第4話 勘違い
休日。
俺は夜中からアキラさん家に避難してた。
監視カメラ見たら、円居さんは朝から俺の部屋を監視してた。
「あれで、ショウくんのお家に行ったの!とか言うんだからなぁ。どんな頭してんだろう、ホント」
うんざりしながらメモを纏めてたら
「自分に都合が良いように、作り直してんだよ。
ただの挨拶は『私にだけ目を見て言ってくれた!』
社交辞令の大丈夫?が『私を心配してくれた!きっと私が好きなんだわ!』てな具合にな?」
そう言いながらアキラさんがココアを持ってきてくれた。
「…経験談、ですか?」
「いや、あの女を調べてて分かった事。まあ、ストーカーになるヤツの大半はこうゆう的外れな勘違いが多いけどな」
ズズッとコーヒーを啜りながらパソコンを弄るアキラさんに、意を決して口を開いた。
「…あ、の!…アキラさんの妹さんの事、聞いてもいい?」
「ん?ああ。…妹、イチカっうんだけどな。コレがすっげぇ!別嬪さんでなぁ?帰り遅いと俺や親父が送り迎えしてたくらいなんだわ。」
コトリと置かれたカップの音がやけに響いた。
「最初は無言電話だった。
次にラブレター攻撃。
イチカの好みを網羅した大量のプレゼント攻撃。
その中に盗聴器やら発信機やらが仕込まれてて、付け回されるようになった。
んなもんだからイチカは参っちまってさ。
警察に相談したけどなかなかで、もう引っ越そうってなったのよ。…そしたら、『こんなに愛してる俺から逃げるのか!逃げるなんて許さない』って逆上したストーカーに刺されちまった。
取り押さえた俺も切られたけどな?」
そう言ってめくった袖の下には赤い線が残ってた。
「警察は当てになんねぇんだって身に染みたわー。
あんだけ直談判行ったのに『パトロール増やします』だけだぜ?足りねーっの!…なんでイチカが死ななきゃならねぇ?…死因が『好かれたから』なんてクソだろ!」
ガンッと拳がテーブルに打ち付けられ、カップのコーヒーが踊る。
「…まあ、そんな事があってから、俺は色々勉強して、付き纏い専門の探偵みたいな事もしてる訳。」
「…機材の揃い方が本格的だったのはそのせいなんだ。」
「そーゆーこと。満足した?」
「…うん。ありがとう、話してくれて…ヤな事なのに…」
「もう10年以上経つ。多少の整理はついてるよ」
「ソレでも!…傷は消えない!痛かったのは事実で!辛かったあの日のアキラさんを蔑ろにしないでっ…」
「…お前はホント優しい、いい子だねぇ。」
「イチカさんもそうだった?」
「…。いんや、あいつはワガママなお姫様だった。兄貴を家来だと思ってたな」
「アキラさん優しいもん」
そうだ。俺も【勘違い】しちゃダメだよな…
「…いくら優しくても普通自宅に匿わないからな?」
「へ?」
「勘違いを【勘違い】したみたいだから。最初に言っただろ?好みだ、って?」
「っ!」
「この件が片付いたら、返事聞かせてくれや?」
クツクツと意地悪く笑う顔すらかっこよく思えて、敵わないなぁと頭を抱えた。




