表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スレナス物語(アンスロポスシリーズ)  作者: 緒方 敬
第08章 プリンス&プリンセス
56/102

プリンス&プリンセス-2

●召集

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 命令


 王家勅隷部隊青銅士にしてミラの代官

 ルーケイ辺境伯継嗣スレナス・バルディエ・ド・ルーケイに対する召集命令。


 本日夕の鐘までに、王宮果樹園内バルディエ本宅にて待機すべし。


 王国宰相アルマン・ジャン・デュ・ブシュケ。


 命令終わり。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 内々に、宰相閣下からのお召しが僕に下ったのは、冒険者ギルドに着いて間も無くだった。アベルとデートさせる為にジャンヌお姉さまを連れてやって来た僕に、王宮からの書状が届いたのだ。

 丁度入れ違いになったようで、使者殿は貴族街の別宅経由で参られた。

「母上の在所に参れと言うのは、内々のお召しだな?」

 同封の免状には本日の日付が書かれ、母子の面会差し許すとある。

「は。表向きは母子の面会を口実にします」

 僕は一呼吸考え、

「舘へ参るに、供を連れて良いか? 武器を持たぬ女の子だ。無論同席はさせぬ」

「如何なる仕儀で」

「僕の母上に対する護りだ。さもなくば、母上も同席するだろう」

 王家勅隷部隊青銅士。即ち冒険者ギルドブロンズライセンスの資格で僕を召集する以上、バルディエの家は直接には関係しない。この場合母は部外者と言うことになる。そして母の在所へ参るからには、僕の着せ替え人形と幼児扱いは必至。つまり連れて行く供は、母上に対する自分の身代わりである。

 そう説明すると、

「そう言えば、スレナス殿はまだ5歳でありましたな。確かに御母堂の列席は拙い。そう言うお話であれば、我が一存にて承諾仕ります」

 納得した使者殿より、快い返事が返って来た。


 この後、グース家に赴いた僕は予定を早々と切り上げる。

「宰相様の名で、王宮よりお召しの書状が参りました。夕刻までに準備を整えねばなりませぬ」

 僕が理由を話すと、奥方は我が事の様に喜んで、

「機会を逃しては為りませぬ。急ぎお行きなさい。バルディアならば王太子殿下の侍女も勤まりましょう。当家の嫁に出来ぬのは残念ですが、お家の大事には代えられませぬ」

 と、例によって少し勘違いが入っていた。何にしても、やっとややこしい事態は解決しそうだ。

 ジャンヌお姉さまの憧れを利用する事になるけれど、アベルが好いてくれれば軟着陸。レイさんの作戦通り、徐々にアベルの心に棲む人を、バルディアからジャンヌお姉さまへ変えて行こう。

 少なくとも、ジャンヌお姉さまはアベル、と言うか物語の王子様に憧れを抱いている。そしてアベルはアベルで、口数少ない内気な姫を心憎く思っている。好きの続きが恋になることが在ってもいいじゃないか。

(うん。我ながら悪党だ)

 僕は心の中でほくそえんだ。

「ケティ!」

 奥様は、鈴を鳴らし侍女を呼ぶと、

「先日用意したドレスを持って来なさい」

 そのまま着せ替え人形モードに入りそうになった所を、

「いえ。王宮より一切合財が、届けられております。宰相様のご好意を無駄にする訳には…」

 なんとか凌いでグース家を後にした。

 唯一の計算違いは、帰りの馬車に転がるチェスト1つ。何着ものドレスを押し付けられたことであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