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始まりは説教です


リザンカ:始まります……グズ。







始まりは説教です♪




ケルベロス・リザンカ。

彼女は今、頭にタンコブを浮かばせながら正座していた。


あの薄暗い地獄とは違う、どこかの豪邸。豪華な赤い絨毯。



そして、目の前には全長二メートルほどの巨人男。

黒のアゴヒゲを伸ばした、どこかの王族かをイメージしたような衣装を着た。

閻魔大王である。


「リザンカ、私が言いたいことはわかるな?」

「………わかりますよ。ゲンコツを貰いましたから」

「それは貴殿が悪いからだ」

「悪い、って。だからっていって異次元からゲンコツを食らわせなくていいじゃないですか!」


頭部のタンコブ。

地獄で人間たちを追いかけ回していた彼女の頭上に異次元の空間が現れ、そこから巨大なゲンコツを貰ったのだ。


「はぁー、貴殿も落ち着きというものを学ぶ必要がある」

「要らないです。私は大人ですから」

「貴殿。…地獄の人間確認書、ハンコ押しを三倍にしてあげよう」

「ごめんなさい。…………私が全て悪かったです」


フカフカと頭を下げるリザンカ。

閻魔は呆れた表情で息を吐き、自身の爪ほどの大きさである一枚の紙をリザンカの真上に落とした。


「ん? 何ですか、これ」


リザンカは頭上に浮く紙を掴み上げ、字が書かれた表面に目を通す。


「えー、貴殿、ケルベロス・リザンカ。今日から一週間、人間たちと共に地獄発注の『恵みの種落とし』を共同で行うことを……命令します、って、ええええええええええええええええ!?」


愕然と目を見開き、顔をひきつらせるリザンカ。

恵みの種落とし。


それは天界から地上に向かって生命の源を落とす作業であり、生命の源は植物や海を無くさせないために必要不可欠な物である。

しかも、その量が半端なく。

一週間で終わるか!! とツッコミたいほどの物であり、だからこそリザンカは声を上げる。


「閻魔!! 私を殺す気かー!!」

「礼儀を通りすぎてるぞ、貴殿」

「私は他に報告書とか確認書とか地獄レベルの調整とかあるのに、酷すぎるわよ!!」

「貴殿。仕方がないのだ、これは」

「ウソつき!! この前、鬼のアンちゃんが鬼美女つれて遊びに行ってる閻魔を見たって言ってたもん!!」

「見間違いだ」

「シラ切りやがった!!」


リザンカは涙目で睨みつけ、それに対し閻魔は視線をそらす。

しかも、


「き、貴殿の働きは十分理解している。だが、これも仕事なのだ」

「遊んでたクセに!!」

「天界に住む皆も、しっかりと働いている」

「一杯、御飯とか食べてたクセに!!」

「…………………まぁ、貴殿にもいづれ分かる」

「鬼美女に鼻の下伸ばしてクセ」


直後。

パチン、と音と共にリザンカの足元にあった床が丸い円をくり貫いたように消える。


「…………え」


リザンカは目を点にさせ、閻魔に再び支線を向ける。


「…………………貴殿、頑張るように」

「っなぁ!?」


何かを叫ぼうとした。

だが、それよりも速くリザンカの体は穴に落ちた。



「恨んでやるううううううううううううううううううぅぅぅ…………!!」




落ちる先は地獄風呂。


リザンカの怒号とも悲鳴ともとれる叫びが地獄に響き渡る事となる。






リザンカ:閻魔、後で絶対に後悔させてやる!!





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