自己紹介
『彼女は自力での従魔術は初めてで、失敗の可能性はあるし、キャレチャー家で、渡りだから擬人化の確率は高いけど、絶対ではない、それでもいいかな?』
カエルが、件に確認する。
《問題ないよ。よろしく頼みます。》
件は、私にも分かるように日本語で答える。まさか件が渡りで日本人とはまさに渡りに船。それにしても、ここまで来るのは長い道のりだった。
☨
カエルとあの場から逃げた後、重大な問題が発生した・・・。
魔法でカエルのねぐらに移動した。ルー〇だ、まさに〇ーラだ。大興奮の私はカエルに是非ルー〇を教えてくれっといったら、『ルー〇?今の移動術の事なら、人に魔法は使えない。人の術でも移動系はないはず。』と、夢も希望もない返答に、私が凹んでいると近くの木に寄り掛かる様にお座りさせた。
おっ、お座りできる、6、7か月だもんな。普通じゃなかったからなと、またまた頭に来てると『おい、これからの計画考えよう。まずは自己紹介だな』
カエルの方を見ると、目線のちょっと上の方にブラブラしたブツがあった・・・。な、重大だろ。
おいマッパだよ。前ぐらい隠せよ。カエルはマッパに違和感ないのか?それにしても見た目、15,6だろ。立派じゃない?家の10歳はまだウインナーだったよ、平常でそれなら・・。ヤバくない!?・・・旦那より・・・hはっ、何を考えてるんだ、ゲスイ、ゲスイぞ私。
頭を抱え倒れこみ、ジタバタ暴れる私に『ど、どうした。大丈夫か?』カエルが焦っている。
「ごめん。悪いけど目の前に股間が・・・。スゲー気になるからどうにかして。お願い・・・。」
『えっ?おお、本当だ。生殖器がぶら下がっている。俺はオスだったんだ。手で隠すのも面倒だな、服なんて無いし・・・。擬人化解くわ。・・・・これでどうよ。』
カエルがカエルになった。
「あ、ありがとう。そ、それでは、自己紹介だよね。えーっと・・・・。」
あれ?私、名前なんだっけ?家族の名前は憶えてるけど、自分の名前が・・・。あれ?
「私って、名前なに?」
『名か・・?知らない、聞いてないな。ずっと、渡りの御子って呼ばれてたぞ。』
「その、渡りの御子って何よ?あの状況で、何にも分かってないよ。まず、カエルが説明してよ。」
カエルが腕を組んでウロチョロし始める。
『カエルってなんだよ。俺はサットだって。説明・・説明か・・。渡りの御子・・・は、魔の物にとって特別な従魔術師だ。最初の者は、巨大な力を得る可能性があった。多分、渡りの御子の従魔は通常の従魔より強いだろうし、お前はキャレチャー家の次期当主だから尚更将来有望だったはず。』
「キャレチャー家の次期当主・・。キャレチャー家はすごいの?従魔の名門?従魔を詳しく教えなさいよ。」
カエルは私の質問に答えていく。サット(カエルっと言ったら怒られた)の生い立ち、従魔について、念と魔法について、魔の物について。
「面倒な所に・・。あらためて自己紹介を私は前世の記憶がある、この世界とは違う所、地球の日本からの転生、人間の女で子供も3人いた。年齢は・・若くはない。科学、技術が発展していて、魔の物、魔法、術とかは、なかった。物語の中には、登場してたから、一応理解はできる。あの従魔の中には見た事がある姿の動物がいた。あと名前は覚えてないのよ。前のサットと一緒で、今は名無しだわ。呼び名が無いと不便だね・・・。こっちでよくある、女の人の名前は?」
『俺そんなに町とか行ってないからなぁ・・。』
「あんた、知識はマックスレアとか言ったけど、渡りの御子とかの事も、いろいろ微妙な知識じゃない?」
『何だよ。俺は人語が理解できるし、喋れるし。文字だって読めるぞ。それってものすごい事なんだぜ。あんたのリレションになったから、魔法の威力が半端なく上がってるし。』
「確かにルー〇はすごいよね。」
『なんで移動術にこだわる?とりあえず、町のギルドの資料を見に行こう。使える魔法が増えてるか確認したいし、調べたい事もある・「ギルド、やっぱ冒険ギルドとかあるの。どんなギルドがあるの?!」
『なんで、そんなにテンションが上がる?従魔術のギルドだよ。冒険のギルドはないよ。前の所には在ったのか?』
「ない」『ないのかよ!』
「カエルの姿は、手配されてるかもよ。」『ずっと疑問なんだけど、カエルってなに?』
「こっちはカエル居ないの?サットみたいな姿で、もっと小さい緑色の生物の名称がカエル。」
『強い?』「毒がある種類もいるけど強くはないよ。」
『マジ、カエルは止めて。なんかヤダ。』「善処します。」
『擬人化するか・・。服がいるな。金も必要か・・。』
「サットがギルドに居る時私どうするの?」
『あんたが入るぐらいの籠もか、腹減ったか?』
「お腹は・・・。聞かれたら、減ってきた。」
『まず、トトロの実を採ってくる。』
「トトロ・・・たまごアイスの事かな」
『アイス?トトロは冷たくないだろう、玉子みたいではあるな。』
「サットと私、何語で会話してるの?日本語じゃないよね。」
『念は思考の交換だから、上手い具合に頭で変換されるらしい。魔の物は従魔されるまで、難しい事とか考えれない。従魔されると頭の中がすっきりするらしい。俺はマックスレアだから特別だった。初めからすっきり。とりあえず、俺の寝床で待っててよ。』
