チート
好んで読んだネット小説は頑張って内政とか、頑張って商品開発とかの話が好き。俺TUEEEEなチートは好きではなく、強いけど最強ではないぐらいが好きだった。
☨
4歳ぐらいに、川に遊びに行くってみんなとランチをした。深くない川の中を覗き込み石に付いた藻を見て鮎がいそうな川だ。串焼きにして食べたい。スイカみたいな匂いが嗅ぎたい。と妄想していると。
『『「アッ!!」』』
と、みんなが叫んだ時には、大空高く舞い上がっていた。ヤベ~。スゲ~タカ~ィ。
なんだコイツ・・?顔を上げ魔の物を見る。アー・・ガルーダ?なんで聖魔がこんな最初の村のスライム原産地みたいな場所に?でも従魔じゃないな、あいつ等は関係なさそうだ。どうしよう?サット達が魔法で攻撃すると私にも当たるし、落ちる。ルー〇は人には移動できなかったはず。もしかして結構ヤバい?従魔術・・。使いたくない。こんな大物、食事の準備が大変そうじゃん。
『術使え。かなり離れたぞ。念がヤバイ。迷子になるぞ。』
もしかして、真面目に練習しないからサット達の作戦?運が悪いと死んじゃうから違うか。それにしてもデカい3メートル。・・・・・空の散歩か。アリです。
ブチ・・ビリ
嫌な音が聞こえてきたよ。ガルーラが掴んでる上着のボタンが・・。
従魔術、従魔術、従・・魔・・従・・鎖、鎖、くさり・・く・さ・く・・り・・ダメだ!!
無理でしょ。3年ぶりだし、練習?なんですかそれ状態だし、集中出来ねーよ。・・ブチ・。ヤバい、やばいやばいやばい
『早・・・。なに・・。バカ!!!』『ち・・ゆめ・・・しょ』
途切れ途切れにサットの罵声と、ナンディーの呻き声が聞こえてくる。伝わらないかもしれないが懸命に念じる。
「ごめんね!!最後まで頑張るよ。」
どうせ死ぬなら最後まで頑張ることにしました。鎖鎖鎖鎖鎖鎖鎖
ガッサ。背中の違和感がなくなります・・・。
お、おちる?
ドスン。
「「「「「従え」」」」」
叫んだ瞬間、光が弾けた。意識が・・・。久々のかんか・・・・・く。
☨
フアフア、暖かい。気持ちいい。
『ざわ・・。起こ…ぼくが・・なんで・・っ』
ツン、ツン・・・ツン、顔を突かれる。ウ~ン。約束は・・・。休みの日ぐらい寝かせてよ。なんで休日は6時半に起きる?7時半までは起こさない約束してるのに。私が子供の時はずっと寝てたぞ。ツンツン・・ツンツン、しょうがないなぁー。
「約束~。まだ寝るよ。かーさ・・・・・ん???」
子供の手を払いのけ・・・・フサッモフ?
『『『『『ごしゅじんしゃま?だいじょうぶ?』』』』』
体を起こす。生きてる。目の前には、翼は赤く全身は黄金に輝くデカい鳥が睨んでいる。私の体の周りをサットぐらいの大きさの赤い鷲?が5羽、跳ね回る、踊ってる?
ハァ~、もしかしてガルーダの雛を従魔したのか?こんなの有り得ない。一度に5羽なんて。
「ギャ。グギャヤ。ギギギ!!」
ガルーダがなにか語り掛けてくる。分かんないけどわかる。親ならそうなるよね。
踊る雛を1羽捕まえ話しかける。
「お母さんは君たちの代わりに自分を従魔しろって言ってる?」
『ごじゅじんしゃま、すごね。ことばわかる。でも、ぼくたち、イヤーなのね。このままがイーのよ。ネ。』
『『『『 ネ!! 』』』』
「なんで?」
『スゴクちゅよくなたのよー。ネ』
『『『『 ネ!! 』』』』
5羽が並んで首を傾げる。・・・・かわいい。連れて帰りたい。でも
「お母さんに伝えてくれる?君たちの従魔術を解除するって」
『『『『『ヤーなのよー!!』』』』』
巣の中で雛たちが解除されまいと散らばっていく。ああ、4歳児にはこいつらの捕獲は無理。
「グルゥー。」
ため息を付くガルータ、状況をなんとなく察したのだろう。ガルータと視線を交わし、語り掛ける。
「少しの間、従魔するね。受け入れて。」
通じた?ガルータは頭を下げ、私の前に差し出す。
雛を心配する親鳥のために・・。鎖を・・。
心が・・物凄く、逢いたい、逢いたい、逢いたい。念が溢れ出す。念を鎖に・・悲しい気持ちが紡がれていく。
黄金?違う光る橙色だ。優しい色。光は雛からも発せられ、ひとつに纏まって親鳥を絡める。鎖が文字を浮かべた時、一段と強く光り輝いた。
