結婚
カーリー様達とずっと一緒に居ると思ってた。
世界中を旅して、いろんな事を学んだ。
厳しい現状も聞いていた、いつか大変な事が起こるかもしれない。
でも彼らに必要とされることが幸せだった。
あなたと出会うなんて・・。こんなに胸が苦しくなるなんて・・。
少し離れただけで知らずに涙が流れていた。
カーリー様はあたしの変化に気付いてくれた。
「メラリー。今までありがとう、私たちの為にずっと苦しかったよね。私たちは大丈夫だから、彼と新しい生活を始めて。本当にありがとう。」
目にいっぱいの涙をため、あたしの手を取り笑顔で彼の元へ送り出そうとしている。
フワフワして、怠け者で、従魔たちには傍若無人、叱ると微笑みながら逃げていく、料理上手なのに滅多に作らなくて、屋台が大好きで、やさしくて、綺麗で、いつも悲しい目をしていた、悩みが在るはずなのに絶対教えてくれない頑固者、大好きな大好きなあたしの妹。
「ごめんね。彼の事サットが調べたの。アイツ等と関係があったらメラリーに内緒で消えなきゃいけなかった。素敵な人ね。おめでとう。メラリーは私達の家族だからいつでも会いに来てね。」
カーリー様を強く強く抱きしめる。
「えへへ。でも結婚はちょっと待ってね。新しい卵を用意するまで。あと卵の念整術の先生になってね。それと今後も市場の屋台に連れて行ってね。それに・・」
カーリー様のお願いが永遠に続く、これからも必要だと伝えてくれる。
一緒には行けないけどずっと貴方の味方。
☨
明後日は兄の結婚式だ。
帝都にある学園から今帰ってきた。出迎えは、花嫁になる可愛らしい女性だった。
目の前に幸せそうに微笑んでいる、今すぐに言いたいことが沢山ある。
「突然ですが、メラリーさん。お話が「おかえり、ミネルウァ、帝都から帰ってすぐで疲れただろ、お喋りは夕食後にしたらどうだい?」
彼女の後ろから、兄が現れた。
「ごめんなさい。妹さんに会えるので浮かれてしまって、帰宅して直ぐだしお疲れですね。あとで、ゆっくりお話聞かせてください。」
「あの「父さんたちも待ってるぞ。はやく行ってあげなさい。」
彼女をエスコートして兄が足早に去っていくが、追いかけ花嫁に話しかけるが、兄が話を上手く逸らしていく。
途中、母に会って父の元に連行されてしまった。
両親に挨拶した後、花嫁を探すが見つからない。
使用人に聞いても、兄に口止めされているのか誰も答えてはくれなかった。
一度自室に戻り考えをまとめる。
兄はずっと私に婚約者の存在を隠していた。どうすれば彼女と二人きりで会えるだろうか?手段を考えていると。
部屋の扉が乱暴に開かれた。兄が眉間に深い皺を寄せ大きくはないが鋭い声を発する。
「残念だが今日はもう会えないぞ、彼女は自分の家族と過ごすからな。お前のお遊びに付き合ってる暇はない。」
「式の1週間前まで秘密とは、彼女がかなり大切なのね。私の事知ってるの?話したの?」
私を一瞥すると大きくため息を付き近くにある椅子に座る。
「いい加減お終いにしろ。妹に会わせろ。」
「ヒドイ、私は私なのに……。」
「あ--------」兄ちゃんが耳を押さえ声を出して拒否し始めたで御座る。
「ちょ「あ--------」兄「あ--------」やめ「あ--------」」
ウハwこれヤバ、マジギレだわ。でも兄弟に秘密は良くないよね。反省したかな?
