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序章【本棚の瞳】

別話、夢鏡に登場する小人達の活躍するお話しです。


夢鏡の方と合わせて楽しんでいただければと思います。

 それはヒトから生まれる。


 未知なる力を秘め、その姿は異形。個体を成して「命」を得た彼等は、時に本能、時には業を背負い、躍動する。そして、それはヒトに還る。



挿絵(By みてみん)



☆プロローグ☆


 暗闇の中、月は登り輝く。数多の囁きを従えて地上の小さな生命に眠りを誘う。

 ヒトもまた眠りにつく。

 夜は更けていく……


 今、ある一人の青年が眠りに落ちていた。その瞼は閉じられて長い。

 その姿を遠くから眺める瞳がある。

 一つ、二つ……四つ。

 青い帽子と赤い帽子の少年、いや、掌にすっぽりと収まるその小さな体格からはまさにコビトと呼ばれる類の者達だろう。

 眠っている青年のすぐ傍の本棚、乱雑に並んだ本達の隙間から顔を覗かせている。

 じっと息を潜め、何かを待っている。

「まだかよ、ったく……」

 赤い帽子の小人がうんざりとした声を上げる。

「仕方ないよ、こればかりは僕たちがどうこう出来ないんだから」

 青い帽子の小人がクスリと笑った。

「わかってるよ、良い夢見ろよな~!」

 赤い帽子の小人は溜息を混ぜながら、人間に向かって言葉を吐き捨てる。彼の背中には自分の背丈とさほど変わらない大きな剣が背負われていた。

 対して隣の青い帽子の方には、これまた大きな弓が背負われている。まるでこれから狩りでも行われるかのようだ。


 二人は再度、息を潜める。


 ……

 しばし。

 ……


 不意に、


 キィィン


 剣と弓が光る。

 何かに反応し、輝きと声が重なる。

「来た!」

 赤コビトが叫んだ。

 その目線の先に在る人間は微笑をたたえ今まさに夢の中へと落ちている。

 その頭上、何もない空間に、音もなく、ひっそりと光が集まり始める。

 微かな光、戯れに流れる風にでさえ、掻き消されそうにか細い光。

 それは空間で集束し、形を成す。

 丸く、純白に輝くそれはまるで、

「……タマゴだ」

 思わず呟く程に。

「見惚れてる場合かよ!行くぞっ」

 赤帽子が身軽に本棚からジャンプする。空中でヒラリと一回転を見せて、下にあるしましまクッションに着地した。

「ちょっと待ってよぅ!」

 青帽子も続いてジャンプする。おしりから真っ直ぐ落下し、クッションで弾み、転げ落ちて床でしたたかに頭を打ち付ける様は思わず吹き出してしまう愛らしさかな。

「何やってんだよ」

 赤帽子が叱咤する。後頭部をさすりながら立ち上がり、

「うぅ、ごめん」

 謝る青帽子。


 小さな影が二つ。窓から差し込む月明かりに少し、背伸びした。





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