負荷
「唇…ガッサガッサですよ。指が痛いなあ〜」白蘭が文句を言う。
が、これは陽動だ。無視する。
すると指は横に反れる。耳たぶに来る。ちょっと苦手な部分だ。耳の中は触られたくない。
日本人には少ない湿気耳なのだ。思わず肩をそばめる。
「あれ?ココかあ〜」白蘭が耳の中に指をツッコむ。
「東洋人は乾燥耳が多いのに湿気ってますね…
ああ〜ココが弱点か!」耳奥に指を入れる。
声を出してはいけないが、手は出していいので引っ叩こうとしたが、片手でふさいできた。
「僕、白人も黒人も、ラテン人も付き合った事ありますから知ってますよ。日本人だけですよ、恥ずかしがるの。あちらの人は普通にワキガ多いですけどね。」潤がそれ以上言われたくなくて白蘭の口をふさぐ。
「あれ?潤さんでも恥ずかしいのかな?」白蘭が潤の手をかわして言葉を続ける。
指が脇の下に来た。思わず避けて身体をひねる。
後ろからハグしてきた。
「潤さんの勝ちです。良く我慢しましたね。それにワキガだと分かったし…」潤の耳が真っ赤になるのを後ろから見て楽しむ。
潤は恥ずかしいやら悔しいやらジタバタする。
これは年食っても恥ずかしいのだ。
付き合った男性とは必ずお風呂入ってからしか身体を近付けなかったので言われたことは無かったが。
自分で感じてて制汗剤やウェットテッシュを必ず持ち歩いてた。
「わあ〜鼻息荒っ」ワザと白蘭が煽ってくる。
「回答です。もし、ビルオーナーが返してくれるなら
タワマン用地として一緒に売ることも考えとく…と返事したよ。」白蘭がやっと白状したが、それ以上に潤がダメージを受けた。
変な催眠術より、こっちの方が潤にはキツかった。
ヲタ女子にとって現実は、嫌な世界なのだ。
最も苦手なのは、「現実世界」なのだ。
やっと解放されたが、潤はすでにグッタリしてる。
「早く帰ってよ!シッシッ」と手で白蘭を払う。
玄関まで行って白蘭が振り返る。
「もし…アナタが1回寝るなら、この話無かったことにしても良いよ。ずっとじゃなくて良い、一晩だけだ。それで爆発事故で誰も死ぬ事も無くなる。
どう?」白蘭が恐ろしい提案してきた。
「…ちょっと…ワザとね!オイッ!コラッ!やめろ!」思わず潤は白蘭の胸ぐらをつかむ。
全ての責任を潤におっかぶせる気だ!
催眠術の方がマシだ!
なんて恐ろしい罠を!
「やめろ!今すぐ却下しろ!ブッ殺すぞ!」潤が本性を出してきた。警察の女なんて、こんなものだ。
「その減らず口を今すぐ撤回しろ!」胸ぐら掴んだまま玉を潰しに掛かる。
「撤回しないと玉無しにするぞ!」かなり痛いはずなのに白蘭が耐えている…なんなら笑ってる。
「良いですよ、そのままひねりちぎって下さい。
それでも、撤回はしません。
アナタが決めるんですよ…全てを。」白蘭の狂気が表に出てきた。