『感謝する。』
一瞬倒れそうになるが、太い腕が体を支える。剛毛親父が全裸でニッコリ笑っていた。〇グリット・・。違う意味で気が遠のきそうだ。
「お父さんだった・・。」
「ピーピーキキー。」
雛たちが猛烈に多分抗議している。なんだか解除もしたみたいだ。
『主は渡りの御子かい?ワシはとんでもない餌を捕まえたみたいだ。名はバックだ。ワシの願いを受けてくれて感謝する。』
「正解、渡り。まずは擬人化を辞めて魔の物に戻ってもらえる?」
『どうした。人の方が気楽だろう?』
「そうでもないのよ。マジでお願い。」
『了解した。』
擬人化を解いたバックに寄り掛かる。
「疲れた。家に帰りたい。捕まえた所に戻してくれる?着いたら、解除するし。」
『雛の言う通り、凄い力だ。ワシは従魔で構わんぞ。』
「ちょっと、事情があって私の従魔は危険なの。バックは大丈夫そうだけど雛が心配だから、解除するよ。」
『キャレチャーか?確かに面倒だな。』
「あいつ等知ってるの?」
『魔の物はみんな知っとるよ。彼らは特別だ。でも、主はもっとすごい。ワシは一度、従魔された事があるが、主は桁違いだ。それと念が心地いい、魔の物を惑わす。願うだけで弱き物を従魔するほどに。』
「願うだけ・・・。それ本当なの?」
『間違いない。鎖はなかった。鎖の無い術など有り得ん。ただ主の願いが辺りに散った。ワシも引きずられそうになったぞ。子供なのに君は恐ろし。』
「・・・・・・。」
チート・・。なんにもしてない。ずっと愚痴ってただけなのに。
『嬉しくないのか。キャレチャーなんて問題にならんぞ。主ならもしかしたら龍でも従える事が、可能かもしれんぞ。』
「お願いがあるの。」
『なんだ言ってくれ。』
「今日の事は他言無用でお願い。解除後も守ってくれる?」
『・・・。了解した。人とは不可解だな。』
「きっとみんな心配してる。帰りたい。」
『従魔によって移動術が可能の様だ。すぐ元の場に戻れるぞ。すまんが、擬人化する。魔法が使いやすい。』
また、ハグリッ〇だ。
「雛たち、バイバイ。」
「ピ~。ピピ。」
雛たちが尻を振る。それは、あいさつなのか?
☨
「キャーーーーー!!!変態!」
元の場所にはメラニーがいた。サット達は探しているのだろう。
「大丈夫。イロイロヤバいけど、大丈夫だから、落ち着いて。」
バックはムッとする。
『なんじゃ失礼な小娘だの。・・念整師か?』
「そうだよ。なんか治療する?頼んであげるよ。」
『必要ない。主の従魔が怒っとる。さっさとオサラバしよう。』
解除だ。念じる。バットに繋がる鎖が見える。見える?あれ、なんで鎖が見えるの、そういえばさっきも、橙色の鎖が見えてた。なんで、なんでなの。
『主も念整師の素質ありじゃの。フォフォ。10年で子育ては終わる、従魔しに来てくれ。』
ハグ〇ットが尻を振る。
鎖が切れた。
背を向けるガルーダが一度尻を振り飛び立った。
「カーリー様、大丈夫ですか、心配しましたよ。エーーーン。」
メラニーが泣き始める。後ろにはサットとナンディーが大きなため息と共に現れる。
『『心配したぞ。』』
ナンディーが私を抱き上げる。
『僕の声聞こえました?いろいろ喋ったんですけど。』
「途切れて、呻き声にしか聞こえなかった。心配かけてゴメンね。」
青ざめた表情が少し緩んでいくナンディーにしがみつく。
ゴチン。「痛い!」
サットが真っ赤になって怒っている。
『普段から修行しないからこんな事になる。反省しろ。』
「ウゥ。ごめんなさい。」
『でも無事でよかった・・。』
ゴメンね。心配かけて。ごめんなさい。
秘密ができた。
分かってた、簡単だって。あいつ等なんて吹けば飛ぶゴミだって・・・。
でもこの力、使っちゃダメだ。何で、ダメなんだろう。不思議だ。体中から拒否反応だ。そのまま気持ちが見えない糸になって念を変化させる。みんなに気付かれる前に、早く速くと体が震える。
ゴメンね。これからも気が休まらない日々が続くけど、奴らは憎いけど・・・。
駄目なんだ。理屈じゃない。本能だ。
お約束なんて関係ない。最強チート・・のチープな物語の主人公に成れば、簡単なのに・・。