表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スレナス物語(アンスロポスシリーズ)  作者: 緒方 敬
第03章 チャンピオン
14/102

チャンピオン-1

●王都の屋敷

 馬車は王都の屋敷に着いた。お袋を人質に預けてあるルーケイ伯の屋敷は、閑散としている。

 これは王家と親父の政治的妥協の結果であった。


 王家から見て親父はノルマン有数の精兵を養い、戦場の武勲数知れぬ油断の出来ない人物。

 いくら忠誠を誓ったとは言え、手綱を放せば国家の安危に関わる実力者。

 謀反でも企まれたら王家とて危ういし、かと言って迂闊に力を削ぐわけにも行かぬ家だ。

 何せ封土は油断ならぬゴグの抑え。国家防衛が疎かにされたら、本末転倒も良い所。

 ゴグがルーケイを抜いたら、平原の多いノルマンは、一望千里の草刈場となってしまう。


 こうして親父の首根っこを押さえて置きたい王家と、経費を抑えたい親父の利害が一致、

 王城の敷地の中に小さいながらも建てられた本屋敷にお袋を住まわせ、

 王都の屋敷は別宅として親父達が王都に居らぬ時は無人となる。と言う形で収まりを見た。


「わしはこれからお前の母と会って来る。済まぬな、わしだけ会って来て」

 親父は滅多に見せぬデレ顔で僕の頭を撫でた。

 願いを領地に使う事になったので、僕にはお袋との面会許可は下りなかった。


●お出かけします

「わしが留守の間、王都を見物して来るがいい。但し、橋を渡って島の外に出てはならんぞ。

 島の中は警邏隊が巡回して厳しく取り締まって居るが、橋の向こうは人攫いも出る場所だ」

 王都と言っても場所によって治安の差が信じられないほどある見たい。

 スレナスのパパは、私を膝に載せたまま言い聞かせる様に言った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ルリや。お前も決して橋を渡るなよ。人攫いに捕まって売られるぞ。


 お前は今でも奴隷だが、奴隷の扱いは主人によって違う。

 毒見の危険を除けば、服も食べ物もベッドも、お前の扱いは下手な貴族の令嬢以上だ。

 思い出せルリ。今までわしやスリナスの乳母に、一度でも鞭打たれた事があったか?

 万一人攫いにかどわかされる事でもあれば、酷い目に遭うのはお前だぞ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 確かに私は良くして貰っている。

 鞭で打たれたことなんて、お勉強のしくじり以外一度も覚えが無い。

 本当なら、スレナスの分も代わりに打たれる役目なんだけど、

 スレナスは信じられないくらい優秀な子だ。だから打たれるのは全部自分の分。

 それに私、いつもスレナスを呼び捨てしてるから、ご主人様と言うよりは弟になってる。

 そう言えば、スレナスのおやつって私が殆ど食べていたなぁ。


「はいパパ。ルリ気をつけます」

 私は素直に返事をする。

 スレナスのパパから、普段はパパと呼ぶように言われてるし。

 パパのお膝に乗るのが苦手なスレナスの代わりに、こうして抱っこして貰ってるし。

 うん。私すっかり自分が奴隷だってこと忘れてたよ。

 お出かけに際し、首輪は着けたままだけど鎖は外してくれた。


「ルリ。置いてくよ~」

 スレナスは早々と謁見の参廷服を普段着に着替えて、いつでもお散歩OK。

 いつもの腕抜きを着けた他に、目立つのは腰の短めのサーベル。

 切りつける事を主体とするスレナスの剣術にあわせた物だ。

「待って~。スレナス、置いてっちゃや~!」

 すばしっこいご主人様を私は追い掛けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