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月夜の☆じゃむパニック!~YUMESAKIMORI外伝~  作者: 夢☆来渡
第二夜【戦士とチカラ】
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【戦士とチカラ・2】

 

 倉庫の奥に荒く傷んだ畳が二枚敷かれていた。その上には、昭和初期を匂わせる整理(せいり)箪笥(たんす)が置かれている。直接倉庫の床に置くのを嫌ったのだろう。まだその役割と機能を活かすべく、損傷の少ない木肌を晒して働いている。それを背にして畳の中央付近にまばらに集合した小人達。若者や中年層が多く、老人が数名、女性が二割程混じってはいるが、子供の姿はない。皆、狩りを終えて来たばかりのようで、手には武器と荷袋を携えていた。

 お互いに挨拶を交わし、今日の成果を見せ合う。

 レンとジンも畳の場所にたどり着くと、その和の中に加わる。

 二人の人気は小人の中でも高く、姿を確認した他の者達があちこちから声を投げかける。


「よう!二人とも調子どうだいっ」

「おかえり、未来のエースたち!」

「今日は何体仕留めたんだ」


 様々な言葉。活気に溢れる風景だ。それに律儀に応えていくジンは早々に取り巻きに捕まり、足を止める。

 レンはいつもの事なので余り相手をせずに先を歩く。必然と二人の距離は開いた。が、その内また追いつく事を、赤い帽子は知っている。


 レンが小人達の集会の中に、笑顔が見えない、少し空気が違う一団を見付けた。

 すぐ側に居た、年配の小人を捕まえて尋ねる。

「アレ、何かあったの?」

 呼び止められた小人の戦士は、持っていた手斧を肩に上げて、深妙な顔を向けた。

「誰かやられたらしい。今日は三人だ」

邪夢(ジャム)に?またかよ」

「【中島家】に行った三人だ。食われてはいないが、かなり重症らしい」

「ふーん、あんなトロい団子にねぇ」

「レン君は強いからな、ピンと来ないかもしれないが、都会に行くとかなり大きくて素早い邪夢も居るらしいからな。運が悪かったんだよ」

 赤い帽子を脱いで黒い髪をかき上げながら、レンは不服そうに口を尖らせた。まるで自分が倒してきた何体もの邪夢が小物ばかりに思えたからだ。

「レン君、今日の収穫終わったなら、あっちでマリベルとサムが受付してるから、タマゴを預けて邪夢の報告をしておいで」

「ああ、わかってる」

「タマゴはちゃんと預けろよ、最近ゴマかす奴が居るからな」

「わーってるよ、んじゃ、ありがと」

 レンは手斧の戦士と別れた。

 その内に青い帽子を揺らしてジンが追いつく。

「何話してたの?」

「お前こそだろ、いちいち付き合ってんじゃねーよ」

 二人は並んで歩きながら、受付に向かう。

 深刻な顔で何やら話し合う一団を横目に通り過ぎながらジンが口を開く。

「邪夢にやられちゃったんだって」

「知ってる」

「中島さんの家で三人だって」

「知ってる」

「すっごいデカいヤツらしいよ」

「あっそ」

「明日は南西部に応援頼んで来てもらうんだって」

「なにぃ?北東部(ウチ)で処理しないのかよ」

「あ、コレは知らなかった?」

「うるせ~よ、さっさと喋れよ」

「レンはあんまり他の人とお喋りしないから、こういう情報に(うと)いんだよ」

「……」

「中島さん家の噂だって結構前からチラホラ出てたのに」

「……もういい」

「あ、すぐスネる。もう教えてやんないからねー」

「うるせ~」

 受付に着いた赤帽子は、彼が聞かなくても勝手に喋り出す事をよく知っている。


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