おまけ2【探偵ゴッコ】
狩りが終わった朝、集会場でその日の成果と報告を終えたオードリーは自分の部屋に居た。ジン、レン、モーリス、そしてレオンの四人が一緒である。
ジンが仲間の紹介と一緒にお土産を渡したい、と言って、全員をオードリーの家まで連れてきたのである。
家主のオードリーは、わざわざ家にまで来て貰わなくても良かったのだが、何よりジンのお願いだ。断わる事が出来ない。
広いとは言えないリビングに集い、改めて紹介を受け、モーリスとレオンの二人と握手を交わした。
面倒な事になるからと、レンの意見でモーリスのオリジナルが誰なのかは伏せられていたのだが、オードリーは知る由もない。東京から来た油断ならない女という擦り込みは尚も継続中だ。
紹介が終わった所で、ジンが腰袋から、布で包んだ夢珠を手渡す。
「じゃあコレ。約束のモノ」
オードリーは目をキラキラさせて包みを開く。待ちに待った漆原めぐみの夢珠である。
「ありがとうございますジン様!大切に致しますわ!」
マジマジと見つめ、手の平で観察を続けるオードリー。
その姿を見て、満足そうに微笑んだジンは、皆を帰るように促した。
「じゃあそろそろ帰って休もうか。あー、長旅の疲れがどっと来るなぁ」
ジンは入口のドアを開け、皆を外へ出す。次に自分もドアを抜け、
「じゃあねオードリー、また夜に」
と、手を振った。
「はい!また夜に!ジン様ありがとう!」
キラキラした笑顔で返すオードリー。
家を出て、帰路につくレンがジンに言う。
「あーあ、苦労した夢珠あげちまいやがって。それよりジン、【コトダマ】はお前の分、どーすんだ?予約して来るなら付き合うぜ」
ジンは立ち止まって返す。
「実はそれについてはアテが有るんだ」
部屋に一人きりになり、クルクルと踊りながらはしゃぐオードリーは、ピンクの帽子を脱ぎ、ソファに投げる。
手にした夢珠を見つめ、尚も喜びを表すために鼻歌を歌いながら部屋を歩く。
そして秘密のコレクション部屋へ。
隠し扉を開いて一回り小さな部屋に入ると、ズラリと並ぶ声優達のコレクション。
CDやポスターなど、実物大の人間サイズならば到底置き場など作れない。だが、夢珠の能力を利用し、サイズ変更をする事により、自分達のサイズに合わせ、音楽CDもプレイヤーも小人サイズで楽しむ事が出来る。ポスターを壁一面に貼るなどは基本だ。
オードリーは小部屋に置かれた中 で、中央の最もアイテムが溢れた人物の前に座する。
中央に作られた祭壇と思われる場所に、手にした夢珠を鎮座した。
漆原めぐみのコレクション、その中に夢珠の小が加わったのである。
「やったわ。やっとこの時が来たのね」
オードリーが一人呟く。
「どれだけ苦労したか。無駄に繰り返した夢珠のトレードも、もうしなくていいのね」
そう言って衣装を入れるクローゼットを開ける。
木製の扉が観音開きに中を見せると、中には10を超える夢珠の大や中が並んで居た。
「速水さんや田中さんの夢珠はまだトレード価値も高いし、コレクションの中でも苦労したから保管するとして、新人の夢珠はもう用済みね。解らないように処分するか、別のアイテムに交換しないと……」
「そういえばオードリー!忘れていたよ!」
聞き間違える事のない声に固まるオードリー。
「もう一人、仲間を紹介するのを忘れてたんだ!!」
ゆっくりと振り返る。
「ジン……さま?」
目の前には帰ったはずのジンが、開いた隠し扉を背に立って居た。
「いやぁ、申し訳ない。お土産を渡して安心してしまったよ。エンジュ、出てきてくれ」
ジンが言うと、空間が歪んで朱髪の女の子が現れた。
「この子の名前はエンジュ。レオンさんの恋人だ。ご覧の通り、なんと自由に姿を消す事が出来る。凄いだろう」
ジンが冷静な口調で言うと、オードリーは観念したように頭を垂れた。
「ひ、酷いですわ……そんな」
「実はさっきも彼女は部屋に居たんだ。紹介しようと思ったらずっと消えたままで、つい忘れてしまったよ。すぐに引き返したんだが、オードリーが部屋に見当たらなくてね。そしたらまだ中に居たエンジュが扉を教えてくれたよ。いやぁ、驚きだ、こんな部屋があったとはね。ありがとうエンジュ、外でレオンが待ってる」
エンジュを見送り、ジンはゆっくりと小部屋を歩き、コレクション達を見て周る。
CDやDVD、本や写真集。そして夢珠。
「オードリー、無許可で大きな夢珠を所持してはならない。掟は理解しているね」
