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アンコモン  作者: 蛙屋
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管理人

腕組みをしている二人組が顔を寄せ合い話し込んでいる。

白のワイシャツに黒のズボンをスマートに着こなし、遠目からみればメンズのファッション雑誌の一コマの様に絵になっている。ある種の人が見れば3冊は余裕のシチュエーションだった。

しかし近づけば物凄い悲壮感に包まれていた。


「この状況ヤバくないですか?」「ヤバいね。」

「上に報告は必要ですよね・・・。」「必要だね。」

「修正責任、俺ですか?自信ないです。」「自信ないよね。」

「先輩ヒドイ。ずっとオウム返しじゃないですか。他人事だと思って。」

「他人事じゃねーよ。パスの人が関わってるから担当だ。」

「この案件、パスの人関わってたんですか!?誰ですか?」「ノーコメント。」


青年の顔が青色から土色に変色していく。中年の美丈夫は溜め息を付いた後、メモにペンを走らせる。


「でも、この状況でパスの人が覚醒したらもっとヤバイじゃないですか。」

「国がひとつ滅ぶ前に上に戻りの許可取らないと駄目だな。俺のパスの人は戻り不可だから、お前が担当の無審査の戻り申請して来い、時間無いぞ。この地域は発展の牽引を担ってるから、このままにしてると200年は停滞する。死者も百万単位で発生する。」

「どうすれば?初めてです。」


さっとメモを渡す。受け取った青年はメモを一瞥すると駆けだした。


アイツも災難だ。一応手順を踏んどけば処分対象にはならないだろう。


偶然はあり得ない。

パス持ち、無審査の最高位渡り、術師の渡り、渡りの(くだん)、渡り先が歪みの楔。役満だ。渡りが4人。関係持ちそうな渡りが周りにあと5人。

確認したが渡った時期も地域もバラバラで関わる事は想定外だ。歪みの楔が起点だな。ここに関わると碌な事がない。無審査も最悪だ。地球でのロンダリングが不完全とは・・。せめて渡り先が別ならここまではならなかった。執念の成せる業だろうか。


きっと裏がある。申請は却下されるだろう。


停滞回避するにはどうする。無審査の記憶解除を早める?歪みの楔の肩入れして無審査を排除させる?歪みの楔を排除する?どれも悪手だ。成功の可能性も低い。

裏の目的はなんだ。歪みの排除の為の工作にしては大掛かりすぎる。不確定事項が多すぎだ、手が打てない。


あと1時間でアイツは泣きながら帰って来るだろう。

パスが一番真面なら俺が移転するしかない。仕事の引き継ぎ、移転の準備、上に根回し。面倒だ・・・。


パスの人は本当に厄介事に巻き込まれてる。

この世界は、文化も発展しすぎてない、紛争はごく小規模で安定して厄介事が起きにくい、記憶と能力の封印、従魔不可の魔の物、知性の継承、のんびり休養のための渡りだったのに、唯一の懸念の歪みの楔に(さが)なのか自分から巻き込まれに赴くなんて、迷惑な話だ。

前回も一般人に渡ったのに魔王になって世界征服、実際は腐敗政権の駆逐と種族格差の是正。あの世界は発展速度が2倍にUPしている。前回は浄化を望まれて結果を出してるが因りによって魔王になるなんて、犠牲も大きかった。歪みとの関係が悪化しないうちに。理不尽な仕打ちは前回と重なる、状況が小休憩のうちにどうにかしないと。

パスが望む地球に渡らせておけば・・。やっぱり駄目だ。第3次戦争の幕開けになるかも知れない。兵器が中途半端に強力だから地球が死の惑星になる。


発展の起爆剤か、破滅への片道切符。極端すぎだ。


30分も早い。血の気が完全に引いているアイツが歩いてくる。けんもほろろに追い返されたか。

考えろ、考えろ。どいつが味方で敵なのか。

死相が出ているアイツの頭を叩き喝を入れる。俺の移転を告げ、またメモを渡し準備に追いやる。


面倒だ。



無審査には関わりたくなかったのに。




彼女の執念は俺も逃しはしないのか。












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