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真っ赤な部屋

中目黒駅の高架下のおでん屋で食べて飲んだ後、地下トンネル手前まで戻り、昼間はカレー屋のバーの前に来た。

複雑な模様の異国…ムスリムを思わせる透かし彫りの大きな扉を開けると壁も机も全てが真っ赤な…いやどす黒い血のような妖しい室内だった。

「こんか怪しげな店があったなんて…」潤は霊感はないが、何だかこの空間に何らかの(まじな)いの気配を感じる。

言葉にするなら…生贄(いけにえ)の部屋?

「もう!これだから夜遊びしない人わあ〜

ココは奥に大きな公園やホテルあるんですよ。

ここで男と女の駆け引きがあるんですよ!分かりませんか?」鬼丸がまたニヤついてるが。

あの汚部屋を知ってるだけに股間にケリ入れたい気分になる。

あくまで雇い主なので我慢する。

「いらっしゃいませ〜あら、鬼丸くんが女性連れてくるなんて。」身体のラインがくっきりした服装の女性がシーシャ片手に現れた。

「ママに紹介するね。今度ウチで働いてくれる事になったんだあ〜潤さん。」と肩に手を置かれた。

日頃絶対こんな事しないので驚く。

笑いながら話しながらソッと手をどけた。

しまった。

副署長は既婚者だったので、いくら飲ませても安全だったが、鬼丸は独身だった。

そして絶対彼女はいない!あの部屋で確信できる。

そんな事はお構いなしにママと鬼丸でどんどん話は進んでいく。

「じゃあさ、ウチの占い師に2人の相性占って貰いなよ〜良く当たるって噂なのよ〜2万円、前渡しだけど、どう?」ママはすごい商売上手だ。

おでん屋でかなり焼酎のペース早かった鬼丸は、財布も緩くなってる!

「分かりました!お願いします!」とママにお金を渡す。すると奥から金の刺繍のベールをかぶった水晶をもったスルタンのような服装の美しい女性が出てきた。

いや、女性じゃない!あのタルトタタンのお店の人だ!

「あっ、ども」潤は会釈する。

「あら?知り合い?もう白蘭(びゃくらん)ったら〜」ママがウインクする。

鬼丸が分かりやすくオロオロする。

腰に手が回ってきたが、今度はそのままにした。

「キッチンの排水口ブラシ買いにドンキ行った時に入ったカフェのマスターですよ。」鬼丸に説明する。

いや、本来説明する義理はないが…2万も前払いしてるのに何だかな?と思ったのだ。

ヲタの特徴だと思うが、常に傍観者でありたいのだ。

自分が物語の世界を邪魔したくない。

モブとしての役割をキチッと果たして大筋(おおすじ)に影響を与えたくない。

ここで鬼丸に変なプレッシャーは与えたくない!

と思ったのに白蘭(びゃくらん)と呼ばれたカフェマスターは、「タルトタタンの魔女さんじゃないですか?悪夢を見せてくれるんですよ、この人。

まるでフランケンシュタインをこの世に生み出し詩人のバイロンとシェリーを死に追いやる魔女メアリーみたいな人です。」とママに説明した。

「あらあら〜貴女は魔女なの?私の仲間ね。それじゃあ鬼丸くんなんてイチコロね。」皆寄ってたかって話しを混乱させる。

まず鬼丸から占う事に。

目を閉じて白蘭に両手をゆだねる。

わずかに鬼丸の身体が傾く。本人は気付いてないようだ。

次は潤だ。目を閉じ白蘭の両手に自分の手を重ねる。

何かが入り込もうとした感じがしたが、ヲタ魂が拒絶した。

ヲタは独自の価値観と世界観を持ってる。

それこそ退職理由が説明出来なかった理由だ。

そこには善悪は無いし、たった1つの価値観で形成されてる。

好きか嫌いか。

そこが好き嫌い以外のモノが通る事を拒んでしまった。

「あ〜心が強過ぎますね。もっと協調性を養って下さい。」となぜか注意された。ちょっとイラっとする。

「2人の相性は良いですよ。男が追い女が逃げる相性です。」全然良くないような…

「それじゃ、まとまらないじゃない?」とママもツッコむ。

「いや、男は追われるのが嫌いで追ってるだけだし女は人の視線を集めたくないので逃げるだけなんですよ。

つまり、2人共冷めてます。特に不利益がなければ離れない相性です。」と水晶占いの結果なった。

…なんとなく心理学じゃね?と思ってしまったが。

「俺、小さい時犬に追われて逃げ回ったんですよ。土佐犬に追っかけられて…すごい!分かるんすね!」と鬼丸は感心してる。

やっぱり素直で良い子なのだ。ただ衛生観念が崩壊してるだけだ。

キスとかそれ以上とかは、本当に3回くらい潤自ら歯磨きから洗浄してからしか無理!

このままとか無理!

いまだに鬼丸の寝室には入ったことない。扉の向こうから異臭が漂うが、潤が掃除する場所では無いから!

絶対開けない!

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