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スレナス物語(アンスロポスシリーズ)  作者: 緒方 敬
第01章 転生
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転生-6

●持ち越せたもの

 立って歩ける。ちゃんと話せる。

 長かった。本当に長かった。僕の身体は3歳を過ぎた。


 子守のルリももう8歳。読み書きも計算もかなりなものだ。礼儀作法やダンスも好きで、

 その振る舞いに、生まれながらの貴族のような気品がある。

 乳兄弟のレオニールも6歳になり、改めて学問を始めた。但し、レオニールは学問よりも

 身体の鍛錬の方が性に適っており、かけっこや木登り、乗馬や剣の練習に夢中だった。


 僕はと言えば、歩けるようになってからは毎日の様に舘の周囲を歩き。

 石を投げ、手頃な木の棒を振っている。そしてくすねた釘を手裏剣にして遊んだ。

 忍者を題材にした昭和のマンガせいで、手裏剣と言えば星型を思い浮かべるのが当たり前。

 しかし、本来はこう言う釘のような物を打つ。

 的まで1/4回転させるように打つのだが、距離に合わせて打ち方を調整しないとだめだ。

 普通に投げたら絶対に刺さる事は無い。試みると、狙った中心を外し、刺さりが浅くとも、

 違う間合いで放った釘は全て的に刺さった。

(前世では、10m以内百発百中だったのにな。刺さるだけマシな方か)


 もう一度、状況を整理してみよう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・こちらで使えるかどうかは判らないが、前世の知識は持ち越せた。

 数学は絶対に役に立つ。前世の世界史・日本史・中国史の教訓は、それなりに役に立つはず。

 だが科学法則・物理法則は同じとは限らない。


・ファンタジー世界と言えば、魔法があるのが定番だが、僕はまだ魔法が使われているのを

 見たことが無い。


・なぜか知ら無いが、生まれた時からこちらの言葉が理解できた。

 胎児の段階で理解できるようになっていたようだ。


・しかし身体は別の物。あれだけ熱心に打ち込んだ技の殆どが最初からやり直し。

 起きている時に失敗は無いが、まだおねしょをしてしまう身体なのは確かだ。

 剣道も居合いも手裏剣も。それどころか水泳も駄目だろう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 棒を手に取り構えてみる。剣先を読まれぬように振るわせる。

 現代剣道のスタンダードとなったとある流派の構えだ。


 今日も北の大地の運河の残る港町に伝わる剣の道統。

 NHKの『おーい竜馬』に嵌った僕が、ナップセルを背負う前から通った道場。

 そう言えば、こちらの星座はどうなっているのだろう?

 北斗七星はあるのだろうか? 夜は寝ているから確認していない。

 考えが妙な感じに逸れてしまったが、打ち込み稽古や掛かり稽古で、平気で足を払う先輩も、

 豆を敷き詰めてやる練習も懐かしい。

(所詮我流でしか無いが、こいつで打ち込みの力が…着くといいな)

 野球でタイヤをバットで打つように、

「きえぇぇぇぇぇ!」

 奇声を上げて棒切れで滅茶苦茶に木を叩いてみた。直ぐに肉刺のできる軟な掌。

「こりゃ無理しないようにしないとな」

 いずれにしても身体は完璧に発展途上。思うままに動かないのが現実だ。

 今は手裏剣術の方が役立つだろう。打ち込みは程々にして切り替える。

 ふと視線を感じて、そちらを見ずに様子を伺うと、樹の陰にルリが居た。


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