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アンコモン  作者: 蛙屋
14/24

少女の右手には、苦悩が刻まれた女の生首だった。

少女の赤毛は朱から絳に変化し、誰もが見とれた髪はまるで血塗れたメドゥーサの様だ。


「重い。臭い。邪魔。」


生首を足元に落し頬を踏みつける。血を含んだ髪を首筋で束ね、ブーツから抜き取った小刀で切り落とした。

少女はサッパリしたと微笑むと。生首を再び手に持つ。


「噴水みたいだった。作り物よりリアルは凄い。ねぇ、擬人化したあいつ等も切り落とせば血を噴くの?何色かな?でも箱に詰めて海に生きたまま捨てる予定だし・・・。女のリレションは何処?擬人化出来たよね。フフ、試そうよ。」


従魔は所詮魔の物。馬鹿な奴らだ、同じ過ちを繰り返す。


繰り返す。





今日もだ。出会った日から欠かさず見る悲しい夢。先も後もないこの場面が繰り返される。でも大丈夫。まだ僕だけの夢だから。夢は夢。夢は夢。夢は夢。・・・・




「飽きた。子供なのも、この世界も。なんかもういいや。あの家も崩壊中だし、こっちは放置に。へっ?従魔ってそんなに執念深いの?面倒だから、サットの魔法で屋敷ごとぶっ飛ばすのは?無理ですよねー。生き直したくなんてなかったのに・・・。この世界に貢献とか、そんな知識も無いし、義理もない。この鬱々とした気持ちはどこにぶつけるのよ!!!」


始まった。これが始まると1時間は止まらない。


俺の主は結構ヒドイ。

必要最低限しか努力しない。ナンディーを従魔してから、従魔術の訓練は全くしなくなった。本人はコツを掴んだからこれ以上は不必要だと主張してるが、かなり怪しい。

あんなに憎悪していたキャレチャー家の事は、2年間も恨みが続いたことに「本当に頭に来てたんだよ。すごくない?初めてだわ。嫌いで要るのも疲れるね。」まったくもって他人事だ。憎いから復讐ではなく、面倒なら排除に切り替わってきている。

好奇心はあるがすぐ飽きる。「知識は広く浅くが世渡り上手。」と言って、基本を押さえると放置する。

本気になれば国が興せると言えば、「晩御飯も作るのが面倒だったのに、国なんて絶対イヤ。」欲が全くない。

前世の心残りと聞けば「前の人生?すべてが適当でも最高に幸せだった。最後がちょっと酷かったけど。子供も旦那がシッカリしてるから心配だけど心配ないし。感謝こそあるけど、不満はないね。」踏ん切りがついてしまっている。


話す限りは、悩みなんて全くないのに、1週間に1回はブツブツ文句を言っている。


『人が理不尽なのか、主が理不尽なのか。』


『人は理不尽だが、彼女は優しいだけだよ。』


背後からナンディーが答える。


『俺を盗聴しないでくれる。』

『ダダ漏れの念でしたよ。文句を言ってるうちは大丈夫。同じにはならないよ。なんだかんだで、メラニーと仲良くなってるし、思考に体が追い付けば落ち着くよ。』

『最低でも4.5年は愚痴を聞かないとダメじゃないか。長いな~。』

『カーリーが本気になる方が恐ろしいね。今みたいに無駄話はできなくなる。』


そうだな。平和の証拠だな。でもそれも・・・


『実はもう無駄話はお終いだ。従魔じゃなく人が捜索してる。結構優秀、いつもの卸が見つかった。』

『それでは、サットの巣はもうダメですね。ばれたのは魔石が先か、巣が先か。』

『巣だろう。あと1年か。』

『安全第一なら半年でしょう。』

『そろそろ仲間が必要だな。』

『無理かな。彼女はやさし・』


下の階から叫び声が聞こえた。覚えたばかりの言葉で喚いている。


「遅いんらろ。朝こはんはメラニーとイチバーに肉を食べに行くにー。早くしろや!カエルと人面牛。」


ナンディーが笑い出す。


『優しいね…。俺ら以外には。』

『彼女は心配いらないだろ。ハハ。』




まだ、プロローグだ。


永遠にプロローグで終わればいい。


でも逢いたい。


血塗れの少女は恐ろしいほどに美しい。総てを虜にする、冷たい微笑み。


夢の続きが見てみたい。あの少女の傍らに寄り添ってみたい。


夢を告げれば、物語は動きだし少女は僕の前に夢ではなく現れるだろう。


わかってる・・彼女は望んでいない。あの夢の少女を。


愛しい少女は、夢のまま・・


夢は夢。夢は夢。




僕はいつまで我慢できるだろうか。












朱は少し黄みを帯びた赤色を表します。絳は濃い赤色、深紅色を表します。

両方読みはアカです。

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