ジンが中玉の一つを手に、静かに言った。
オードリーは目を潤ませている。
「どうして解ったんですか」
ジンは頷き、言葉を続ける。
「最近、夢珠の回収を終えて、帰って来るとよく言われるんだ。『ちゃんと夢珠を提出しろよ、最近ゴマかす奴が居る』、そんなバカなって思ってた。想像出来なかったんだよね、情報不足で予測ができなかったんだ。
でも、オードリーがケガをして、僕とレンがお見舞いに来た時、オードリーはファンだコレクターだって事をたまに言うくせに、部屋の中にはまったくそういうコレクションが無い事に気付いた。そして出発する僕にお土産を頼んだ。『夢珠の小か使用済みの日用品でかまいません、殆んど持ってますから』いやいやいや、持ってないだろう?一つも飾って無いんだから。
僕は考えた。自分ならどうする?欲しい物があって、お金なんて使わない小人だ。あるのはそう夢珠だ。夢珠くらいしかない。それをなんとか手に入れてトレードする。都会の知り合いや同じ趣味の仲間と交換するんだ」
オードリーはすがるようにジンを見る。
「お願い!ジン様!見逃して下さいませ!オードリーは何でも致します!」
それを無視してジンは続ける。
「オードリー、君はずっとここに住み続けているね。普通、見つかる事を恐れて小人なら寝ぐらを変える。でも君はそうしない。変えたくても変えられない理由がある。一つは荷物、コレクションの山は引越しに不向きだ。そして住所を固定化しておかないと、トレードした荷物が届かない」
「お願いよ、ジン様……」
涙に崩れ落ちるオードリーの肩に触れ、ジンは微笑みを浮かべて言った。
「安心してオードリー。ここには僕しか居ない。エンジュは元々フリーで何処にも所属していない戦士だ。うちの組織の中の事をベラベラ話す子じゃないよ」
立ち上がってジンは夢珠に向き直る。
「声優さんの夢珠なら、【コトダマ】として申し分ないチカラが得られる。それはワザワザ有名な声優でなくてもいいらしい。という事は、今ここに【コトダマ】が約10個以上ストックされている訳だ」
オードリーはジンを見上げる。
振り向いた想いを寄せる戦士はニコニコ笑顔を絶やさない。
「オードリー、さっきのお土産の小玉と、この中から一つ交換してくれないか?僕はまだ【コトダマ】のチカラを持ってないんだ」
「……え?」
「そして残りの【コトダマ】はこのまま保管しておいてくれ。いつか、時が来たら仲間で分け合う。【コトダマ】として使えない夢珠は、今夜の出動後に本部に提出だ。いいね?」
オードリーは小さくはいと答えた。
「僕とレンがこの【コトダマ】のチカラを研究して、皆んなに教えて使えるようにするから。それまで待っていてオードリー、君も強くなって、いつか僕が【コトダマ】の使い方を教える。それはそんなに先の未来じゃない。見ていろ、僕とレンはこの北東部のエースになる」
強く語るジンの瞳に、オードリーはさらに惚れていく自分の心を感じた。
エースとはその地で最強の戦士に贈られる称号だ。
北東部ではシュワルツがエースの座を引退して以来、誰もその称号を継いでおらず、無冠のままである。
そして一ヶ月後、北東部に初のダブルエースが誕生する。
あとがき。みたいなもの。
ここまで読んで頂いた皆さん、ありがとうございます、お久しぶりです、らいとんです。
完結と言いながらも中途半端でまだまだこれからって感じで終わってしまった感じがありますね。分かります。
じゃむパニックが構想として出来た時は、私は高校生だったと思います。
それから携帯ガラケーを媒体として少しだけ書いて、序章とした部分のみをデータ保存してありました。最初の文字数が少ないのはその頃のガラケー仕様だからです。
それから時を置いてこのサイトにお邪魔して改めて続きを書いた訳ですが、どうだったんですかね、私は楽しく書いてた訳ですが。
第1夜からこの探偵ごっこまでを想定して練ったので、一応ここまでで一話って感じですよね。
さて、じゃむパニックはもともとこんなに短い話ではありません。もちろんまだまだ続きは有ります。書いていきたいと思います。
アニメ化やゲーム、おもちゃとかあらゆるカテゴリーを狙って作り上げたじゃむパニなので、またの再会を期待していて欲しいです。
今は作者は別の話をやっちゃってますが、また戻りますんで、応援よろしくお願いします。でわでわ。




