表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/54

【凶戦士・8】

 遠くでレンの声が聞こえる。

 モーリスも、名前を呼んでくれている。

 だが真っ白な意識の世界に落ちていく。ジンは抜け出せない落下シューターか廃棄される瓦礫のような虚脱感にその身を委ねた。

 永久に眠りに誘う恐怖よりも、逃れられない睡魔に負けてしまう羞恥に両瞼を閉じていく。



 これは君の声か?


 ジンは問うた。

 波に呑まれながらも、幾重にも重なる声の濁流に僅かな意識を向ける。

 女の声が白い世界で反響した。


『レオンを殺さないで』


 君は何者なんだ?


『レオンはとても優しいの』


 どういう事だい?


『わたしが悪いの』


 女の声が聞こえる先に、白い世界は終わりを告げ、色付きながら、別の世界への扉を開けた。



 ☆ ☆ ☆



「エンジュ?また鳥とお話しかい?」

「あ、レオンが驚かせるから逃げちゃったじゃない」

「ごめんごめん」

「またエサをせがまれちゃったわ。明日またエサを欲しがってやって来るわよ」

「エンジュは何か欲しい物はないのか?」

「私?そうだなぁ〜、あの鳥さんみたいに、空を飛べたらいいな」

「そんなの簡単さ、夢珠で飛行の力を付ければいいんだよ」

「まぁ、レオンったら夢が無いのね」

「そうかな?普通だろ」

「第一、夢珠だって、そんな簡単に手に入るモノじゃないでしょう。大玉か中玉だし、私達みたいな田舎組織の下っ端じゃあ、何年も予約待ちよ」

「……かも、しれないな」


 ……

 ……

 ……



「エンジュ、これ見てよ」

「わぁ!どうしたの!?中玉なんて持って」

「知り合いのフリーでやってる戦士に貰ったんだ。なんと【飛行珠】だ」

「ええ!?最近一人で何処かに行ってると思ってたけど、まさか悪い事して……」

「ハハハっ、違うよ。ちゃんと仕事を手伝って貰った報酬さ。大変だったんだぜ、都会の邪夢はこっちより何倍も強いんだ」

「まぁ、やっぱり危ない事してたんじゃない」

「そう怒るなよ。コレ、あげるからさ」

「え?私に?」

「前に言ってたろ、空を飛びたいって」

「そんな!大変な思いまでしたんだからレオンが使ってよ」

「俺は別の夢珠をもう貰ったからいいんだ。これはエンジュのために、まぁ、都会に行った記念のお土産だよ」

「そう……ありがと」

「……嬉しくない?」

「めちゃくちゃ嬉しい!」

「うわ!抱きつくなよ!」

「レオンはどんな夢珠貰ったの?見せてよ」

「ああ、あとで見せてやるよ。【マリオネット】って呼ばれてる力だ。鎧なんかを自由自在に動かせるんだぜ」


 ……

 ……

 ……


「ここに居たのか、エンジュ。探したよ」

「あら、怖くない方のレオンね。うふふふ」

「どういう意味だ?……エンジュは最近、飛んでばかりいるね。その内歩けなくなるぞ」

「ふふふ、飛ぶってすごく気分がいいのよ。自由を手に入れた、最高の気分」

「それは何より。エンジュはよく笑うようになったし、活発に動き回るようになった。でも、働かないサボリ魔にもなった」

「レオンはたまにすっごく怖くなるわ。まるで優しいレオンと怖いレオンの二人居るみたい」

「組織の仕事、行かないと怒られるぞ」

「レオン、組織やめちゃおうよ。仕事なんて辞めて自由になろうよ」

「エンジュ?」

「そうだ!都会に行ってフリーになろうよ!私と二人で色んな町や国や人や、世界中を見て回ろうよ!」

「……」

「ね!そうしましょう!決めたわ、私もレオンも自由(フリー)になるのよ!」

「……エンジュが望むなら、そうしよう」


 ……

 ……

 ……


「エンジュ、エンジュ!大丈夫か!?」

「……レオン、わたし、溶けていくみたい」

「どうなってるんだ!?身体が消えかかってるぞ!」

「あの夢珠は、きっと自由になりたいって想いから出来てるのね、だから私、自由になりたかった。何もかもから逃げ出したかった」

「ちくしょう!何でこんな事に!」

「同じ場所に居られないわ。身体も、心も、きっと自由を求めているのよ」

「あの夢珠が悪いのか!?俺のせいだ!*イヤ、アノ戦士ガワルインダ」

「レオン、私は貴方のそばに居るわ」

「組織に戻って助けて貰おう*アノ戦士ヲミツケテブッコロソウ*夢珠が要る。きっと夢珠で治せるさ!*スベテノ夢珠ヲオレノモノ二シナケレバ」

「レオン、気をつけて、あなたが戦う度に、もう一人のアナタが目を覚ますの。きっと、自分を保てなくなる……」


 ……

 ……

 ……


「エンジュ、どうした?声が聞こえないぞ」


「言葉ヲ失ッタノカ?」


「そうか、大丈夫だ。言葉の夢珠を使えばいい」


「オマエノタメニ最高ノ夢珠ヲ手二入レテヤル」




 ☆ ☆ ☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