「了解です。」
サットは巨木のリスの巣穴みたいな所に私を押し込んだ。
『もうちょっとデカかったら無理だったな。トトロの後に、服やオムツ調達してくる。落ちるなよ。死ぬぞ。』
「いってらっしゃい。」
巣穴は意外に広い2畳ぐらいは有りそう。しかし。コミュニケーションがとれるって素晴らしい。あそこは本当に、地獄だった。あそこの生活についてはまだ詳しく聞く気分になれない・・・・。考えるのは止めよう。今はゆっくり疲れを癒そう。寝る子は育つしね。
わりと早くトトロの実を届けると、サットは袋を掴むと擬人化しマッパでまた出て行った。私はトトロの実を飲みいつの間にか寝ていた。目が覚めると巣穴は物で一杯になっていた。オムツも変えられていた・・。ちょっと恥ずかしい。
『よく寝たな。丸一日たったぞ。』
「すごいね荷物。お金とかどうしたの?」
『最初に服は近くの民家から借りた。で、趣味で集めた魔石を知ってる一番遠い町まで移動術で行って売った。かなりの値になった。それにしてもあんたのリレションはすごい。前に移動した時は5日は必要だったけど、試しに移動したら一回の術で移動できるとは、さすがにビックリした。ギルドで確認したが魔法も増えてる。練習しないと。』
「ばれなかった?」
『さすがに、あの街まで当日に移動は想定外だろう。あっちには星の語りが居るから油断はできないけどね。』
「星の語り?占い師みたいな?」『そんな感じかな。』
「これからどうする?私も手伝いたいけど、この体だと・・。サットにお任せでお願いしたいんだけど。大丈夫?」
『心配いらない。あんたのおかげで俺は強くなった。』
カエルがドヤ顔である。
『大まかな予定は、まずはあんたに従魔術の練習してもらう。従魔術の関係本も買ってきた。出来たら。安全な場所に移動する。新しい従魔を一体契約してもらう。これからは半日毎に場所の移動をする。荷物はここに置いていく、術ですぐ来れるからな。空き家を数件目星をつけてる。早速行こう。』
巣穴から出ると擬人化し、穴から服を取出し近くの枝で着替えている、手がニョキと私を掴むと脇に抱きまたルー〇で、移動した。移動した場所には、私の身の回りの物、トトロ、数冊の本が置いてあった。
『本を読んでいくから聞いてくれ。』
そしてカエルと私の修行が始まった。
知らない言葉がある度に質問に次ぐ質問、3年ぐらい期間が必要かと悲観したが、キャレチャー家の血か、渡りの御子だからか、ただ単に私がすごいのか、10日で鎖を練れる様になった。さすがにサットも早すぎると驚いていた。そのあとサットが見た鎖に近づける訓練を5日間。私には、鎖も念も全く見えないイメージのみで頑張った。私頑張ったよ。宝くじが当たったらとか、リアルによく考えてたのが良かったのか?あの悪夢の半年で妄想が捗った成果か・・・・。とりあえず、従魔術は何とかなりそうだ。
「従魔術は大丈夫そうだけど、従魔する魔の物って何よ。この図鑑に載ってる?」本を指差す。『載ってない。』
全く関係ないが、本について驚いたことがある、前の世界と同じレベルの本である。紙が少しざらつく事とカラー印刷や写真はないけどあとは全く同じみたいだ。それにこちらの世界は意外に生活水準が高い。欧州の古い街並みだが町は薄汚れていない、下水が整っているようだし、水道もある。電気、ガスはなかった。多分、従魔術師の渡りは少ないけど、渡り自体は偶に現れるらしい。渡りは強い念を使って珍しい魔道具を製作したり、いろんな技術を伝えるそうだ。前世とかの記述はなかったが、渡りって転生者の事だ、間違いない。
『件と言う、厄災の魔の物だ。奴が現れる所には混乱が生じると云われている。お前の儀式の時も屋敷の外に居た、なぜ居たか、本気で従魔を望んでいるからだ。件は忌み嫌われているから長距離移動なんてしない、殺される可能性が高いからな。あいつには軍が動くぞ。なぜ殺されなかったか?あの時のキャレチャー家の儀式は特別だったから普段は狩られる魔の物達も森を抜け街外れの屋敷まで現れても大丈夫だった。件でさえ、見逃すほどキャレチャー家の力は強い。』
凄い奴だな・・・。大丈夫か?
『件は魔の物からも避けられてるから、隠れるなら最高の場所だ。キャレチャー家と争うなら、厄災も味方に就けるべきだ。星の語りも多分奴は視れん。穢れを嫌うからな。』
「居場所は?」
『知ってる。自然豊かで、魔の物も居ない。昨日あんたが寝てる間に確認してきた。』
なんかドキドキするな。どんな魔の物だ?
移動術で件の前に突然現れると、男前の顔が驚きに染まる。が、体が茶色い牛だった。人面牛だ。
『件さん、従魔になりませんか?』
カエルが語り掛けると、件は泣いた。
『もちろんだってさ。』カエルが私に伝える。
件は堰を切ったようにカエルに思いを伝え始める。
☨
さあ、修業の成果をカエルに見せつけてやるぞ、目を閉じ想像する。
輝き太く絡み合った鎖を昇れ舞え、鎖には見た事もない文字が浮かぶ・・・。
鎖に思いを乗せどうか私の従魔にどうか・・。
あ・・・・
か、絡めた。
『ありがとう・・』
件の念が聞こえた。