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月夜の☆じゃむパニック!~YUMESAKIMORI外伝~  作者: 夢☆来渡
第四夜【言葉の魔術師】
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【言葉の魔術師・7】

 長身でスラリと伸びた足。彫りが深く往年の笑顔のシワが人相と性格を表しているようだ。髪は金色の短髪で清潔感と、ビジネスマンのような仕事人を風体としている。総支配人のアレックスは長い足をツカツカと回転よく鳴らし、二人の来客に歩み寄った。

 後ろに控えるのは、藍色の髪を束ね利発そうな眼鏡も光る女性の従者『テス』。秘書と雑務を担っている。

 二人とも、人間のような服装で、黒いスーツという姿で現れた。アレックスにおいてはネクタイまで締めている。それも都会の流行りなのだろう。

 青い帽子のジンと赤い帽子のレンは共に立ち上がり、待ち合わせ場所であるエントランスホールのフリースペースに背筋良く起立した。


「どうも初めまして、総支配人のアレックスです」

 握手を求めるアレックス。

「初めまして、僕はジン。こっちがレンです」

「ども。はじめまして」

 順番に握手を交わす。

 レンが照れたようにすぐに半歩下がると、アレックスとジンが向き合う。

「遠い所から大変でしたね、宿はゆっくりお休み頂けましたか?」

「ご親切に配慮下さり有難うございました。おかげで疲れも取れました」

「それは良かった。スタローン様のご友人とあらば家族も同然、お気の済むまで泊まって行って下さい。とはいえ、あまり長居は出来ないんでしたね」

「そうですね、二、三日したら帰るつもりです。それまでに何とか目的を達成したいんです」

「事情は秘書から伺いました。【コトダマ】の入手については秘書が調べておりますので、直接お聞き頂くとよいでしょう。テス、ご説明を」

 はい、と後ろに控えていた従者が前に出る。

「現在、夢珠の在庫をお調べしたところ、【コトダマ】の在庫はゼロでした。予約待ちで約三ヶ月以降との事です。これに関しては直接の獲得の方が効率が良いと判断させて頂きました。確率としては下がりますが時間の猶予も有りませんし、【コトダマ】を発生するニンゲンの元へ直接行って、夢珠を捕獲して頂けるように手配を致しました」

『ええっ!? 本当に!?』

 ジンとレンが驚く。

 アレックスが満足そうに頷いている。

 秘書のテスは冷静に頷いて言葉を続けた。

「はい。ジン様より情報を頂きましたニンゲン、『漆原めぐみ』の夢珠が最も【コトダマ】として有力であるという説は間違いないようです。管理連にて確認致しました。よって本日の夜8時より、『漆原めぐみ』の自宅にて夢珠の回収捕獲の手配を行いました。援護として我々の組織から戦士を3名お付けしますので、邪夢の排除は彼らにお任せいただいて、夢珠の回収のみをジン様、レン様にお手伝い頂くという形でお願いいただけますでしょうか」



「ちょっと待ったぁあ!!」



 余りの事に驚いて声も出ないジンとレンが突如叫ばれた声の主を見る。

 緑色の髪と黄色い服の少女が手を挙げて震えていた。

 名をモーリス。

 今日、『漆原めぐみの夢珠回収』を延期されたばかりの夢防人である。



 ☆ ☆ ☆



 東京都北区、アレックスの居室(オフィス)にて。

「申し訳ありません、周囲への配慮が足りませんでした」

 オフィスに二人きり、テスはアレックスに対して頭を下げた。

 それを片手を上げて制し、アレックスが言う。

「いや、ここに呼び出さず足を運んだのは私が言い出した事だ。テスに落ち度は無いよ。むしろよくやってくれた。確かにあの状況を予期出来ていれば、君の言った通りここで話すべきだったんだ」

「いえ、しかし良かったんでしょうか、あのモーリスと言う者を同行させて」

「彼らが構わないと言うんだ。容認するしかないだろう。それに夢珠も報酬も要らないと言うし、組織(コチラ)としてはタダで働いてくれる戦士が一人増えたんだ、願ったりだよ」

「ニンゲンの……ファンでしょうか?半年も前に予約して、会うだけでいいなんて、私は理解に苦しみます」

「ははは、芸能人の家から私物やゴミを持ち帰って来る奴も居るからな。まあ、お客様の邪魔さえしなければいいさ」

「彼女を調査しますか?」

「……そうだな、身元が解る程度には調べておけ。後でゴネたらかなわん」

「はい」

「久しぶりの田舎者の上客だ、ここで恩を売りまくって、夢珠の支援の足がかりを作る。相手はあのスタローンだ。きっと側にシュワルツも居る。デカイ取り引きになるぞ!もぐりのチーマーどもに負けてられるか!!」

 鼻息を荒くするアレックスに敬礼し、テスは部屋を後にする。部屋を出て一人、廊下で呟くのは主の陰口か。

「……小さな子供も、役に立つなら使えばいいわ」

 ガラス窓が並ぶ廊下を歩きながらテスは一人、自分に微笑んだ。




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