多分、満足気な顔をしていたのかもしれない。顔を見た兄が立ち上がり近づいて来る。
「兄ちゃんただいま。罰だ!!さすがに1週間前はヒド、ウギャ!!!」
デコピンをくらった。
「なんでだと思う?」
「え?」
「なんで秘密になった?」
「ウッ。」
「父さんたちがお前に伝えないのはなんで?」
「ダッ。」
「さっきまでの、小芝居は何?」
「テヘ。」
「彼女はお前が変だって知ってるぞ。」
「可愛い妹なのに、なんてヒドイ紹介」
「………悪かった。さすがに1週前は普通はないな。で、1年前に知らせてたらお前なにする?正直に言ってみ。」
「学校休学する。調べる。引っ掻き回す。自白剤飲ますかな?」
「……ミネルウァ、お前は大事な俺の妹だ。でも普通じゃない。だから1週間前だ。分かったな。」
「チッ。ウゴッ!!」
もう一発のデコピンで涙目になる。
「お帰り。ものすごく逢いたかったぞ。ほらおいで。」
両手を広げ、優しい笑顔で立っている。我慢限界、兄ちゃんに飛び付き思いっきり抱きしめる。
私には滅茶苦茶甘い兄ちゃんなのだ。隠し事なんて全くなかった。どんなに迷惑をかけても最後は許してくれる。群がる女たちを片っ端から追い払っても気にもしない兄ちゃんだった。そんな兄ちゃんが大事に守った。ブラコンを卒業しないと…涙が止まらない。
「おめ・・グス・・でとう。おめで・・とう。」
「ありがと。調べても、引っ掻き回しても彼女なら大丈夫だと思う。でも大切にしたかったんだ。ごめんな。」
「…うん。ワカッタ…。」
ギュッと力を込めもっと抱きしめる。
「………薬は駄目だぞ。」
「チッ。」
「ちょ、おま…」
兄ちゃんが動く。来る!!
デコピンを躱し荷物を持ち部屋から逃げ出す。
「さらばじゃ兄者。」
「7時から晩飯だぞ。帰って来いよ。」
「承った。」
13年間生粋の兄ラブをすぐに卒業できるわけない。兄ちゃんは世界で一番私を知っている。最初に渡りに気付いたのも兄ちゃんだ。でも、詰めが甘い。本気で守りたいなら当日サプライズでないと、1週間あれば余裕で手が打てる。帝国でパワーアップしたのだよ。ハハハ。
☨
屋根裏の秘密基地で考える。
ぶっちゃけ、彼女は怪しい。秘密がある。普段の生活が覗けない。何か強力な結界で守られてる。兄の話ではメイドらしいが違うね。私の魔道具が通用しないなんてかなりヤバイ。念が絡むと駄目なら科学の力で挑戦だ。帝都で出会った魔の物からもらった盗聴器を彼女の服に付けてある。ドラゴンレ〇ダーみたいな機械を作動させ・・・。
ガッタン。
後ろで音がした。振り返ると…。
「なんで魔の物。」
………ヤバイ。分かる。コイツはアカン奴だ。ポケットから魔石を落とし結界を張る。カエルみたいな奴は動かない。でもよく見ると手には盗聴器があった。
「盗聴とは悪趣味だな。」
こいつも人語話してるじゃん。奴と一緒…じゃない。強そうだレアだな。
「どうやって手に入れた。」
うん?使った事じゃなく。入手方法か。機械の用途が分かるなら関係者…。でも関係者なんて1人しかいないじゃん。
「もしかしてレアルの息子?」
「親父を知ってる?アンタが赤ん坊の時に死んでるよ。」
「え?死んだの?だってレアルでしょ。」
「は?レアルだけど…死ん「生きてるけど。今日死んでなければ、帝都の私の部屋で酒でも飲んでるはずだけど。」
「え?生きてるの?トカゲみたいな・・「知ってる。《サンショウウオ》アンタは《カエル》、あー《両生類》繋がり?」
カエルに詳しくないけど多分今は驚愕の表情に違いない。スゴイ顔だ。
「その言葉、渡り?」
「やば。バレタ。でもなんで言葉知ってる?あっ!!もしかしてメラリー《日本》からの渡りなの?何で守ってる?もしかして従魔?あれ?でも名無しだよね?」
「名無しじゃない。」
「え?レアル今日死んだの?」
「今日じゃない。13年前から名はある。」
「「…………」」
「殺す?」
「殺さない。」
「マジで?」
「約束する。」
「「…………」」
どうしよう。
「もうすぐ7時だぞ。下りて来い。」
下から呼ばれた。
「すぐ行くー。」
カエルが後ろに下がっていく。
「結婚式の後にまた来る。」
「分かった。」
「それじゃ「まって、メラリーの事よく知ってる?どんな人?」
カエルが多分笑った。
「最高に素敵な女性だよ。離れたくなかった。でも彼女はアンタの兄さんを本気で愛してるから。俺たちは諦めたんだ引き留めるのを。」
「そう…。」
「彼女と一緒なら幸せになるよ。」
「違う……。」
「………。」
「兄ちゃんと一緒だから幸せなんだ。」
カエルは消えた。移動術か。
兄ちゃんが幸せになるなら結婚式に爆弾は仕掛けない事にした。