仕掛け
「移転の日だよ。あいつ軽量基板の技術者だったのかあ〜
そりゃ、材料すら職場にあるわ!」要が焼け落ちたバーで盛大にため息ついてから事務所に来た。
潤の淹れたコーヒー飲みながら、美味いと褒めてくれた。
「そうなのか?特に変な動きしてなかったと思うけど。」鬼丸が頭をかく。
「そんなわざとらしい事しなくても、ガス管に穴あけるダイヤモンド錐なんて片手に収まるから、手を置いてるだけに見えるよ。」要が説明する。
「なんだ?そのダイヤモンド錐って?」鬼丸が聞く。
「刃先にダイヤモンド粒子が付いてる工業用のだ。
どんな硬いものでも切れるし穴も開けれる。錐だと本当に小さい穴で良ければ力も要らない。」要の説明に潤はなんかズルいと思う。
「そんな飛び道具使われたら〜ズルくないですか?」潤はむくれる。
「普通に通販で買えるし!それより穴をふさぐ道具の方が飛び道具だから。
おかげで僕らが作業中ガス臭くも無かったろう?」要に言われて鬼丸が膝を打つ。
「そうなんだよ!ガス臭く無かったんだよ!穴が空いたらば臭ったはずなんだ!どういう事?」要に聞く。
「ボイラー室はどうしても気温高いじゃん。ガス管も少し温かい。そうすると人肌程度で24時間くらいで溶けるテープがあるんだよ。特殊なものだから流通はしてない。」要が説明すると鬼丸が立ち上がる!
「本当にそれはズルい!推理小説家、仕事無くなるぞ!」鬼丸が金田一みたいに頭をかく。
「科学技術の進歩だ。仕方ない!科捜研でも、趣味人しか知らないよ。
だが日立は特殊基板の作り手なら仕事場あったと思う。高耐熱樹脂や絶縁フィルムやらが普通にある職場だったろう。
「じゃあ、その24時間でテープが溶けて消えて〜ガスが少しづつ漏れて広がっていったのか?
いくら俺がモニター見てても分からないかあ〜」鬼丸が悲しげに泣く。
「もっと悲しい事が。あの換気窓、出る間際に日立が撫でてたんだよ。ずっと作業中彼だけ軍手の薄いのはめてたろ?」潤もそれは気づいてた。
「でも、あの人の性格上あれは自然だったので。
素手では絶対作業しないだろうなと。」潤が話す。
「ただ出る間際に持ってきたショルダーに片手をツッコんで窓全体を何回か撫でてたんだけど…女の子が唇テカテカさせる奴みたいな…」要が言葉が出ない。
「グロス?」潤が答える。
「そうキラキラしたグロスみたいなのを塗りつけたんだよ。それも調べたら工業用の塗装樹脂らしい。
キラキラしたものがマグネシウムとフェロセリウムの粉末だと推測できる。」要の説明に鬼丸と潤はまだポカンとしてる。
「だろうな。だから現場居ても分からなかったし監視しても意味が無かった。
普通の電機会社の社長みたいな奴らなら、お前らで対処できたが…日立は無理だ。」要が肩を落とす。
「そのグロスみたいなのは、やがて水分が蒸発してキラキラのマグネシウムや発火剤だけが窓に残るんだよ。そうすると、外から窓ガラスに少しの刺激、叩いたりハンマーを打ち付けたら
中に充満したガスでボンだ。」鬼丸と潤はそこでやっと分かった!
「で、でも、そんな危険な発火剤なんて!」と潤が言ったが、
「ごめん、普通にアウトドア用に火打ち石として売ってるから。それを削ったんだろ。で塗装樹脂に混ぜて空気に触れさせた。
多分カバンの中でビンに入れて持ち込んだんだ。で引っ越す作業終わって出る時に換気窓に塗りつけた。」鬼丸と潤は沈黙する。
「つまり、あの日から1週間掛けて目に見えない準備が整ったのさ。後は外から誰かが刺激すれは爆発するように。」要が説明し終えた。




