状臥上体そらしの片思い
前作『踏み台昇降の片思い』を先に読んだ方がわかりやすいです。
※状臥上体そらしとは、うつ伏せに寝た状態で両足を別の人に押さえてもらって、両手を後ろで組んで、上体を限界までグイッとそらす動き。
上半身の反り返りでいかに顎の部分が上に上がるか、床から顎までの距離をメジャーで測定する。
「また、反復横跳びで、前のクラスがふざけやがって、時間がかかったじゃないか」
「時間おしてるよな。他のクラス終わってる奴らもいるのに、俺ら上体反らしも、立位体前屈もやってないぞ」
「ふざけるなよ、前のクラス」
後残り2種目。
体育館の壇上で行われる、上体反らしも、立位体前屈も長蛇の列。
「おい、お前達、体力測定が終わった奴に手伝ってもらって、もう一台ずつ、上体反らしと、立位体前屈の測定器具を設置したぞ、そっちにも並べ」
顧問の先生から、指示が飛ぶ。
俺達のクラスは、新しく設置した上体反らしの方に並んだ。
新たに設置した上体反らしは、体力測定が早く終わった男子達が手伝って、測定者の足を押さえたり、メジャーで測ったりしていたが、手伝っていた男子達が、片付けに呼ばれた離れた。
代わりに手伝いに入ったのが咲のクラスの女子達。
ザワザワザワ。
「・・・おい、女子だぞ」
「マジで、女子が俺の足を押さえるのか」
「足臭くないか」
「ジューズを鼻に近づけるな、やめろ、臭い」
「ヤバい、俺のシューズめっちゃ汚い」
「茶色じゃん、洗濯しろよ~」
同じクラスの男子が、ざわついている。
「・・・・・。」
「おい、足を押さえてるの咲ちゃんじゃね」
友達が俺の脇腹をつつくが、俺はそれどころじゃない。
咲が他の男の足を押さえるのは腹立たしいし、心配だが・・・。
それより、咲に俺の足を押さえてもらえるのか!という喜びが強い。
俺は自分の足元を見た。→シューズは汚くはない。
シューズを嗅いでみた。→臭くはない。
自分の足首を見た。 →毛もくじゃらじゃない。
全身をチャックした。 →よし、汚れもないし不快では無いはず。
俺はドキドキしながら順番を待った。
とうとう俺の番。
咲は、俺に軽く会釈すると、足を押さえる係のもう一人の女子とこそこそ話。
俺は、上体反らし測定器の前にうつぶせに伏せた。
咲の小さくて少し冷たい手が、俺の足首を掴んだ。
「先生が、”はい始め"って言ったら、上体反らしを開始するように」
記録の先生から説明があったが、俺は、俺の足を握る咲の手に集中。
手小さいな~、柔らかいな~。
握っているのか握ってないのかわからないほど、非力だよな~。やっぱ女の子だよな~。
足首に触られた時は、少し冷たかった手が、熱を持ったように温かくなっていく。
咲の体温だ~。
「はい始め」
記録の先生から声がかかった。咲の手に集中していた俺は、聞いてなかった。
「おーい、おーい、前田くん。聞いてるか。始めて良いぞ」
記録の先生から肩を叩かれ我に返った。
急いで上体反らし。
決して足首に力を入れないように、咲の手を跳ね飛ばさないように細心の注意をはらって。
無事に測定終了し、咲が怪我してないか、嫌がられてないか気になって、咲の方を振り返った。
咲は、頬を少し赤く染めて、俺を見て、はにかんだ。
何ともなさそう、よかった。可愛い。
◇◇◇
私のクラスは、先生に呼ばれて、上体反らしの測定の手伝いには入った。
順番を誘導する係が2人。
測定者の両足を押さえる係が2人。
メシャーで床から顎までの距離を測る係が2人。
私は、足を押さえる係になった。
隣のクラスの男子達は、順番が来ると「おう」とか「はい」しか言わない。
皆、黙々と測定していく。
前田君が並んでいるのは知ってた。
前田君に触れれる事に、ドキドキ期待している自分がいる。
前田君の番。
前田君と目があった。
軽く会釈。
私はなんだか後ろめたくて、一緒に足を押さえる女子に用事もないのに話しかけた。
前田君は無言で、うつ伏せになり測定準備。
自分の手の汗を体操服で拭いて、前田君の足首を押さえる。
思ったより細くて、硬い。
足首からスッと長い脚が伸び、小さいお尻、広い背中、後頭部を見る。
思ったより長いし大きいんだ。
先生の説明の後、「はい始め」の号令がかかったが、前田君は動かない。
どうしたんだろ?
しびれを切らした先生から「おーい、おーい、前田くん。聞いてるか。始めて良いぞ」と肩を叩かれている。
次の瞬間、前田くんの大腿と小さなお尻にキュッと力が入り、勢いよく上体反らし。
測定されるまで、少しそのまま上体キープ。
私の目は、キュッと力が入っているお尻にくぎ付け。
もともと小さいお尻が、もっとコンパクトになり、ちょっとプルプルしている。
なんだか、かわいい。
測定が終わり、前田君が勢いよく私の方を振り返った。
なんだか、恥ずかしくて、いたたまれない私は、曖昧に微笑んだ。
おしまい
これにて、体力測定シリーズは終了です。
お付き合い下さりありがとうございました。




