チャンピオン-6
●アレクシアスの仲間
ルブリン掃討戦・ドナレア侵攻・蛮族侵攻阻止…。
せがむままに語ってくれるフェザント家の勲は、良い意味での貴族の家の伝統を
感じさせる。
それは丁度、マルボロー伯の勲を土台として成立したチャーチルの働きの如きもの。
伝統の重みは彼の血に確りと息づいている。
「おっと。流石に話し込み過ぎてしまったな。スレナス。送って行くか?」
気が付けばもう夕方。僕の隣で、ルリも拳を握り締め聞き入っていた。
「折角ですから、お言葉に甘えます」
僕の返事を聞くや否や、
「そーら」
ひょいとルリを担ぎ上げ、左の肩に座らせた。
「え? いいの?」
ルリの目は恋する乙女の様に潤んでいる。
アレクシアスはそのまま彼女を左手で支えつつ、僕に伸ばした利き腕を預けた。
途中、冒険者ギルドの横を通った時、
「…アレクシアスさん。…また厄介事に巻き込まれたんですか~?」
建物から出て来た、赤い瞳で長身の金髪の女の子が間延びした感じで話し掛けて来た。
「ヒール。そういつも巻き込まれては居ないぞ。それより、この子の傷、直せるか?」
「ちょっと見せてください?」
ヒールと呼ばれた女の子は、ハンカチを解いて傷を改める。
「…あ、この程度でしたら直せますよ~」
ぶつぶつと呪文を唱え、掌を傷口に当てた。
もう殆ど痛みは引いては居たが、じんじんしていたのがまるっきり消え失せた。
「は~い。…これで大丈夫ですよ。ぼく、いったいどんな、おイタをしたのかしら」
「ヒール。からかうな。女の子を庇ったナイト様の名誉の負傷だ。
しかも警邏隊長のクレマンを、剣を抜くほど動転させた器量だぞ」
「あらまあ。そうでしたか。アレクシアスの推薦なら、直ぐ登録されるわよ。
小さなナイト様。ヒール・アンドンと申します。宜しくね」
「登録?」
僕が問い返すと、アレクシアスは、
「ヒールは冒険者ギルドにスカウトして来たのかと思ったようだ」
と僕に説明し、ヒールには
「器量的に登録する資格はあるが、今日はたまたま通っただけだぞ」
と答えた。
その時後から、
「アレクシアスさん。その子は?」
司祭の服を着た豊満な女性。
「ねー。その子。新しいメンバーなのかな?」
そしてシュートボゥを持った小柄な女の子。
いちどにどっと話しかけられてたアレクシアスは、
「シャルロッテ、ガレット。この子達は送って行く途中だ」
と答えるが、
「ふーん只者じゃない匂いがするよ。この子」
ガレットと呼ばれた子が僕の顔を覗きこむ。背は、今の僕と同じくらいだ。
「あたし、ガレット・ヴィルルノワ。弓の使い手よ。あなたは?」
自己紹介して、僕の名前を聞いて来る。
「僕はスレナス。そこの女の子はルリです」
僕が名乗ったので司祭の服を着た豊満な女性も
「私はシャルロッテ・ブルームハルト。アンデット研究家で、学者を遣っています」
と名乗りを上げた。
アレクシアスは冒険者ギルドでも、かなり名の知られた人物らしい。
そして、いつの間にか、
「あたし、スレナスさんのいいとこ見て見たい」
ガレットの音頭で、僕の腕前を披露する事になっていた。なぜだ?




