分が何を言っているのか、分かっているの? それとも馬鹿なの?」
いつも通りに目の前の女性にいる女性=私の妹に対して、キレた反応を示す私の隣にいる女性。
彼女の名前は、長岡 静香。
私にとっては、幼稚園時代からの幼馴染兼大親友である。
「ねえ美雨。もういいよね? こんな最低最悪のビッチ! 私が成敗して差し上げるから!」
その静香が私の妹を思いっきり睨みつけて、今にも飛びかかろうとしている。
まあ、普通はそうだわな。
しかしそんな静香に対し、
「仕方ないよ、いつものことじゃん。もうここまできたら、一種の不治の病なんだよ。さゆりは・・・・・・」
と、私はいつもどおりに、あきらめの言葉しか口にしなかった。
そう。
あの日からいままでずっと、こうだった。
私に、“妹”という存在が出来てからずっと・・・・・・。
「そうそう。そんなに綺麗なドレスがもったいないことになるのも、仕方のないことなんだよね? お姉ちゃん」
妹は本当に楽しそうに、相変わらずニコニコ笑顔のままだ。
その笑顔は決して、姉の祝福を祝うものではないのだけれど。
私たちが今いるこの場所は、結婚式場内にある新婦の控え室。
この場にいるのは私と静香に、あとは目の前にいる妹の3人のみ。
私が今身につけているのは、女性なら誰もが憧れる真っ白なウェディングドレス。
そう。
私は今日、女性なら誰もが憧れる“ジューンブライド”にて、みんなに祝福される予定なのだ。
大好きな人とともに・・・・・・。
そんな姉に妹はわざわざ今この時、自分の結婚報告をしに来たのである。
これはもう、嫌な予感しかしない。
が。
「で、さゆりは何処の聡さんと結婚するの?」
答えはわかっているのに、あえて聞いてしまう私。
ああ、きっといつものパターンなんだろうな・・・・・・。
ふっと、自分の横顔に影が差すのがわかった。
こんな時、すぐ顔に出てしまう自分が情けない。
そして、その様子を妹は決して見逃さない。
さゆりは予想通りにわざとらしくも、いかにも“また勝った!”と言わんばかりの満面の笑顔を作り、
「もちろん、こちらの 坂本 聡さんよ? お姉ちゃん!」
そう言うなりすぐに乱暴にドアを開けると、すぐそこで待っていたと思われる男性の手をグイグイと引っ張って、強引に部屋の中へと導く妹。
もう嬉しくて仕方がないのか、男性の腕にピッタリとくっついている状態である。
そして私たちの目の前に現れたのは、白のタキシードを着た男性であった。
「・・・・・・」
「ちょ・・・・・・。これはどういう事?」
無言である私に対し、あまりの出来事に、それだけ言うのがやっとだった静香。
それもそうであろう。
だって目の前に姿を現した男性は、私たちがよく知っている男性だったのだから。
彼は顔を真っ青にして、うつむいたままの状態であった。
私を全く見ようともしない。
彼の目に写っているのはきっと、この部屋の床の絨毯のみ。
「美雨ごめん・・・・・・」
やっとのことで何かを言ったのかと思えば、今にも消えてしまいそうな小さな声での私に対する謝罪だった。
そして続けざまに、トンデモ発言までなさいました。
「さゆりちゃん、オレの子が出来たって・・・・・・」
「・・・・・・」
とうとうそこまで来ましたか!
いつかはやるなとは思っていたけれど、まさかこのタイミング?
まあ確かに、最近は太ってきたな? とは思っていたけれど、まさかこんな手で来るなんて!
本当に、毎回やることがえげつない。
「うん、もう5ヶ月なんだ。だから仕方ないよね? お姉ちゃん?」
私の目の前で、母子手帳を取り出して開き始める妹。
そこには、エコーで映し出された小さな命の白黒写真が、デカデカと添付されていた。
そんなものまで見せられて、一体私に何を言えと・・・・・・。
「あんた本当に、史上最低最悪の悪女だな! なんでこんなのが妹になちゃったの? もう縁切れば?」
親友がマジギレしている。
今までに見たこともないような怖い顔をして。
しかし、妹はそんな私の親友をまるっと無視して、
「だからしかたないでしょう? ああ、横からかっさらうようなことをしてごめんね? だから私、結婚式はしなくても別にいいわ。もう、婚姻届けは出しちゃったしね? そうだった! 私はもう“石倉さゆり”ではなくて、“坂本さゆり”になったんだっけ? 報告が遅れてごめんね? そういえば、お姉ちゃんは今からだったよね? 残念。でも、戸籍にバツが着く前で良かったじゃない? まだ33なんだしさ! 今からでもがんばって男をあされば、適当にいいのが見つかるよ!」
と、慰めているんだかけなしているんだか、よくわからない事を言ってきた。
「・・・・・・」
私はといえば、混乱しきっている頭の中を整理している状態である。
“こんな時って、どうすればいいんだっけ?”
なにこれ?
夢オチ? それとの何かの悪い冗談?
何も言わないでただ椅子に座っているだけの私を見て、イラつき始める妹。
左足をダンダンと床に叩きつけながらも、私のリアクションを待っている様子だ。
しかし。
私はどうしていいのかわからない。
こういう時って、普通はどうするんだっけ?
なんでだろう?
何も思い浮かばないや・・・・・・。
最初ははただ黙って、ニヤニヤしながら私の様子をじっと見ていた妹。
しかし、時間が経過する事にだんだんとその顔は、不機嫌な表情へと変わっていった。
そして、
「本当につまらない女! なんであんたみたいな地味で面白ろみのない女が、私の姉なのかしら? お母さんはなんでこんなつまらないコブ付きの男と、再婚したんだろう? 本当に意味わかんない!」
と、周りの方が“意味わかんないのはそっち!”とつっこみを入れたくなるような言葉を返してきた。
いかにも
“興ざめさせんなよ、このバカ女!”
と言わんばかりの、冷たい目をして。
これもいつものことである。
あれは大学2年になったばかりの頃。
突然父が再婚し、私には4つ年下の義妹ができた。
それからずっと続いていたこと。
それは、私の男友達や彼氏にことごとく甘い言葉に媚びた態度で“女”を武器に私から面白いように奪っていく妹の楽しいゲーム。
そして私が絶望する顔をみて、とても嬉しそうにするのだ。
男性には思わせぶりな態度を取り、自分が飽きたらポイ捨ての繰り返し。
そんなことができるくらいに、義妹は見た目が男ウケするタイプであった。
もちろん同姓には、“女の敵”と言わんばかりに嫌われていて友達もいなかったが、本人にはいつも男の取り巻きがいるので気にならないらしい。
そんな彼女はさげずんだような目つきで私を見ると、
「まあ、せいぜい頑張りなよ?」
と言うなりくるりときびすを返し、彼の手を引っ張った。
それからドスドスとわざとらしく大きな足音を立てて、部屋のドアへと向かっていく。
そしてまさに、部屋を出てドアが閉まる時である。
タキシードを着た男性は、
「お互い、幸せになろうな?」
と私にそれだけを言い残して、そのまま義妹とともに姿を消してしまったのであった。
彼はどうして、最後にあんなことを言ったのか。
続きは後編にて!